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王宮の中庭は色とりどりの花たちが咲き乱れていた。見たことのある品種から、見たことのない鮮やかな大輪の花まである。
ん-。いい匂いだし、本当に綺麗ね。こんな日じゃなければ、もっと楽しめるのに。
その中庭の中心に白い猫足の長テーブルと、同じ形状のイスが並べられている。
テーブルの上には花のように色とりどりなお菓子と、湯気をたてる紅茶たち。
そしてそのすべての席のうち一番の末席以外は全て、花と同じように色とりどりのドレスに身を包んだ令嬢たちがすでに座っていた。
私がサラを連れてその場に到着すると、皆の視線が私とぶつかる。こういう時って、まず立って挨拶とかしないのかな。
まぁ、私にだけ時間をわざと伝えていた辺りからして、悪意しかないんだろうけど。
皆がすでに座っているのに私だけ到着時間が遅いなんてことは、きっとそういう意味なのだろう。
しかも残っているのは、一番の末席だけ。ここに座れとか、いい根性してるわよね。
私が来ないと思っていたような表情の令嬢は、何人か困ったように固まってるし。全員が敵ではないだけ、まだマシというとこかな。
「ごきげんよう、皆様?」
「クランツ令嬢、ごきげんよう」
ひきつった笑みを浮かべながら令嬢たちは口々に私に返事を返す。
私は彼女たちには視線を合わせることなく、キョロキョロと辺りを見渡した。
「まぁクランツ令嬢、あまりに遅かったので本日は来られないと思いましたわ」
したり顔の令嬢が立ち上がった。
歳は同じくらいだろうか。
ピンクのやや短めの髪に、赤い大きな瞳。
あの時のあの女という表現がぴったりね。忘れたくても忘れられないこの顔。十分すぎるほど覚えたわ、あの中庭での件でね、ユイナ嬢。
もっとも、やってるコトとか全部悪役令嬢なんだけどさ。
あ、でもある意味一番の特等席でヒロイン対悪役令嬢の戦いが見えるのね。
まぁ、観客席ではないのが残念でしかないけど。
来世はひっそりと生きるモブ希望だわ、本当に。
「んー。別に私は来なくても良かったんですよ、ユイナ令嬢?」
「は?」
「え。私の声、聞こえませんでした~? もしかしてユイナ令嬢はお耳が遠いのかしら」
まさか私がそう返すとは思わなかったのか、ユイナ嬢はポカンと口を開けた。
だって売られた喧嘩は全部買わなきゃいけないワケじゃないし。
初めから私に嫌がらせをするために用意された会場なんて、本来だったらめんどくさくて行かないわよ。
本人は行かなきゃいけないように周到に準備したつもりでも、別に他のやり返しの仕様はないわけではない。
ただ今日来たのは、ユイナ嬢の顔が見たかったことと、どうせなら一度ガツンとやってやろうと思っただけ。
半分以上、憂さ晴らしと暇潰しが入っているのは秘密だけど。
「だって、わざわざ私だけ時間の違う招待状でしたしぃ。それにお席もないみたいですし? 私、どうやらユイナ令嬢に嫌われているようでしたので……。やっぱり来ない方がよかったのかなって」
「な、わたくしはそんなことしておりませんわ!」
弱々しく泣き真似をする私に、思わずユイナ嬢は噛みつく。
この時点で、どっちが感じ悪いとか、考えないのかな。
残念すぎるわぁ。
まぁ頭に血は上ってるから、そこまで今は考えられないでしょうね。
現実問題私の言ってることは間違っていないのは誰が見ても分かること。
自分でこの状況を作ったのが、全部裏目に出ていているのよユイナ嬢。
「でも実際、私の座る席がないではないですかぁ。時間も、ルド様が他の令嬢様へ確認して下さったのですよ? なのに私のだけ違っているみたいだし……」
「じ、侍女が書き間違えたのかもしれませんわ」
「えーーー。そうなのですか?」
オーバーリアクションをしながら、私は持っていたセンスで口元を押さえた。
ん-。いい匂いだし、本当に綺麗ね。こんな日じゃなければ、もっと楽しめるのに。
その中庭の中心に白い猫足の長テーブルと、同じ形状のイスが並べられている。
テーブルの上には花のように色とりどりなお菓子と、湯気をたてる紅茶たち。
そしてそのすべての席のうち一番の末席以外は全て、花と同じように色とりどりのドレスに身を包んだ令嬢たちがすでに座っていた。
私がサラを連れてその場に到着すると、皆の視線が私とぶつかる。こういう時って、まず立って挨拶とかしないのかな。
まぁ、私にだけ時間をわざと伝えていた辺りからして、悪意しかないんだろうけど。
皆がすでに座っているのに私だけ到着時間が遅いなんてことは、きっとそういう意味なのだろう。
しかも残っているのは、一番の末席だけ。ここに座れとか、いい根性してるわよね。
私が来ないと思っていたような表情の令嬢は、何人か困ったように固まってるし。全員が敵ではないだけ、まだマシというとこかな。
「ごきげんよう、皆様?」
「クランツ令嬢、ごきげんよう」
ひきつった笑みを浮かべながら令嬢たちは口々に私に返事を返す。
私は彼女たちには視線を合わせることなく、キョロキョロと辺りを見渡した。
「まぁクランツ令嬢、あまりに遅かったので本日は来られないと思いましたわ」
したり顔の令嬢が立ち上がった。
歳は同じくらいだろうか。
ピンクのやや短めの髪に、赤い大きな瞳。
あの時のあの女という表現がぴったりね。忘れたくても忘れられないこの顔。十分すぎるほど覚えたわ、あの中庭での件でね、ユイナ嬢。
もっとも、やってるコトとか全部悪役令嬢なんだけどさ。
あ、でもある意味一番の特等席でヒロイン対悪役令嬢の戦いが見えるのね。
まぁ、観客席ではないのが残念でしかないけど。
来世はひっそりと生きるモブ希望だわ、本当に。
「んー。別に私は来なくても良かったんですよ、ユイナ令嬢?」
「は?」
「え。私の声、聞こえませんでした~? もしかしてユイナ令嬢はお耳が遠いのかしら」
まさか私がそう返すとは思わなかったのか、ユイナ嬢はポカンと口を開けた。
だって売られた喧嘩は全部買わなきゃいけないワケじゃないし。
初めから私に嫌がらせをするために用意された会場なんて、本来だったらめんどくさくて行かないわよ。
本人は行かなきゃいけないように周到に準備したつもりでも、別に他のやり返しの仕様はないわけではない。
ただ今日来たのは、ユイナ嬢の顔が見たかったことと、どうせなら一度ガツンとやってやろうと思っただけ。
半分以上、憂さ晴らしと暇潰しが入っているのは秘密だけど。
「だって、わざわざ私だけ時間の違う招待状でしたしぃ。それにお席もないみたいですし? 私、どうやらユイナ令嬢に嫌われているようでしたので……。やっぱり来ない方がよかったのかなって」
「な、わたくしはそんなことしておりませんわ!」
弱々しく泣き真似をする私に、思わずユイナ嬢は噛みつく。
この時点で、どっちが感じ悪いとか、考えないのかな。
残念すぎるわぁ。
まぁ頭に血は上ってるから、そこまで今は考えられないでしょうね。
現実問題私の言ってることは間違っていないのは誰が見ても分かること。
自分でこの状況を作ったのが、全部裏目に出ていているのよユイナ嬢。
「でも実際、私の座る席がないではないですかぁ。時間も、ルド様が他の令嬢様へ確認して下さったのですよ? なのに私のだけ違っているみたいだし……」
「じ、侍女が書き間違えたのかもしれませんわ」
「えーーー。そうなのですか?」
オーバーリアクションをしながら、私は持っていたセンスで口元を押さえた。
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