偽聖女と断罪された私、帝国で真の力に目覚めました  ――王国はもう、救いません

鍛高譚

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第3章:帝国境への道――刻まれる宿命の足音

21話

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1.無法地帯の風聞

 村を出てから数日後。
 アストリッドとクラリッサは幾つもの小さな町や集落を巡りながら、少しずつ帝国との国境へ近づいていた。辺境地帯というだけあって、住民は王都以上に情報に飢えている反面、外の世界には詳しい。
 雑談の中で耳にする話によると、どうやら王国と帝国の国境付近には、いわゆる“無法地帯”と呼ばれる地域が存在するらしい。そこは王国の領土でありながら統治が行き届いておらず、強欲な領主や盗賊団、あるいは魔物たちが跋扈(ばっこ)しているという。
 アストリッドは、追放されて以来ずっと王国の名声など気に留めていなかったが、そこまで荒れ果てているとなると、少し意外ではあった。
「王国は中央部ばかり目を向けて、辺境を放置しているのかもしれないわね」
「そうでしょうね。昨日泊まった宿の主人も、『近頃は王城からの支援がまったくない』と嘆いていましたし……」

 クラリッサの言葉に、アストリッドは皮肉げに唇を歪める。
「追放されて分かったけど、王国がいかに聖女の力――いいえ、人を使い捨てにしてきたのか、なんとなく見えてくるわ。もし真の聖女だとやらが王都で本当に活躍しているなら、辺境の惨状も救ってやればいいのに」
 自分を切り捨てた者たちが、結局こうして国境地帯を放置しているのだと思うと、呆れるばかりだ。
 同時に、“本物の聖女”とされるミレーユという少女が、国の隅々まで目を向けていない現状を思い描くと、胸に黒い感情がじわりと広がる。

「――まあ、私には関係のない話だけどね」

 そう呟くアストリッドの瞳は冷たく、クラリッサも返す言葉を失う。
 彼女には“かつてのアストリッド”の面影がまだ残っている――人を助けたい、という優しさが。だが今は、“王国を救いたい”という気持ちを捨て去り、ただ静かに前へ進むしかない。
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