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22話
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落ちぶれた者、未来を歩む者
契約の翌日。
ココアとクレオは、パステル商会の広々としたバルコニーで夕暮れを眺めていた。成功の余韻に浸りながら、どこかしら感慨深い気持ちでいる。
暁の空ではなく、夕陽を見つめるのは、過去を振り返るにはぴったりかもしれない。
「思えば、最初はカフェさんが“真実の愛”だとか言って押しかけてきたんでしたよね。あれがきっかけで私たち、出会えたのかも」
クレオが苦笑するように振り返る。
ココアもうっすら苦笑して同意する。
「そうね。私は婚約破棄をされて、クレオさんは突然求婚されて……本来なら最悪の災難だったはずだけど、結果的には良い方向に転んだわ」
「ええ。“平民を舐めるな”って言ってから、今度は“貴族だから偉いわけじゃない”って教わった気もします。ココア様みたいな方がもっと増えれば、世の中は変わるでしょうね」
二人はバルコニーの手すりに寄りかかり、オレンジ色に染まる王都の街並みを見渡す。
歩みをともにしていく未来に、わくわくする気持ちを抑えきれない。
ふと、クレオが小声で問いかける。
「ところで……ブラック家のこと、もうご存じですよね? この間、家財の大半を手放して、邸宅も手狭なところへ移ったと聞きました」
「ええ、耳にしているわ。公爵もかなり憔悴しているみたいで……カフェさんは最近、あまり姿を見かけないわね」
「そうですか。まあ、あの強引な押しかけ婚約がなくても、いずれは同じ道をたどったのかもしれません。でも、さすがに落ちぶれ方が急ですね」
噂によれば、ブラック家の債務は今後何年かけても返済しきれず、事実上“名門”の看板を失ってしまったとか。領地にいた従者も解雇されたり他家に引き抜かれたりし、もはやかつての華やかさはどこにもない。
ある人は「ざまぁみろ」と嘲笑し、ある人は「そこまで追い込まなくても……」と同情する。だが、これが今の時代の厳しさなのだ。
「……それでも、同情はしないわ。彼らが侮辱したものは、私たちの自由と尊厳よ。自分で招いた結果だもの、仕方ないわね」
ココアは軽く息をつく。
「もし彼らがいつか考えを改めることがあれば――誠実に借金を返し、ちゃんとしたビジネスを学ぶなら……協力してあげてもいいかも、と思わないでもない。でも、現状じゃ無理でしょうね」
「ええ……ただ、一つだけ確かなのは、私たちにはもうあの人たちを利用する理由も義務もないということ。だから、気にするだけ損ですよ」
二人は顔を見合わせ、ほんの短い沈黙を共有する。
その沈黙に宿るのは、ブラック家への“憎悪”でも“軽蔑”でもなく、すでに乗り越えた問題への淡々とした想いだ。
――ざまぁ。
それは決着がついた過去の話。これから先に待っているのは、さらに大きな未来の可能性だ。
契約の翌日。
ココアとクレオは、パステル商会の広々としたバルコニーで夕暮れを眺めていた。成功の余韻に浸りながら、どこかしら感慨深い気持ちでいる。
暁の空ではなく、夕陽を見つめるのは、過去を振り返るにはぴったりかもしれない。
「思えば、最初はカフェさんが“真実の愛”だとか言って押しかけてきたんでしたよね。あれがきっかけで私たち、出会えたのかも」
クレオが苦笑するように振り返る。
ココアもうっすら苦笑して同意する。
「そうね。私は婚約破棄をされて、クレオさんは突然求婚されて……本来なら最悪の災難だったはずだけど、結果的には良い方向に転んだわ」
「ええ。“平民を舐めるな”って言ってから、今度は“貴族だから偉いわけじゃない”って教わった気もします。ココア様みたいな方がもっと増えれば、世の中は変わるでしょうね」
二人はバルコニーの手すりに寄りかかり、オレンジ色に染まる王都の街並みを見渡す。
歩みをともにしていく未来に、わくわくする気持ちを抑えきれない。
ふと、クレオが小声で問いかける。
「ところで……ブラック家のこと、もうご存じですよね? この間、家財の大半を手放して、邸宅も手狭なところへ移ったと聞きました」
「ええ、耳にしているわ。公爵もかなり憔悴しているみたいで……カフェさんは最近、あまり姿を見かけないわね」
「そうですか。まあ、あの強引な押しかけ婚約がなくても、いずれは同じ道をたどったのかもしれません。でも、さすがに落ちぶれ方が急ですね」
噂によれば、ブラック家の債務は今後何年かけても返済しきれず、事実上“名門”の看板を失ってしまったとか。領地にいた従者も解雇されたり他家に引き抜かれたりし、もはやかつての華やかさはどこにもない。
ある人は「ざまぁみろ」と嘲笑し、ある人は「そこまで追い込まなくても……」と同情する。だが、これが今の時代の厳しさなのだ。
「……それでも、同情はしないわ。彼らが侮辱したものは、私たちの自由と尊厳よ。自分で招いた結果だもの、仕方ないわね」
ココアは軽く息をつく。
「もし彼らがいつか考えを改めることがあれば――誠実に借金を返し、ちゃんとしたビジネスを学ぶなら……協力してあげてもいいかも、と思わないでもない。でも、現状じゃ無理でしょうね」
「ええ……ただ、一つだけ確かなのは、私たちにはもうあの人たちを利用する理由も義務もないということ。だから、気にするだけ損ですよ」
二人は顔を見合わせ、ほんの短い沈黙を共有する。
その沈黙に宿るのは、ブラック家への“憎悪”でも“軽蔑”でもなく、すでに乗り越えた問題への淡々とした想いだ。
――ざまぁ。
それは決着がついた過去の話。これから先に待っているのは、さらに大きな未来の可能性だ。
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