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第3章:帝国境への道――刻まれる宿命の足音
20話
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辺境の村でならず者たちを追い払った翌朝、アストリッド(偽名:アストリン)は朝日に照らされる村の家々を眺めながら、静かに深呼吸をした。
初夏の柔らかな陽光が、土壁の家々を淡く金色に染めている。昨日の騒ぎの名残か、村人たちはまだ少し落ち着かない様子だが、それでも穏やかな空気が流れていた。
――もう、この村には自分たちが留まる理由もない。彼女はクラリッサとともに、荷物をまとめて出発する準備を整えた。
村長や古老たちは名残惜しそうに見送ってくれる。彼らからすれば、突如現れた“魔法を使える娘”に助けられた形だが、アストリッドにとってはただの偶然の行動だった。
しかし、村長が深々と頭を下げ、ハラハラと涙をこぼす姿を見ると、やはり複雑な感慨に包まれる。
「お若いのに、あんな連中を追い払ってくれて……本当にありがとうございました。今後、また戻ってくることがあれば、ぜひゆっくりしていってくださいね」
アストリッドは淡く微笑み、そっと首を振る。
「いえ、もうここに戻ることはないと思います。もし奴らが再び襲ってきたら……そのときは、私のことなどあてにしないでくださいね。自衛手段を考えてください」
そう言い切る彼女の瞳は少し冷たい。昨日、ならず者たちを追い払ったのは“アストリッドの気まぐれ”に過ぎない。
――かつての“聖女”ならば、もっと積極的に人々を守ろうとしただろう。だが今は違う。彼女には、復讐の炎が胸の底で静かに燃えているからこそ、二度と「無償の奉仕」をするつもりはなかった。
村人たちは戸惑ったように視線を交わしながらも、アストリッドの本質までは知り得ない。ただ、“彼女には深い事情があるのだろう”と察するだけだ。
「それでも、お礼をさせてください。少ないですけれど、これは旅の糧になるかと……」
そう言って差し出されたのは、干し肉や乾燥野菜などの食糧、それからほんの少しのコインだった。クラリッサが恐縮しながら受け取る。
「ありがとうございます。わたしたち、これから長い道のりになりそうなので……本当に助かります」
「ご無事を……」
村人の祈りを背に、二人は村を出た。しばらくは舗装の甘い街道をひたすら西へ。時折、東風が背中を押すように吹き、朝の爽やかな香りが鼻をくすぐる。
初夏の柔らかな陽光が、土壁の家々を淡く金色に染めている。昨日の騒ぎの名残か、村人たちはまだ少し落ち着かない様子だが、それでも穏やかな空気が流れていた。
――もう、この村には自分たちが留まる理由もない。彼女はクラリッサとともに、荷物をまとめて出発する準備を整えた。
村長や古老たちは名残惜しそうに見送ってくれる。彼らからすれば、突如現れた“魔法を使える娘”に助けられた形だが、アストリッドにとってはただの偶然の行動だった。
しかし、村長が深々と頭を下げ、ハラハラと涙をこぼす姿を見ると、やはり複雑な感慨に包まれる。
「お若いのに、あんな連中を追い払ってくれて……本当にありがとうございました。今後、また戻ってくることがあれば、ぜひゆっくりしていってくださいね」
アストリッドは淡く微笑み、そっと首を振る。
「いえ、もうここに戻ることはないと思います。もし奴らが再び襲ってきたら……そのときは、私のことなどあてにしないでくださいね。自衛手段を考えてください」
そう言い切る彼女の瞳は少し冷たい。昨日、ならず者たちを追い払ったのは“アストリッドの気まぐれ”に過ぎない。
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そう言って差し出されたのは、干し肉や乾燥野菜などの食糧、それからほんの少しのコインだった。クラリッサが恐縮しながら受け取る。
「ありがとうございます。わたしたち、これから長い道のりになりそうなので……本当に助かります」
「ご無事を……」
村人の祈りを背に、二人は村を出た。しばらくは舗装の甘い街道をひたすら西へ。時折、東風が背中を押すように吹き、朝の爽やかな香りが鼻をくすぐる。
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