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本編
3.弟の愛
しおりを挟むその夜、私は中々寝つけなかった。
私がこれまでしてきたことは、全て無駄だったという大きな虚無感に捕らわれて。
そして、こんな私が何をしようと、足掻こうと、結局弟に比べたら無価値なのだと思い知らされて。
ようやく浅い眠りにつき、うとうとと微睡んだ頃、何故かギシリと寝台が沈んだ。
頬を優しく撫でられ、唇に何か柔らかく温かいものが押し当てられる。
ゆっくりと瞼を開くと、そこには寝台に腰掛ける弟がいた。
「……ウィル?」
月明かりを背にして、弟の表情はわからない。
ただ、瞳だけが光っている。
「どうしたの、こんな時間に……?」
さすがに弟が学校に入った歳から、一緒に寝ることはなくなった。
こんな風に、部屋を訪ねてくることもない。
訝しげに問う私に、弟の瞳がすっと細くなった気がした。
「姉上。……平気、なのですか?」
「……何が?」
質問の意図が、わからない。
ただ、私の返答に、弟の纏う空気が変わった。
「見て、いたのでしょう?」
「それは……」
「私がマーガレットにキスしていたのを」
「……」
何が言いたいのだ。
見てはまずかったのか。
だったら、あんな誰に見られるかわからないような場所でキスなどしなければよかったのだ。
「そうね、見たわ。でも、偶々よ。……駄目だった?」
「いいえ」
「……それを確認したくて、わざわざここに来たの?」
だとしたら腹が立つ。
あんな幸せそうなキスシーンを見せつけておいて、文句を言いに来たのか。
別に邪魔などしないから、さっさと消えて欲しい。
「確認したいのは、別のことです」
「……?」
「あれは、わざと姉上に見せるようにキスしたんです」
「……は?」
「姉上に見せるためでなければ、キスなんかしません」
何を言っているのかまったくわからない。
戸惑う私に、弟がふっと笑った。
「……やきもちを、焼いていただけないかと」
つまり、嫌がらせをしたかったわけだ。
まったく、いつからそんなに意地が悪くなったのか。
まあ、これまで私が彼にしてきたことを思えば当然なのかもしれないが。
「……そう」
「そう、とは?」
「……そうね、やっぱりショックだったわ」
弟が花が綻ぶように笑ったのがわかった。
そのまま抱きしめられて、私は混乱した。
彼はいったい何をしたいのだ。
「姉上……」
「寂しいけど、仕方がないわね。でも安心してちょうだい。ちゃんと姉として応援するつもりよ」
何故かすうっと空気が冷えたのがわかった。
弟は、私を抱きしめたまま固まったように動かない。
やはり、今日の彼は何かがいつもと違う。
まあ、2年も会っていなかったのだ、子供の頃と違っていて当然なのだが。
「ウィル……?」
「姉上は、私が他の女とキスをするのは嫌ではないのですか?」
「それは嫌よ。でも……」
「では、罰を。姉上に嫌がらせをした私に、罰を申し付けてください」
やはり、嫌がらせだったのか。
それにしても、先程からやけにウィリアムの体が熱い。
そして私は、唐突に理解した。
つまり弟は、それを期待していたわけだ。
何のことはない、弟の中で私は、単なる性欲処理係というわけだ。
何が、罰、だ。
そんなの罰でもなんでもないではないか。
理解した途端、腹の中で怒りがとぐろを巻くのがわかった。
「……わかったわ」
「姉上……」
期待に満ちた弟の声が癇に障る。
体を離した私は、にっこりと微笑んだ。
「じゃあ、ウィル。ひざまずきなさい」
「はい」
嬉しそうにいそいそと寝台から降りて跪く。
そんな弟に、私は寝台に腰掛けて片足を差し出した。
「舐めなさい」
にっこり微笑みながら命令する。
さすがにこれは、嫌だろう。
だって、足だ。
足を舐めさせられるなど、屈辱以外の何ものでもない。
ましてや、嫌がらせをしたくなる程馬鹿にしている姉の足だ。
お綺麗な弟が、出来るはずもない。
期待していた罰を与えてもらえなくて、きっと眉を顰めて戸惑うだろうと内心ほくそ笑む。
しかし、弟の反応は、私の予想と全く違っていた。
「はい、姉上」
うっとりと、嬉しそうに微笑んで足の甲に口付ける。
驚愕する私を見上げて、弟が蕩けるような笑顔になった。
固まる私の目の前で、両手で足を持ち上げる。
見せつけるようにつま先を口に含まれて、私は思わず羞恥に真っ赤になった。
「ウィルっ! なんてことをっ!」
「姉上が、言ったことですよ?」
「まさか本当にするなんてっ!」
慌てて足を戻そうとするも、ガッチリ掴まれていてびくともしない。
「離しなさいっ! ウィルっ!」
「嫌です」
「駄目っ、……っ!」
ぬるり、と指の間をウィリアムが舐め上げる。
瞬間、ゾクゾクするような快感が体を這いあがった。
一本づつ、丁寧に足の指を吸い上げ舐めていく。
整った美しい顔の男が、長い睫毛を伏せて自分の足に赤い舌を這わせているという、なんとも淫靡なその光景から、目を離せない。
更には足の裏をくまなく舐め上げられて、震えて倒れそうになる自分の体を支えるので私は精一杯になった。
「……っ」
「姉上……」
踝を舐めていた舌が、やがてふくらはぎを通り、膝裏へと這い上がってくる。
太腿の内側に口付けられたところで、私はハッと我に返った。
それ以上は、いけない。
「ウィル、もう、終わり、よ……」
舐められる度にぞわぞわとした快感が這い上がり、声が震えてしまう。
しかし、内腿に口付けたまま、ウィリアムが艶然と笑って私を見上げてきた。
「いいえ?」
「それ以上は、駄目……っ」
「何故です? 姉上は舐めろと言って、足を差し出された。だったらきちんと全て舐めなくては」
「そこまでしろとは言ってないわっ!」
「嫌です。姉上にわかって頂けるまで、私はやめません」
「な、なにをっ、……っ!!」
内腿を舐め上げられ、その快感に私は声を失った。
というか、あられもない声が出そうで、むしろ堪えるのが精一杯だ。
次の瞬間、ウィリアムが下着の上から私の秘所にかぶりついた。
「ひぃっ! だ、駄目えっ!」
「ああ、姉上……」
うっとりと呟いて再びそこを口に含む。
両手でウィリアムの頭を押し返すも、びくともしない。
そのまま下着の上から吸い上げられて、私はなすすべもなく嬌声を上げた。
「あぁあっ!」
張り付いた下着ごと吸い上げられて、濡れた布地が冷たくなる。
吸われる刺激と、そのスースーする冷たい感覚に、頭がおかしくなりそうな程の快感を感じてしまう。
今度は逆に、口に含んだまま息を吐き出されて、吐息の熱で温かくなる。
体を支えていられなくなった私は、そのままどさりと後ろに倒れてしまった。
何度もそれを繰り返されて、もう頭はまともに動かない。
いつの間にか下着を取り払われたそこに、今度は直接ウィリアムが舌を這わしてきた。
「ああっ、……ああ、い、ああっ!」
ぬるぬると秘裂の間をウィリアムの舌が往復する。
陰核を吸われて、目の前に火花が散ったようになった。
同時に体の中が蠢くのがわかる。
まだひくひくとわななく蜜口に、ウィリアムがずぷりと指を入れてきた。
陰核を舌で弄られながら、膣内を指で蹂躙される。
余りの快感に、私は喘ぐことしかできない。
きっともう、おかしくなってしまってるのだろう。
だって、これをしてるのが、血を分けた弟だということがどうでもよく思えるのだから。
しかし、膣口を押し広げられる痛みで私は一気に覚醒した。
気付けばウィリアムが私にのしかかっている。
これは、駄目だ。
絶対、駄目。
獣の所業だ。
「ウィルっ!! 駄目っ!! これは駄目っ!!」
「姉上、愛してます」
「やああぁっ! ダメダメダメダメっ!! 痛い痛い痛いぃっ!!」
「ああ、姉上……。どんなにこの時を夢見たことか……」
「いあやあああっ!! ウィルっ!! やめてええええっ!!」
「はぁっ……、姉上の中は、こんなにも、熱い……」
「いやあああぁっ! 誰かっ、誰かっ、助けてええっ!」
「安心してください、姉上。邸の使用人は全て買収してあります。私達のことは、皆、黙認してくれます」
「なっ!? ああっ、いたあああっ!」
「……はあ。……全部、挿りました」
「あ、あ、あ……。な、なんてことを……」
私の恥骨にウィリアムの恥骨が当たっている。
ぴったりと繋がり、下半身がくっついているのが見える。
その前に、私のなかをみっちりと埋め尽くし、強烈な圧迫感で存在を主張しているものがあるのだ。
もう、取り返しはつかない。
「ど、どうして、こんなことを……」
そんなにも私が憎かったのか。
喜んでいるように見えたが、やはり私のしたことを許せなかったのか。
だとしても、これは酷い。
「もちろん、姉上を愛しているからです」
「なっ……」
「子供のころからずっと、姉上を愛してました」
「そ、それはっ……、はあっ!」
ゆるゆると腰を動かされて、再び中が痛み出す。
痛みとショックで涙を流す私の頬を拭って、ウィリアムが蕩けるように微笑んだ。
「あなたへの愛が異性への愛だと気付いたのは、初めての精通の時です。あなたの夢を見たんです。それからはもうずっと、あなたを夢想して自慰をしていました」
つまり、私がウィリアムの体を弄るより前から、彼は私を使って自慰をしていたということか。
「眠るあなたに口付けしたり、触ったり。あなたはまったく気づいてなかったみたいですが」
そんなの、知らない。
確かに私は、一度深い眠りについたら、滅多なことでは起きない。
「だから姉上、あなたが私に触れてくれたとき、気が触れるかと思う程嬉しかった」
「あ、あ、ウィ、ウィル……、もう……」
徐々に、痛み以外の感覚が混じり始める。
痛みは随分と和らぎ、ウィリアムのものがなかを擦るたびに、ぞわぞわとした快感が沸き起こるのがわかった。
すでに結合部からは、くちゃくちゃと水音が立っている。
「なのにっ! あなたは私を、弟としてしか見てくれない! それを知った時の私の気持ちがわかりますか!?」
「はあっ! ああっ」
ぐっと奥を突き上げられ、脳天が痺れたようになる。
既に、抗う気にもなれない。
「あなたに私を意識させたくて、距離を置き、恋人を作り……、でも! あなたは私を一顧だにしてくれなかった!」
そうだ、弟には恋人が居るではないか。
途端に、再び強い拒絶感が沸き起こる。
「ああ、心配しなくても、私が愛してるのは、姉上、あなたただ一人です」
「そ、そういうことではっ」
「安心してください。彼女に触れたのは、今日が初めてです。……だから姉上、私の初めては、全て姉上ですよ」
一瞬でも嬉しいと思ってしまった自分が嫌だ。
しかし、それをウィリアムもわかったのだろう、嬉しそうに笑って腰を突き上げてきた。
「ああ、姉上。姉上も感じてくださってるんですね。なかがうねって、私を深く誘い込むようだ」
「なっ、そ、そんなことっ」
「……本当は私だって、無理矢理こんなことをするつもりじゃなかったんだ」
「じゃ、じゃあ、なんでっ……」
「あなたが、私を捨てようとするから」
「す、捨てるって……」
「17も年上の男寡なんかに、嫁ごうとなさるから」
「そ、それはお父様が……」
「せっかくこれまで、あなたにくる縁談は全て潰してきたというのに。あの男が余計なことをするから」
つまり、これまで私に縁談の一つも来なかったのは、弟の仕業だったのか。
「私が卒業するまで待って頂く予定だったのですがね。しかしこうなっては、仕方がありません。純潔ではない、しかも弟と体を繋げたあなたを娶りたいなどという人間はいないでしょうね」
そうだろう。
未婚にもかかわらず、純潔でない身持ちの悪い女の引き取り手などあるわけがない。
まあ、結婚できると思っていなかったから、良いといえば良いのがまだ救いか。
しかし、それにしたってこれはない。
「ああ、姉上……、リジー、愛してます。これであなたは私のものだ……」
弟が、熱い吐息と共に広い胸に私を抱き込んで、強く腰を打ちつけてきた。
徐々に動きが速くなる。
何をしようとしているのか気付いた私は、身を捩って逃れようとした。
「まっ、待ってっ……! それは、駄目っ……!!」
しかし、きつく抱きしめられて身動きが取れない。
逃さないとばかりに抱きしめて、弟が私の子宮に精を放った。
「ああっ、あ、な、なんてことを……」
もう、これで完全に後戻りはできない。
半分でも血がつながった弟の禁忌を受け止めてしまったのだ。
茫然とする私を抱きしめた後、弟が荒い息を吐いて私を腕の檻から解き放った。
「姉上、エリザベス、……一生、あなただけを愛すると誓います」
一点の曇りもない、美しく澄んだ群青の瞳が、蕩けるように笑って私を見つめていた。
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