14 / 45
第2章 舞踏会の夜、伯爵令嬢は嘲笑される
15話
しおりを挟む
社交界の洗礼
音楽室から流れてくる弦楽四重奏の音色が、舞踏会のはじまりを告げる。その優雅な旋律に合わせて、貴族たちはちらほらとダンスフロアへ移動し始める。男性が女性をエスコートし、あるいはすでに婚約しているカップルが見せびらかすようにワルツを踊る。
サラは母とともにホールを一巡する形で歩きながら、挨拶を交わす相手を探す。正直に言えば、サラはあまり“誰かに話しかけてほしい”という気はない。むしろ「上位貴族の息子を捕まえろ」と言わんばかりの母に押されている状態だ。
そんなサラの前に、何人かの若い貴族令息が通り過ぎていく。彼らは、ちらとサラの顔を見ては少し目を逸らす。
「……あれ、レティシア伯爵家の娘か?」「まあ伯爵家なら、うちよりは下だな。」「はは、どうせ舞踏会の飾りだろう。」
そんな小声が漏れているのがはっきりと聞こえてくる。伯爵家は決して下層貴族ではないものの、“公爵”“侯爵”という最上位に比べれば格下扱いされる運命にある。若い貴族たちは、少しでも上の家の娘や息子を狙って“家格を上げたい”のだ。サラなど眼中にない――というか、わざわざ伯爵家に目を向けるほどの余裕はないのだろう。
サラはそれを聞いても、別段憤慨はしなかった。むしろ「そう来るなら、それでもいい。自分も興味がないし」と思うだけだ。ただ、母だけが「あら失礼ねえ……でも、サラは負けないで!」と残念そうに表情を曇らせる。
周囲のダンスが盛り上がる中、サラはグラスに注がれた淡いピンク色の飲み物(果実酒だろうか)をひと口飲み、フロアの端へと退いた。母は「ちょっと向こうに挨拶に行ってくるわね」と離れていったので、しばらく一人で過ごす時間ができた。
「(やれやれ、これが貴族社会ってやつか。顔と家柄ばかり気にして、経済のことなんか一ミリも考えていないんでしょうね……)」
そのとき、ふと視界に妙な人影が入った。王族専用の座席がある二階の廊下から、大柄な男性がこちらを見下ろしている。――あれが王太子か、それとも王弟か。どちらにせよ高貴な身分の人物だろうが、サラは特に興味を覚えない。自分を見下ろしているような視線を感じたが、放っておくことにした。
音楽室から流れてくる弦楽四重奏の音色が、舞踏会のはじまりを告げる。その優雅な旋律に合わせて、貴族たちはちらほらとダンスフロアへ移動し始める。男性が女性をエスコートし、あるいはすでに婚約しているカップルが見せびらかすようにワルツを踊る。
サラは母とともにホールを一巡する形で歩きながら、挨拶を交わす相手を探す。正直に言えば、サラはあまり“誰かに話しかけてほしい”という気はない。むしろ「上位貴族の息子を捕まえろ」と言わんばかりの母に押されている状態だ。
そんなサラの前に、何人かの若い貴族令息が通り過ぎていく。彼らは、ちらとサラの顔を見ては少し目を逸らす。
「……あれ、レティシア伯爵家の娘か?」「まあ伯爵家なら、うちよりは下だな。」「はは、どうせ舞踏会の飾りだろう。」
そんな小声が漏れているのがはっきりと聞こえてくる。伯爵家は決して下層貴族ではないものの、“公爵”“侯爵”という最上位に比べれば格下扱いされる運命にある。若い貴族たちは、少しでも上の家の娘や息子を狙って“家格を上げたい”のだ。サラなど眼中にない――というか、わざわざ伯爵家に目を向けるほどの余裕はないのだろう。
サラはそれを聞いても、別段憤慨はしなかった。むしろ「そう来るなら、それでもいい。自分も興味がないし」と思うだけだ。ただ、母だけが「あら失礼ねえ……でも、サラは負けないで!」と残念そうに表情を曇らせる。
周囲のダンスが盛り上がる中、サラはグラスに注がれた淡いピンク色の飲み物(果実酒だろうか)をひと口飲み、フロアの端へと退いた。母は「ちょっと向こうに挨拶に行ってくるわね」と離れていったので、しばらく一人で過ごす時間ができた。
「(やれやれ、これが貴族社会ってやつか。顔と家柄ばかり気にして、経済のことなんか一ミリも考えていないんでしょうね……)」
そのとき、ふと視界に妙な人影が入った。王族専用の座席がある二階の廊下から、大柄な男性がこちらを見下ろしている。――あれが王太子か、それとも王弟か。どちらにせよ高貴な身分の人物だろうが、サラは特に興味を覚えない。自分を見下ろしているような視線を感じたが、放っておくことにした。
2
あなたにおすすめの小説
覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
謹んで、婚約破棄をお受けいたします。
パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。
王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】婚約破棄された私が惨めだと笑われている?馬鹿にされているのは本当に私ですか?
なか
恋愛
「俺は愛する人を見つけた、だからお前とは婚約破棄する!」
ソフィア・クラリスの婚約者である
デイモンドが大勢の貴族達の前で宣言すると
周囲の雰囲気は大笑いに包まれた
彼を賞賛する声と共に
「みろ、お前の惨めな姿を馬鹿にされているぞ!!」
周囲の反応に喜んだデイモンドだったが
対するソフィアは彼に1つだけ忠告をした
「あなたはもう少し考えて人の話を聞くべきだと思います」
彼女の言葉の意味を
彼はその時は分からないままであった
お気に入りして頂けると嬉しいです
何より読んでくださる事に感謝を!
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる