21 / 31
第3章:帝国境への道――刻まれる宿命の足音
21話
しおりを挟む
1.無法地帯の風聞
村を出てから数日後。
アストリッドとクラリッサは幾つもの小さな町や集落を巡りながら、少しずつ帝国との国境へ近づいていた。辺境地帯というだけあって、住民は王都以上に情報に飢えている反面、外の世界には詳しい。
雑談の中で耳にする話によると、どうやら王国と帝国の国境付近には、いわゆる“無法地帯”と呼ばれる地域が存在するらしい。そこは王国の領土でありながら統治が行き届いておらず、強欲な領主や盗賊団、あるいは魔物たちが跋扈(ばっこ)しているという。
アストリッドは、追放されて以来ずっと王国の名声など気に留めていなかったが、そこまで荒れ果てているとなると、少し意外ではあった。
「王国は中央部ばかり目を向けて、辺境を放置しているのかもしれないわね」
「そうでしょうね。昨日泊まった宿の主人も、『近頃は王城からの支援がまったくない』と嘆いていましたし……」
クラリッサの言葉に、アストリッドは皮肉げに唇を歪める。
「追放されて分かったけど、王国がいかに聖女の力――いいえ、人を使い捨てにしてきたのか、なんとなく見えてくるわ。もし真の聖女だとやらが王都で本当に活躍しているなら、辺境の惨状も救ってやればいいのに」
自分を切り捨てた者たちが、結局こうして国境地帯を放置しているのだと思うと、呆れるばかりだ。
同時に、“本物の聖女”とされるミレーユという少女が、国の隅々まで目を向けていない現状を思い描くと、胸に黒い感情がじわりと広がる。
「――まあ、私には関係のない話だけどね」
そう呟くアストリッドの瞳は冷たく、クラリッサも返す言葉を失う。
彼女には“かつてのアストリッド”の面影がまだ残っている――人を助けたい、という優しさが。だが今は、“王国を救いたい”という気持ちを捨て去り、ただ静かに前へ進むしかない。
村を出てから数日後。
アストリッドとクラリッサは幾つもの小さな町や集落を巡りながら、少しずつ帝国との国境へ近づいていた。辺境地帯というだけあって、住民は王都以上に情報に飢えている反面、外の世界には詳しい。
雑談の中で耳にする話によると、どうやら王国と帝国の国境付近には、いわゆる“無法地帯”と呼ばれる地域が存在するらしい。そこは王国の領土でありながら統治が行き届いておらず、強欲な領主や盗賊団、あるいは魔物たちが跋扈(ばっこ)しているという。
アストリッドは、追放されて以来ずっと王国の名声など気に留めていなかったが、そこまで荒れ果てているとなると、少し意外ではあった。
「王国は中央部ばかり目を向けて、辺境を放置しているのかもしれないわね」
「そうでしょうね。昨日泊まった宿の主人も、『近頃は王城からの支援がまったくない』と嘆いていましたし……」
クラリッサの言葉に、アストリッドは皮肉げに唇を歪める。
「追放されて分かったけど、王国がいかに聖女の力――いいえ、人を使い捨てにしてきたのか、なんとなく見えてくるわ。もし真の聖女だとやらが王都で本当に活躍しているなら、辺境の惨状も救ってやればいいのに」
自分を切り捨てた者たちが、結局こうして国境地帯を放置しているのだと思うと、呆れるばかりだ。
同時に、“本物の聖女”とされるミレーユという少女が、国の隅々まで目を向けていない現状を思い描くと、胸に黒い感情がじわりと広がる。
「――まあ、私には関係のない話だけどね」
そう呟くアストリッドの瞳は冷たく、クラリッサも返す言葉を失う。
彼女には“かつてのアストリッド”の面影がまだ残っている――人を助けたい、という優しさが。だが今は、“王国を救いたい”という気持ちを捨て去り、ただ静かに前へ進むしかない。
1
あなたにおすすめの小説
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
尽くしてきた婚約者に裏切られたので、婚約を解消しました〜彼が愛に気づいたのは、すべてを失ったあとでした〜
ともどーも
恋愛
「今回で最後だ。誓うよ」
これは二度目の『結婚式キャンセル』の時に言われた言葉。
四年間、愛する婚約者ディートリッヒのため尽くし続けてきたイリス。
だがディートリッヒは、イリスの献身を当然のものとし、やがて初恋の令嬢エレノアを優先するようになる。
裏切り、誤解、そして理不尽な糾弾。
心も身体も限界を迎えた夜、イリスは静かに決意した。
──もう、終わらせよう。
ディートリッヒが「脅しのつもり」で差し出した婚約解消の書類を、イリスは本当に提出してしまう。
すべてを失ってから、ようやく自分の愛に気づいたディートリッヒ。
しかしもう、イリスは振り返らない。
まだ完結まで執筆が終わっていません。
20話以降は不定期更新になります。
設定はゆるいです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる