婚約破棄された伯爵令嬢ですが、国の経済を掌握しました

鍛高譚

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第3章 暴かれる影の才覚――伯爵令嬢は動き出す

34話

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動き出す歯車

 翌日、伯爵家の馬車が王宮から領地へ帰る道の途中で、サラは窓を開け放ち、爽やかな朝の風を浴びていた。父や母はまだ昨夜の疲れが抜けないのか、馬車の中でぼんやりしている。
 「サラ、どうだった? 祝祭は楽しめたか?」
 父がかすれた声で尋ねると、サラは「ええ、それなりに」と微笑む。実際には“忙しい”夜だったが、収穫は大きい。これから先の展望が一段と広がった感覚がある。

 思えば、前回の舞踏会は公爵令息の婚約破棄という波乱で終わった。だが、今回は大きな騒ぎは起こらず、むしろサラが諸々の勢力から“引っ張りだこ”になっている雰囲気が感じられた。それは恐ろしいことでもあるが、同時に“わたしはこの世界で本当に成り上がれる”という手応えを与えてくれるものでもあった。

 (王太子の誘いをどう扱うか……公爵からの執拗なアプローチをどうかわすか……それらを上手く利用できれば、大きな後ろ盾を得ることもできるし、逆に支配される可能性もある。)

 幸い、サラは父からも「自由にやっていい」という半ば公認を得た。両親が心配するのは当然だが、現時点では“娘の才覚”に頼らざるを得ないのも確かだ。
 「やるしかないわね……このまま王族や公爵家、そして商会や隣国をも巻き込んで、少しずつ金融網を拡大する。そうして、いつか――」

 サラは小声で呟く。馬車の揺れが激しくなり、外の景色が走り去る中、彼女の瞳は遠くを見据えている。
 (いつか、本当に“世界経済を牛耳る”存在になったとき……わたしは自分の理想の生活を手に入れられるだろうか。お茶を飲んで、ゆっくり読書をして、誰にも束縛されない――そんな穏やかな時間。)

 欲しいものは“お金”だけではない。自由と平穏、そのすべてを手に入れるために、サラ・レティシアはこの異世界で“金融の女帝”へと歩み出す。
 公爵令息や王太子の思惑を嘲笑うかのように、穏やかに、しかし確実に。
 今、伯爵令嬢という小さな肩に、世界の行方がかかっている――。
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