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第2章:出会いと覚醒――真なる力を知る時
16話
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翌朝、まだ陽が昇る前。アストリッドとクラリッサは小屋を出ようとしていた。ずっとジークに頼るわけにもいかないし、予定通り西へ向かうつもりだ。
寝袋を片付けながら、ジークが声をかける。
「お前たち、一人で平気か? この辺りにはまだ魔物がいるかもしれん」
「……そうね。でも、あなたにずっとついてきてもらうわけにもいかないわ」
「そうだな。俺もそろそろ行かなくちゃならない。……けど、もし道中で困ったら、また会うかもしれないな。特に帝国の方へ行くなら、どこかで鉢合わせる可能性が高い」
ジークはそれ以上何も言わず、小屋の扉を開けて外へ出た。アストリッドとクラリッサは彼を見送るように少し遅れて小屋を後にする。
森の外れまで来たところで、ジークは「じゃあな」とだけ呟き、姿を消していった。クラリッサが少し寂しそうにする。
「あの方、どこか不思議な雰囲気の人でしたね……」
「ええ。……きっと普通の傭兵じゃないんでしょうね。あれだけ強いんだもの」
魔獣をいとも簡単に斬り伏せた剣の腕前。そして、どこか謎めいた態度。アストリッドはほんの少しだけ興味を持ったが、今は自分の旅を優先しなければならない。
クラリッサとともに再び馬を引きながら、西へ続く道を進む。今回の一件で、旅の危険さを身をもって味わったが、その分、自分の力が完全に消えていないことを確信できたのは収穫だった。
――そう、この力がもっと戻れば、あるいは以前よりも強まれば。いつか、王国を見返すことができるだろう。
真の聖女だと名乗ったミレーユ、そして彼女に与した王家や神殿の者たち。彼らが取り返しのつかないほど後悔し、頭を垂れる時を、アストリッドは心の底で願っていた。
そのためには、もっと知識や経験を積まなければならない。新しい地で、新しい道を見つける。――帝国へ行けば、その手がかりがあるかもしれない。
そう、静かに決意を固めながら、アストリッドは朝露に濡れる道を一歩一歩踏み締めていく。いつか、必ず取り返しのつかない“ざまぁ”を味あわせるために。
寝袋を片付けながら、ジークが声をかける。
「お前たち、一人で平気か? この辺りにはまだ魔物がいるかもしれん」
「……そうね。でも、あなたにずっとついてきてもらうわけにもいかないわ」
「そうだな。俺もそろそろ行かなくちゃならない。……けど、もし道中で困ったら、また会うかもしれないな。特に帝国の方へ行くなら、どこかで鉢合わせる可能性が高い」
ジークはそれ以上何も言わず、小屋の扉を開けて外へ出た。アストリッドとクラリッサは彼を見送るように少し遅れて小屋を後にする。
森の外れまで来たところで、ジークは「じゃあな」とだけ呟き、姿を消していった。クラリッサが少し寂しそうにする。
「あの方、どこか不思議な雰囲気の人でしたね……」
「ええ。……きっと普通の傭兵じゃないんでしょうね。あれだけ強いんだもの」
魔獣をいとも簡単に斬り伏せた剣の腕前。そして、どこか謎めいた態度。アストリッドはほんの少しだけ興味を持ったが、今は自分の旅を優先しなければならない。
クラリッサとともに再び馬を引きながら、西へ続く道を進む。今回の一件で、旅の危険さを身をもって味わったが、その分、自分の力が完全に消えていないことを確信できたのは収穫だった。
――そう、この力がもっと戻れば、あるいは以前よりも強まれば。いつか、王国を見返すことができるだろう。
真の聖女だと名乗ったミレーユ、そして彼女に与した王家や神殿の者たち。彼らが取り返しのつかないほど後悔し、頭を垂れる時を、アストリッドは心の底で願っていた。
そのためには、もっと知識や経験を積まなければならない。新しい地で、新しい道を見つける。――帝国へ行けば、その手がかりがあるかもしれない。
そう、静かに決意を固めながら、アストリッドは朝露に濡れる道を一歩一歩踏み締めていく。いつか、必ず取り返しのつかない“ざまぁ”を味あわせるために。
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