偽聖女と断罪された私、帝国で真の力に目覚めました  ――王国はもう、救いません

鍛高譚

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第2章:出会いと覚醒――真なる力を知る時

15話

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 そうして、魔獣の一件で小屋に滞在することになったアストリッドたちは、夜が近づくと父子とも別れを告げる。彼らは地元の村へ戻るらしく、深々と礼を述べて去っていった。
 結果的に小屋には、アストリッド、クラリッサ、そしてジークの三人が泊まる形になる。ジークは自分は野宿にも慣れているからと言ったが、この小屋にスペースがあることと、アストリッドたちが危険に巻き込まれる可能性が高いという理由で残ってくれるようだ。
 日が沈み、焚き火の暖かい炎が小屋の中を照らす。アストリッドはその火を見つめながらぼんやりと思考を巡らせる。
「……あんな魔獣がそこかしこにいるのかしら。私、王都にいた頃は知らなかったわ」
「辺境や国境付近では、魔物が出る話は珍しくない。だが、今日のはちと奇妙だったな」
 ジークが答える。彼は焚き火に鍋をかけ、煮立ったスープに薬草を加えながら、時折外を気にするように視線をやる。

 しばらくすると、鍋の中から香ばしい香りが漂い始めた。ジークは木のお椀にスープをよそい、アストリッドとクラリッサに渡す。
「腹が減っているだろう。こんなものでよければ食べてくれ」
「ありがとうございます。助かります……」

 アストリッドは一口飲んでみる。地味な味だが、体が温まる。――何か妙に懐かしさを感じた。王宮や公爵家で食べていた複雑な味付けのご馳走とはまるで違う素朴な味。
 けれど、今の自分にはこれがむしろしみる。旅の途中、こうして誰かと焚き火を囲むのは、初めての経験だ。
 すると、ジークがぽつりと呟く。
「君たちは、どうしてこんな辺境を旅してるんだ? 見たところ、あまり旅慣れていないように見えるが……」

 アストリッドはスープをすすりながら考える。どう答えるべきか。
「……少し事情があって、王都を出たの。しばらくはあちらに戻る気はないから、行けるところまで行こうと思っているわ」
 それは真実だが、詳しく説明する気はない。ジークもそれ以上は深く聞かない。
 しかし、焚き火の炎をじっと見つめながら、低い声で言う。
「そうか。……王都を出る事情なんて、それぞれあるだろう。俺も似たようなもんだ。……ま、今は帝国の方へ向かう予定だけどな」
「帝国……?」
 アストリッドは反応せずにはいられない。自分も行こうとしていた先だ。
「あなたは帝国の出身なのかしら」
「いや、純粋な帝国人ってわけでもない。外套を見ての通り、傭兵みたいなことをやってるから、あっちこっちを流れているだけさ」

 ジークはさらりとそう言うが、アストリッドはどこか引っかかるものを感じる。彼の佇まいには、ただの傭兵とは思えない品格がある。剣の扱いも相当の腕前だが、それだけではないオーラがあるように思えた。
 だが、彼が話したがらないなら、こちらも詮索しない方がいいだろう。お互いさまなのだから。
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