婚約破棄された伯爵令嬢ですが、国の経済を掌握しました

鍛高譚

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第3章 暴かれる影の才覚――伯爵令嬢は動き出す

33話

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伯爵令嬢の未来――誰のものでもない

 祝祭は夜も更けるまで盛大に続き、サラは多くの商人や外国の使節と名刺代わりの会話を交わした。表面的には愛想よく受け答えしていたが、頭の中ではすでに“使える情報”と“警戒すべき勢力”を分別し、今後の展開をシミュレートしている。
 この一夜で、サラははっきりと感じた。自分に群がる者たちは、皆が皆“自身の利益”を最優先に考えているということを。――公爵令息ガイのように短絡的な者もいれば、王太子や公爵のように長期的視野を持っている者もいるが、いずれにせよ“サラ・レティシア”という存在は魅力的な駒であり、あるいは脅威として映っているのだろう。

 (ならば、わたしはわたしの道を進むだけだ。誰のものにもならず、わたしの好きなように世界を動かす。――そっちのほうが、面白いじゃない。)

 前世で金融に生き、過労で倒れた自分が、まさか異世界に来て再び“ディーラー”のような真似をするとは夢にも思わなかった。だが、今のサラにはやる気と野心が満ち溢れている。
 貴族社会の枠組みなんて気にしない。経済こそが世界の大半を動かす鍵なのだと、サラは知っている。そしてすでに、地方の両替所や密かな投資によって、少しずつその“鍵”を手中に収めつつある。

 祝祭が終わりに近づくころ、大広間で最後の音楽が流れ、幾組もの男女がダンスフロアに出る。サラは誘われることもあったが、どれも社交辞令程度なので丁重に断った。父と母には「最後の曲くらい踊ってきたら?」と勧められたが、サラは「わたしは踊るより、ここで見ているほうが好きなんです」と笑って答える。
 (――この景色は、貴族たちの栄華の縮図。彼らは自分たちが王や公爵家に仕えていれば安泰だと信じている。でも、ほんとうは“お金”がなければ何もできないのに。)

 サラは優雅にワイングラスを傾け、踊りに興じる貴族たちを眺める。やがて曲が終わると、一斉に拍手が起こり、祝祭は幕を下ろした。

 これから先、サラは王太子や公爵、あるいは他国の要人からの誘いを断り続けるわけにはいかないだろう。政治の力を無視すれば、いつか必ず押さえつけられる。だからこそ、彼らと慎重に“手を組む”のか、“利用する”のかを決めていかなければならない。
 (でも、最終的には誰のものにもならず、わたし自身の意思で世界を牛耳ってみせる――)

 サラはそう決めた。この夜の祝祭は、多くの人にとっては華やかな社交と娯楽で終わったが、サラ・レティシアにとっては“自分の立ち位置”を確立し、さらなる野望に向けて始動する決意を固める場となったのである。
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