婚約破棄したあなたが処刑台に立つ頃、私は帝国将官に求婚されていました』

鍛高譚

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26話

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 帝国軍による王都占領が進み、かつての王国はもはや“敗戦国”として帝国の庇護下に置かれる日々が続いていた。とはいえ、進駐軍のトップとして派遣されてきたハウザー准将の方針によって、町中での暴力や強奪などは最低限に抑えられている。厳重な警備体制は敷かれているものの、人々の暮らしはゆっくりと再開へ向かっていた。
 かつての輝かしい宮廷や華やかな貴族たちの姿は消え失せ、王都は廃墟のような静けさに包まれたままだ。しかし、そんな中でもいち早く慈善事業を立て直したのがコーラル・エヴァリー伯爵令嬢である。
 伯爵家としてそれなりの権威を保っているとはいえ、もはや昔のような豊かな財力はない。けれど、コーラルは使える限りの資金と人脈を駆使し、孤児や貧窮した人々への炊き出しや毛布の配布、治療所の整備などに尽力していた。

 戦の終結から幾日かが過ぎたある朝、コーラルが領民の元へ食料を運ぶために伯爵邸を出ようとすると、執事が少し慌てた様子で彼女を呼び止める。

「お嬢様。帝国軍よりお知らせが届いております。……本日の昼過ぎ、中央広場にて“戦犯”の公開裁定が行われるそうです」

 “戦犯”。その言葉を聞いた瞬間、コーラルの心はひどくざわめいた。
 すでに耳にしている通り、今回の王国崩壊を招いた要因の一端を担ったとされる軍上層部の面々が、帝国による審議で裁かれようとしている。中でも不正蓄財や民衆への圧政を行った容疑が濃いアリオン・サリヴァン伯爵とガーレン将軍の一派は“戦争犯罪”を問われる立場にあった。
 先日、アリオンたちは帝国の仮設司令部へ赴き“協力”を申し出たが、逆に帝国本国から送られた告発書と証拠によって彼ら自身が逮捕されるという皮肉な結末を迎えたばかりである。かつては婚約者だったアリオンの姿を思い浮かべながら、コーラルは胸を押さえる。どうしようもない複雑な感情が渦巻くのを感じた。

「……わかりました。知らせをありがとう」

 再び馬車に乗り込もうとするが、体がわずかに震えていることに気づく。決して同情するわけではない。しかし、あれほどまでに輝いて見えたアリオンの末路が、戦争犯罪者として帝国軍の手で裁かれる――それを想像すると、胸のどこかに鈍い痛みが走るのだ。
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