「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」

鍛高譚

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第3章:動き出す野望と過去との対峙

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●王家との最終合意とマイラの確信

廊下を抜けると、先ほどの宰相の補佐官が駆け寄ってきて「ご足労をおかけしました。調整は順調に進んでおりますので、近いうちに正式な合意の場を設けたいと考えています」と伝える。どうやら、マイラの役目はこれで終わりらしい。
馬車に乗り込み、王宮を離れる道中。マイラは窓の外を眺めながら、ラウルとリリアの姿を思い出す。わずか数ヶ月前まで、彼女は王宮の花形として第二王子の婚約者という立場にあった。その立場を自ら捨てたわけではないが、結果として抜け出した今、自分には確かに新しい道が開けている。それに引き換え、ラウルは“平民の恋”を貫くためにあらゆるものを失いかけている。
(――どちらが正解とか不正解という問題ではないのかもしれない。でも、私はもう戻る気なんてない)
マイラは思わず唇を引き結ぶ。ラウルを恨む気持ちや「ざまあみろ」と思う気持ちが、全くないとは言い切れない。けれど、それよりも強いのは「もうあの時代に逆戻りしたくない」という意志だった。

(王家は間もなく父との間で最終的な合意を結ぶ。そうすれば、私たちグランシェル家は王家の“特別な優遇”を得ることになるわ。そのおかげで、今進めている事業もより強固に推進できるはず……)
胸中でそう整理すると、先ほどラウルが「助けてくれ」と懇願してきたことが、いかに虚しい叫びだったかをあらためて痛感する。自ら手放した“最良の縁”を今さら嘆いても、もう遅いのだ。

屋敷に帰り着くと、執事が「お嬢様、おかえりなさいませ」と出迎えてくれる。マイラはすぐに父の執務室へ行き、王宮での打ち合わせとラウルとの遭遇について簡潔に報告した。デゼルはラウルの嘆願を聞いても全く動じず、むしろ「それ見たことか」という表情を浮かべる。
「まったく、王子ともあろう者が困窮して元婚約者を頼るとは、何と情けない話だ。……お前も余計な干渉はするなよ。私たちが目指すのは“円満に王家と手を打つ”ことだけだ」
「ええ、わかっています。彼らには彼らの人生があるでしょうし、私にはもう関係のないことです」
そうきっぱり言い放つマイラに、デゼルは満足そうに頷いた。
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