婚約破棄された伯爵令嬢ですが、国の経済を掌握しました

鍛高譚

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第3章 暴かれる影の才覚――伯爵令嬢は動き出す

30話

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祝祭の開幕――伯爵令嬢の注目度

 王宮の大広間は、舞踏会とは比べものにならないほど広大で、多彩な装飾が施されていた。天井は高く、豪華なシャンデリアが光を放ち、壁には王国の歴代英雄や神話の壁画が描かれている。
 各国から招かれた使節団や商会の代表、さらにはこの国の上位貴族が思い思いの衣装で集まり、ざわざわと賑わっている。飲食の出店も多く、あちこちに立食形式のテーブルが置かれ、ワインやスイーツ、肉料理やシチューの芳醇な香りが漂う。まさに祝祭と呼ぶにふさわしい、活気ある空間だ。

 伯爵家の一員として入場したサラは、会場に足を踏み入れた途端、いくつもの視線を感じた。
 (……やっぱり噂通り、注目度は高いわね)

 さっそく近づいてきたのは、マルコ・エルズバーグと名乗る大商会の若き代表だ。彼は笑顔を浮かべながら、サラの手を取り挨拶をする。
 「これはこれは、レティシア伯爵家のご令嬢。お噂はかねがね伺っておりますよ。お会いできて光栄です。」
 「こちらこそご丁寧に。……商会の代表をされているとか?」
 「ええ、エルズバーグ商会と申します。主に織物と香辛料の交易を手がけており、帝国との取引もあります。――最近は為替の変動が激しく、大変でしてね。」

 その言葉を聞き、サラは軽く微笑む。わざと大げさに驚いた口調で返す。
 「為替の変動、たしかにリスクが大きいですよね。もし、お困りでしたら両替のルートを複数持つのも手段かと……」
 「おお、さすが噂の“投資”に詳しいお嬢様。ぜひ詳しくお話を伺いたい!」

 エルズバーグは目を輝かせる。どうやら“噂”を本当に信じているらしい。サラは内心で「想像以上に食いつきがいいわね」と思いつつ、あまり深入りしすぎない程度に会話を続ける。実際のノウハウをべらべらしゃべるわけにはいかないが、相手の言葉を肯定し、多少ヒントを与えるだけでも相手の評価は上がる。

 「わたしは大したことはしていませんよ。場所によって通貨価値が変わるなら、その差を埋めるだけです。商人の皆さんなら、自然とやっていることかと……」
 「いえいえ、それが難しいのですよ。情報が行き届いていない地方も多いですからね。――ぜひ、今度うちの商会にいらして、細かい数値を教えていただけませんか?」
 「うふふ……それはどうかしら。わたし、まだ伯爵令嬢なので忙しいんです。」

 軽くはぐらかすと、エルズバーグは「そこをなんとか……」と食い下がりそうだったが、ほかにも話しかけたい人がいるらしく、ひとまず名刺代わりの挨拶を済ませて去って行った。
 (なるほど。こんな感じで“投資の天才”とやらを崇めてアプローチしてくる人が、ここでは何人もいるのね)

 サラは改めて周囲を見回す。ほかにも何人かがこちらに視線を向けており、すでに駆け寄ってこようとする人もちらほら。父の言うとおり、この場を利用すれば多くの商会や外国の使節と繋がりを作ることができそうだ。
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