19 / 43
**第17話 後編『日替わり出勤制度、崩壊の危機』
しおりを挟む
第17話(後編)
『日替わり出勤制度、崩壊の危機』**
「では本日より――アーロン殿下とミリア嬢は、両家で日替わり勤務を行うこととする!」
長々しい会議の末に決まった結論を、側近長が誇らしげに読み上げた。
――が。
「……あの、アーロン様?」
ミリアが横を見ると、
アーロンはすでに険しい顔で腕を組んでいた。
まるで“その制度、この場で即座に葬るつもりか”という表情である。
「ミリアが毎日別の場所に行く? それは……危険だ」
「えええっ!? 危険じゃありません! ただの掃除係です!」
「掃除用具は武器にもなる。つまり敵対勢力に狙われやすい」
「掃除係の武器精度の話になってますわ!?」
側近たちは、
「ま、また始まった……」「殿下の過保護期、継続中か……」
とヒソヒソしている。
◆
結局その日は“お試し勤務”として、ミリアはアーロンの家へ。
アーロンは仕事に行き、ミリアは留守番しながら掃除をしていた。
――すると。
「…………」
ミリアはモップを握り、周囲に誰もいないことを確認すると。
クルッ、ひゅんっ、バサァッ!
モップをバトンのようにくるりと回し、最後にビシッとポーズを決めた。
「たまに練習しませんと、鈍りますからね!」
今日も絶好調である。
さらに。
「ら~らら~♪ 今日も床はピカピカ~♪」
モップをマイクにし、鼻歌交じりに歌っていた。
完全に“ただの掃除の人”の領域を超えている。
しかしそのとき――
ガチャッ
ドアが開いた。
「ミリア、戻った――」
「!?!?」
ミリア、即座にモップを背中に隠す。
が、隠しきれていない。柄が思い切り見えている。
アーロンは一瞬固まり――
「……ミリア。今、歌ってた?」
「う、歌ってません! 歌ってなんて歌ってません! モップを回してなんていません!」
「いや、言ってないけど……全部自白したな?」
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」
アーロンはくすりと笑い、ミリアの頭を軽く撫でた。
「楽しそうで、よかった」
「あの……恥ずかしいので忘れてください」
「忘れられるか。かわいすぎて」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ミリアの顔は真っ赤に。
◆
その夜。
「明日は俺の家で働くのは禁止だ」
アーロンが真剣な顔で言った。
「え? なんでですか?」
「……俺が、仕事に集中できない」
「えっ?」
「ミリアのことを思い出してニヤけてしまう。側近に怪しまれる」
「はああああああああ!!?」
「だから明日はミリアの家で働く。交互に、じゃなくて、ずっと俺が付く形で」
「制度、大崩壊してません!?」
◆
翌日――。
ミリアの家にて。
「アーロン様!? なんで掃除の手伝いを!?」
「……慣れたほうがいいと思って。ミリアと同じ仕事をすれば、護衛の効率も上がる」
そう言いながらアーロンは、ぎこちなくモップを持っていた。
だが。
「アーロン様……モップ、逆さです……」
「…………」
「そ、それは乾拭き用でして……! 水浸しの床に使うと危険でして……!」
「…………」
「うわああああああん!! そんな顔しないでください!!」
『日替わり出勤制度、崩壊の危機』**
「では本日より――アーロン殿下とミリア嬢は、両家で日替わり勤務を行うこととする!」
長々しい会議の末に決まった結論を、側近長が誇らしげに読み上げた。
――が。
「……あの、アーロン様?」
ミリアが横を見ると、
アーロンはすでに険しい顔で腕を組んでいた。
まるで“その制度、この場で即座に葬るつもりか”という表情である。
「ミリアが毎日別の場所に行く? それは……危険だ」
「えええっ!? 危険じゃありません! ただの掃除係です!」
「掃除用具は武器にもなる。つまり敵対勢力に狙われやすい」
「掃除係の武器精度の話になってますわ!?」
側近たちは、
「ま、また始まった……」「殿下の過保護期、継続中か……」
とヒソヒソしている。
◆
結局その日は“お試し勤務”として、ミリアはアーロンの家へ。
アーロンは仕事に行き、ミリアは留守番しながら掃除をしていた。
――すると。
「…………」
ミリアはモップを握り、周囲に誰もいないことを確認すると。
クルッ、ひゅんっ、バサァッ!
モップをバトンのようにくるりと回し、最後にビシッとポーズを決めた。
「たまに練習しませんと、鈍りますからね!」
今日も絶好調である。
さらに。
「ら~らら~♪ 今日も床はピカピカ~♪」
モップをマイクにし、鼻歌交じりに歌っていた。
完全に“ただの掃除の人”の領域を超えている。
しかしそのとき――
ガチャッ
ドアが開いた。
「ミリア、戻った――」
「!?!?」
ミリア、即座にモップを背中に隠す。
が、隠しきれていない。柄が思い切り見えている。
アーロンは一瞬固まり――
「……ミリア。今、歌ってた?」
「う、歌ってません! 歌ってなんて歌ってません! モップを回してなんていません!」
「いや、言ってないけど……全部自白したな?」
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」
アーロンはくすりと笑い、ミリアの頭を軽く撫でた。
「楽しそうで、よかった」
「あの……恥ずかしいので忘れてください」
「忘れられるか。かわいすぎて」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ミリアの顔は真っ赤に。
◆
その夜。
「明日は俺の家で働くのは禁止だ」
アーロンが真剣な顔で言った。
「え? なんでですか?」
「……俺が、仕事に集中できない」
「えっ?」
「ミリアのことを思い出してニヤけてしまう。側近に怪しまれる」
「はああああああああ!!?」
「だから明日はミリアの家で働く。交互に、じゃなくて、ずっと俺が付く形で」
「制度、大崩壊してません!?」
◆
翌日――。
ミリアの家にて。
「アーロン様!? なんで掃除の手伝いを!?」
「……慣れたほうがいいと思って。ミリアと同じ仕事をすれば、護衛の効率も上がる」
そう言いながらアーロンは、ぎこちなくモップを持っていた。
だが。
「アーロン様……モップ、逆さです……」
「…………」
「そ、それは乾拭き用でして……! 水浸しの床に使うと危険でして……!」
「…………」
「うわああああああん!! そんな顔しないでください!!」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました
Rohdea
恋愛
──たまたま落ちていた指輪を拾っただけなのに!
かつて婚約破棄された過去やその後の縁談もことごとく上手くいかない事などから、
男運が無い伯爵令嬢のアイリーン。
痺れを切らした父親に自力で婚約者を見つけろと言われるも、なかなか上手くいかない日々を送っていた。
そんなある日、特殊な方法で嫡男の花嫁選びをするというアディルティス侯爵家のパーティーに参加したアイリーンは、そのパーティーで落ちていた指輪を拾う。
「見つけた! 僕の花嫁!」
「僕の運命の人はあなただ!」
──その指輪こそがアディルティス侯爵家の嫡男、ヴィンセントの花嫁を選ぶ指輪だった。
こうして、落ちていた指輪を拾っただけなのに運命の人……花嫁に選ばれてしまったアイリーン。
すっかりアイリーンの生活は一変する。
しかし、運命は複雑。
ある日、アイリーンは自身の前世の記憶を思い出してしまう。
ここは小説の世界。自分は名も無きモブ。
そして、本来この指輪を拾いヴィンセントの“運命の人”になる相手……
本当の花嫁となるべき小説の世界のヒロインが別にいる事を───
※2021.12.18 小説のヒロインが出てきたのでタグ追加しました(念の為)
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です
由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。
婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。
ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。
「君を嫌ったことなど、一度もない」
それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。
勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
華やかな異世界公爵令嬢?――と思ったら地味で前世と変わらないブラックでした。 ~忠誠より確かな契約で異世界働き方改革ですわ~』
ふわふわ
恋愛
華やかなドレス。きらびやかな舞踏会。
公爵令嬢として転生した私は、ようやく優雅な人生を手に入れた――
……はずでしたのに。
実態は、書類の山、曖昧な命令、責任の押し付け合い。
忠誠の名のもとに搾取される領地運営。
前世のブラック企業と、何も変わりませんでしたわ。
ならば。
忠誠ではなく契約を。
曖昧な命令ではなく明文化を。
感情論ではなく、再評価条項を。
「お父様、お手伝いするにあたり契約を結びましょう」
公爵家との契約から始まった小さな改革は、やがて王家を巻き込み、地方貴族を動かし、王国全体の制度を揺るがしていく――。
透明化。共有化。成果の可視化。
忠誠より確かな契約で、異世界働き方改革ですわ。
これは、玉座を奪う物語ではありません。
国家を“回る構造”に変える、公爵令嬢の改革譚。
そして最後に選ばれるのは――契約ではなく、覚悟。
---
国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!!
隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!?
何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。
だってわたくし、悪女ですもの
さくたろう
恋愛
妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。
しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる