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第3章 暴かれる影の才覚――伯爵令嬢は動き出す
32話
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再会――ヴェルドル公爵の謝罪
祝祭は続く。サラは次から次へと話しかけられ、まるで“社交界の華”のように賑やかな時間を過ごしていた。けれど、その裏で常に警戒していたのが“ヴェルドル公爵”――ガイ・アルノーの父親である。
そんなサラの懸念は、やはり的中した。しばらくすると、混雑する大広間の端から公爵がサラを見つけると、ゆっくり歩み寄ってきたのだ。
「レティシア伯爵令嬢、少々時間をもらえないだろうか?」
公爵は前回のように息子を叱っているときの怒声とは打って変わり、落ち着いた声色だ。その眼差しはどこか申し訳なさを含んでいる。サラは一応挨拶をする。
「ヴェルドル公爵様、今宵は祝祭ですから、わたしも忙しくて……手短になら聞きますが。」
その冷めた態度にも、公爵は眉をひそめつつも責めることはせず、小声で言葉を選ぶように話し始めた。
「先の舞踏会では、息子が無礼を働いた。伯爵令嬢、いや……サラ・レティシア殿と我が家とのあいだに、変な誤解を生じさせてしまったことを謝罪したい。――申し訳ない。」
公爵は頭を下げる。それを見て周囲の貴族たちはざわめいた。公爵ともあろう者が、伯爵令嬢に頭を下げるなど前代未聞だ。サラも少し驚きながら、表情には出さない。
「……公爵様が頭を下げるなんて、わたしのほうが面食らってしまいます。あの件は、わたしとしても“婚約破棄”なんてよく分からないまま騒ぎが大きくなっただけで……すでに終わったことだと思いますけど?」
サラが淡々と答えると、公爵は苦々しい表情を浮かべる。
「息子は、半ば家から追放状態だ。わたしもあれには呆れ果てたが、実は……」
そこで公爵はさらに声を低くし、サラに聞こえるか聞こえないかの音量で囁く。
「……わたしは、お前が“この国の経済を左右する潜在力を持っている”と、本気で確信している。だからこそ息子には“あの女をものにしておけ”と言ったのだが……やつは愚かだった。」
「公爵様までそう思われるとは、わたしも光栄ですね。」
「この先、わたしは公的な場でお前に干渉する気はない。しかし、もしお前がいずれ“大きく”なるときが来たら、ぜひわたしにも協力させてくれ。――そうすれば、王家すら凌駕できるかもしれんぞ。」
公爵の瞳には、隠しきれない野心が宿っている。どうやら彼は王家の絶対的な権力をも超える経済力に惹かれているのだろう。サラはその言葉に内心で警戒心を強めながら、穏やかに微笑む。
「ご期待に沿えるかはわかりませんが……もしわたしが“王家をも凌駕する”存在になることがあるとしたら、そのときは公爵様の力添えを仰ぐかもしれませんね。」
「うむ……そうか。ならば今はそれでいい。」
公爵は軽く頭を下げ、「息子の件は改めて謝罪する」と言い残して去っていく。周囲の人々は、公爵が伯爵令嬢と密談したことを目撃し、何事かとざわついているが、公爵は気にも留めない様子だった。
(公爵は公爵で、王家に対抗心を燃やしているのね。王太子はわたしを“妃候補”として欲しがり、公爵は“経済帝国”を夢見ている。――どいつもこいつも、権力争いの道具にわたしを使おうとしてるんじゃない。ああ、面倒……)
サラは口元に苦笑を浮かべながら、改めて決意を固める。
(王家に取り込まれるのも、公爵家に与するのもゴメンだわ。わたしは“わたし自身の力”でこの世界を支配する。それが、前世で破れたわたしのリベンジなんだから――。)
祝祭は続く。サラは次から次へと話しかけられ、まるで“社交界の華”のように賑やかな時間を過ごしていた。けれど、その裏で常に警戒していたのが“ヴェルドル公爵”――ガイ・アルノーの父親である。
そんなサラの懸念は、やはり的中した。しばらくすると、混雑する大広間の端から公爵がサラを見つけると、ゆっくり歩み寄ってきたのだ。
「レティシア伯爵令嬢、少々時間をもらえないだろうか?」
公爵は前回のように息子を叱っているときの怒声とは打って変わり、落ち着いた声色だ。その眼差しはどこか申し訳なさを含んでいる。サラは一応挨拶をする。
「ヴェルドル公爵様、今宵は祝祭ですから、わたしも忙しくて……手短になら聞きますが。」
その冷めた態度にも、公爵は眉をひそめつつも責めることはせず、小声で言葉を選ぶように話し始めた。
「先の舞踏会では、息子が無礼を働いた。伯爵令嬢、いや……サラ・レティシア殿と我が家とのあいだに、変な誤解を生じさせてしまったことを謝罪したい。――申し訳ない。」
公爵は頭を下げる。それを見て周囲の貴族たちはざわめいた。公爵ともあろう者が、伯爵令嬢に頭を下げるなど前代未聞だ。サラも少し驚きながら、表情には出さない。
「……公爵様が頭を下げるなんて、わたしのほうが面食らってしまいます。あの件は、わたしとしても“婚約破棄”なんてよく分からないまま騒ぎが大きくなっただけで……すでに終わったことだと思いますけど?」
サラが淡々と答えると、公爵は苦々しい表情を浮かべる。
「息子は、半ば家から追放状態だ。わたしもあれには呆れ果てたが、実は……」
そこで公爵はさらに声を低くし、サラに聞こえるか聞こえないかの音量で囁く。
「……わたしは、お前が“この国の経済を左右する潜在力を持っている”と、本気で確信している。だからこそ息子には“あの女をものにしておけ”と言ったのだが……やつは愚かだった。」
「公爵様までそう思われるとは、わたしも光栄ですね。」
「この先、わたしは公的な場でお前に干渉する気はない。しかし、もしお前がいずれ“大きく”なるときが来たら、ぜひわたしにも協力させてくれ。――そうすれば、王家すら凌駕できるかもしれんぞ。」
公爵の瞳には、隠しきれない野心が宿っている。どうやら彼は王家の絶対的な権力をも超える経済力に惹かれているのだろう。サラはその言葉に内心で警戒心を強めながら、穏やかに微笑む。
「ご期待に沿えるかはわかりませんが……もしわたしが“王家をも凌駕する”存在になることがあるとしたら、そのときは公爵様の力添えを仰ぐかもしれませんね。」
「うむ……そうか。ならば今はそれでいい。」
公爵は軽く頭を下げ、「息子の件は改めて謝罪する」と言い残して去っていく。周囲の人々は、公爵が伯爵令嬢と密談したことを目撃し、何事かとざわついているが、公爵は気にも留めない様子だった。
(公爵は公爵で、王家に対抗心を燃やしているのね。王太子はわたしを“妃候補”として欲しがり、公爵は“経済帝国”を夢見ている。――どいつもこいつも、権力争いの道具にわたしを使おうとしてるんじゃない。ああ、面倒……)
サラは口元に苦笑を浮かべながら、改めて決意を固める。
(王家に取り込まれるのも、公爵家に与するのもゴメンだわ。わたしは“わたし自身の力”でこの世界を支配する。それが、前世で破れたわたしのリベンジなんだから――。)
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