悪女に仕立てたのはあなたでしょう?〜婚約破棄は歓迎ですわ、後悔なさいませ〜

鍛高譚

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第2章:揺れ動く王都と、隣国の誘い

11話

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新たな決意、そして未来の選択

 結局、その後の茶会は大きな波乱もなく幕を閉じた。アルベルトとリリアの登場は衝撃だったが、すぐに退場してしまったため、最後はレオニスが丁寧に客たちを見送っている。私も帰り際に彼と言葉を交わし、再会を約束して館を後にした。

 帰りの馬車の中、私は窓の外の景色をぼんやり眺める。王都の人々はいつもどおりに行き交い、陽の光が石畳を照らしている。――だが、私の心は少しずつ変化している。

「もし、この国を離れてしまったら、どうなるんだろう……」

 呟いてみるが、すぐには答えは出ない。父や母、アークライト公爵家の使用人たち――私を支えてくれた人々を置いて旅立つのは、やはり簡単ではない。家名や立場を捨てるつもりはないけれど、もし隣国に嫁ぐなら、相応の覚悟が必要だろう。

 しかし、同時に考える。「アルベルトとリリアによって生み出された“悪女”のレッテルを、このまま放置していいのか?」――私としては、無実を貫くつもりだが、証拠もなく罵られ続けるのはいい気分ではない。それに今のままでは、公爵家にも影響が及ぶかもしれない。

 レオニスが言ったように、私自身がどう生きたいか。そこをまずは見極めることが大切だ。もちろん、この国に留まって自力で名誉を回復する道もあるだろうが、それにはアルベルトやリリアと正面からぶつかる覚悟がいる。彼らが持つ“聖女”の権威や、王太子という立場の力を考えれば、容易な戦いではないだろう。

「……それでも」

 私は思わず胸の前で拳を握りしめる。自分は弱い存在かもしれないが、ただ流されるだけで終わるつもりはない。王太子との婚約破棄を受け入れたのは「自分が望まない結婚をしたくない」という理由が大きい。――そうであるなら、これからの道も「望まないから逃げる」ではなく、「望むもののために戦う」という姿勢でいたいのだ。

 もし、私を本当に理解し、支えてくれる人物がいるのなら――それがたとえ隣国の王子でも、構わないのかもしれない。私自身が決断しさえすれば、きっと新たな人生が開ける。

 馬車が公爵家の門をくぐる頃には、私はひとつの決意を抱きつつあった。**「もう一度、自分の気持ちを整理しよう」と。ほんの少し前までは「ぼんやりと自由になりたい」と思っていただけだが、今は「自分が行動を起こす」**必要性を痛感している。

 そして、家に着いたらまずは両親と話し合おう。公爵家の今後や、隣国の話。あるいは、再びアルベルトが絡んでくる可能性――すべてを考慮して、自分なりの答えを見つけ出したい。そうでなければ、私はいつまでも「婚約破棄された可哀想な令嬢」のまま、あるいは「悪女」のレッテルを貼られたまま取り残されてしまうから。

 こうして私は、自分の意思で未来を選ぶための第一歩を踏み出す決意を固めた。
 王太子と聖女リリアの動向が、これからどんな嵐を呼ぶのかは分からない。けれど、少なくとも私は**「何もしないままでは終わらない」**――そう心に刻んで、再び動き出す。

 どこか深い闇を孕む王宮の内情、そして私に手を差し伸べる隣国の王子レオニス。
 婚約破棄がもたらした波紋は、まだまだ収まりそうにない。

 だが、だからこそ私は、より強く輝く未来を掴みとるために――ほんの少し、胸を弾ませながら前を向くのだ。
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