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第五章 ――晩餐会へ至る道、そして新たな未来へ――
25話
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フィナーレ――国王からの賛辞、そして自由への道
晩餐会も終盤に差し掛かり、宴席が落ち着きを見せはじめた頃。なんと、国王陛下 ご自身が私たちのコーナーに足を運んでくださるという一報が届いた。一気に周囲が緊張感に包まれ、ファビアンやリヴィエールは「まさか、直々に……!」と蒼白になっている。
少しして現れた国王は、白髪混じりの威厳ある壮年男性で、大柄な身体を纏うローブに金糸の刺繍がきらめいている。その背後には王太子や多くの近衛兵、宮廷貴族が従っていた。国王は私を見ると、柔らかな笑みを浮かべて声をかけてくれた。
「アーデルハイド公爵令嬢、レイラ・フォン・アーデルハイド殿。今回のワインの件、大変感謝しておる。それに加えて、こうして領地の新しい産物をお披露目していただくとは、実に面白い試みだ」
「もったいないお言葉です、陛下。私がほんの少し思いついたアイデアを、領地の皆さんが形にしてくれたにすぎません。陛下にお気に召すかどうか、まだまだ分かりませんが……」
私が会釈すると、国王はテーブルに並ぶ商品を一通り見回し、ひとつひとつ興味深げに確認している。ハーブパンやスパイス料理を軽く口に運んだり、ぶどうジュースを試したりもして、「ほう……」と唸るように頷く。周囲の貴族や近衛兵たちも、控えめに目を輝かせていた。
そして、国王は私に向き直って、静かに言葉を紡ぐ。
「我々の国は長らくワイン文化を誇りとしてきたが、同時にそれ以外の産業や食文化にも目を向ける時期に来ているのかもしれん。……レイラ・フォン・アーデルハイド殿のように、枠にとらわれず新しいものを取り入れる姿勢は、今後の我が国にとって貴重な財産となろう」
「恐れ多い限りです、陛下。私など、まだ始めたばかりで、失敗も多いでしょうが……領地に秘められた可能性を少しでも広げたいと思っております」
「うむ……その心掛け、しかと受け止めたぞ。もしさらなる支援が必要なときは、遠慮なく声をかけるがよい。――婚約破棄の件があったとはいえ、アーデルハイド公爵家は我が国を支える大切な柱のひとつだ。これからも頼りにしておるぞ」
国王はそれだけ言うと、満足そうな顔で「さて、そろそろ余興の舞踏が始まる」と言い、取り巻きを連れて移動していく。私は深く頭を下げながら、その背中を見送った。父公爵は少し離れたところで誇らしげに笑っており、こちらへ視線を送っている。
王太子は国王の背後で複雑そうな表情をしていたが、結局何も言わなかった。浮気相手令嬢も俯いている。私は内心「そっちがどうであれ、私はこのまま好きにやるから」と心の中で呟き、そっとため息をつく。これにて私の役目はほぼ完了だ。あとは余興の舞踏会が進み、宴が終わるのを見届けるだけ。
晩餐会も終盤に差し掛かり、宴席が落ち着きを見せはじめた頃。なんと、国王陛下 ご自身が私たちのコーナーに足を運んでくださるという一報が届いた。一気に周囲が緊張感に包まれ、ファビアンやリヴィエールは「まさか、直々に……!」と蒼白になっている。
少しして現れた国王は、白髪混じりの威厳ある壮年男性で、大柄な身体を纏うローブに金糸の刺繍がきらめいている。その背後には王太子や多くの近衛兵、宮廷貴族が従っていた。国王は私を見ると、柔らかな笑みを浮かべて声をかけてくれた。
「アーデルハイド公爵令嬢、レイラ・フォン・アーデルハイド殿。今回のワインの件、大変感謝しておる。それに加えて、こうして領地の新しい産物をお披露目していただくとは、実に面白い試みだ」
「もったいないお言葉です、陛下。私がほんの少し思いついたアイデアを、領地の皆さんが形にしてくれたにすぎません。陛下にお気に召すかどうか、まだまだ分かりませんが……」
私が会釈すると、国王はテーブルに並ぶ商品を一通り見回し、ひとつひとつ興味深げに確認している。ハーブパンやスパイス料理を軽く口に運んだり、ぶどうジュースを試したりもして、「ほう……」と唸るように頷く。周囲の貴族や近衛兵たちも、控えめに目を輝かせていた。
そして、国王は私に向き直って、静かに言葉を紡ぐ。
「我々の国は長らくワイン文化を誇りとしてきたが、同時にそれ以外の産業や食文化にも目を向ける時期に来ているのかもしれん。……レイラ・フォン・アーデルハイド殿のように、枠にとらわれず新しいものを取り入れる姿勢は、今後の我が国にとって貴重な財産となろう」
「恐れ多い限りです、陛下。私など、まだ始めたばかりで、失敗も多いでしょうが……領地に秘められた可能性を少しでも広げたいと思っております」
「うむ……その心掛け、しかと受け止めたぞ。もしさらなる支援が必要なときは、遠慮なく声をかけるがよい。――婚約破棄の件があったとはいえ、アーデルハイド公爵家は我が国を支える大切な柱のひとつだ。これからも頼りにしておるぞ」
国王はそれだけ言うと、満足そうな顔で「さて、そろそろ余興の舞踏が始まる」と言い、取り巻きを連れて移動していく。私は深く頭を下げながら、その背中を見送った。父公爵は少し離れたところで誇らしげに笑っており、こちらへ視線を送っている。
王太子は国王の背後で複雑そうな表情をしていたが、結局何も言わなかった。浮気相手令嬢も俯いている。私は内心「そっちがどうであれ、私はこのまま好きにやるから」と心の中で呟き、そっとため息をつく。これにて私の役目はほぼ完了だ。あとは余興の舞踏会が進み、宴が終わるのを見届けるだけ。
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