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014 互いに守りたいもののために
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「にゃーー‼」
逃げろって?
逃げたら意味ないじゃん、リーシャ。
ボクは君を助けに来たんだもん。
それにこれは想定内だもん。
まだ大丈夫さ。
「うわぁぁぁぁ」
驚いたフリをしながら、頭を抱えてしゃがみ込む。
ボクの大きな声とオーバーリアクションに、本来だったら他のことにまで警戒しているであろう親鳥の警戒が、ボクに集中している。
だからそう、きっと気づかないはずだ。
ボクに襲い掛かる親鳥は、その背後からガルドたちに狙われていることに。
「ぎゃぁぁぁぁ」
まるで人の叫び声に似た声を、親鳥が上げた。
視界を上げると、タイミングよくガルドたちが斬りかかってきたところ。
大きく広げたその羽根をガルドの大剣が薙ぎ払い、親鳥が大きく体勢崩す。
怒りに狂ったように声をあげ、ガルドたちの方へ反転した親鳥に、畳みかけるようにランタスが攻撃を加えた。
ボクはその戦闘に巻き込まれないように四つん這いでその場から離れると、やや姿勢を低くしたまま走り出す。
本当はこの場で大人しくしている予定だったけど、さっきのリーシャの様子を見ていたからか、気づいた時には動き出してしまっていた。
少しでも早く、あの鳥の巣から出してあげなきゃ。
転びそうになりながら、それでも必死に走り、やや小高くなった場所にある巣に手をかけた。
そしてボクに向かって手を伸ばすリーシャを掴む。
「ルルド!」
「リーシャ!」
大きなリーシャの声。
さっきまで猫のふりをしていたのに。
「ダメ!」
「え?」
なんでと言いかけたボクの肩に、鋭い爪が食い込む。
「あああ!」
痛みから天を仰いだボクと、親鳥の視線がぶつかる。
羽は折れ、瀕死になりながらも親鳥は卵を守ろうとしていた。
必死なんだ。
自分の子を守るために。
だけどボクも必死なんだ。
親鳥がこの卵を守りたいように、ボクだってリーシャを守りたい。
やっと出来た友だちのリーシャを、餌になんてさせられないんだよ。
「やめて! ルルドを離しなさい‼」
ボクはもがきながらもリーシャを巣から出した。
そしてそっと抱きしめた。
リーシャだけは守らないと。
「ルルド、私はいいから。血が……血が出てる。手を離して」
「大丈夫だよ、リーシャ」
きつくリーシャを抱きしめた。
「ルルドを離しやがれ!」
大きく跳躍したガルドの剣が、親鳥に突き刺さる。
「ぎぎゃあぁ!!」
断末魔のような声を上げた親鳥は、ボクたちを巣に放り込んだ。
「ぐはっ」
その反動でボクは、卵にぶつかる。
どこまでも卵は硬く、そしてやや温かかった。
「ルルド、ルルド」
リーシャのもふもふとした手が、頬を叩く。
一瞬意識を失いかけたものの、ゆっくりとリーシャを見た。
いつもの綺麗な毛並みは汚れてもいなかった。
ああ良かった。
リーシャには怪我はなさそうだ。
誰かのために、こんな風に一生懸命になったのは初めてだなぁ。
でも、うん。
すごくどこかが満たされた気がする。
いいな、こういうの。
「ふふふ。良かった」
「なにが良かったのよ! この馬鹿。馬鹿ルルド!」
その大きく透き通った瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「泣かないでリーシャ。ボクは大丈夫だよ。むしろ君を助けられて良かった」
「大丈夫じゃないじゃない。こんなボロボロで」
「でもボクが助けたかったんだ」
「本当に馬鹿、ね」
リーシャはゆっくり近づくと、ボクの胸に顔を埋めた。
ゆっくりとリーシャを撫でながら、自分の体を確認する。
腕を上げると肩が痛むものの、動かないわけではない。
だけどまぁ、うん……。全体的に体が重いのも確かだった。
筋肉痛? 違うなぁ。
打撲って感じなのかな。
「いててっ」
体を起こそうとすると、背中が軋むような気がした。
「ルルド、無理しないで」
「うん。大丈夫。でもさ、自分から動くって結構大変なことだったんだね」
「当たり前でしょう。ルルドは戦闘要員でもないんだし」
「そうだね」
今までうっかり役でしかなかったから、こういうのは初めてかな。
ボクに攻撃が及べば、基本的に撮り直しになっちゃうから。
そういう面ではサイラスたちはしっかりしてたんだよね。
あの最後以外は、放送事故もなかったわけだし。
って、こんなのんびり考えてる暇なかったんだ。
親鳥はどうなったんだろう。
ガルドたちなら問題ないと思うけど。
やっとの思いで起き上がると、あの卵が視界に入る。
大きな卵には、ボクがぶつかったせいかヒビが入っていた。
「大丈夫か、ルルド!」
「うん、ガルド。ボクもリーシャも……」
そう言いながら振り返ろうとしたが、ボクは卵から視線を外すことが出来なかった。
今、卵が動かなかった?
なんていうか、あれ。もしかして……。
卵に入っていたヒビがだんだんと大きくなる。
そしてその大きくなったヒビの奥に、灰色のくちばしが見えた。
くちばしはそのヒビを内側からつつくように、大きく出口を広げていく。
「ヒナが……生まれる……」
「ルルド、そこから出るんだ!」
ランタスの声も、その意味も頭では分かっているのに、ボクはその場から動くことが出来なかった。
逃げろって?
逃げたら意味ないじゃん、リーシャ。
ボクは君を助けに来たんだもん。
それにこれは想定内だもん。
まだ大丈夫さ。
「うわぁぁぁぁ」
驚いたフリをしながら、頭を抱えてしゃがみ込む。
ボクの大きな声とオーバーリアクションに、本来だったら他のことにまで警戒しているであろう親鳥の警戒が、ボクに集中している。
だからそう、きっと気づかないはずだ。
ボクに襲い掛かる親鳥は、その背後からガルドたちに狙われていることに。
「ぎゃぁぁぁぁ」
まるで人の叫び声に似た声を、親鳥が上げた。
視界を上げると、タイミングよくガルドたちが斬りかかってきたところ。
大きく広げたその羽根をガルドの大剣が薙ぎ払い、親鳥が大きく体勢崩す。
怒りに狂ったように声をあげ、ガルドたちの方へ反転した親鳥に、畳みかけるようにランタスが攻撃を加えた。
ボクはその戦闘に巻き込まれないように四つん這いでその場から離れると、やや姿勢を低くしたまま走り出す。
本当はこの場で大人しくしている予定だったけど、さっきのリーシャの様子を見ていたからか、気づいた時には動き出してしまっていた。
少しでも早く、あの鳥の巣から出してあげなきゃ。
転びそうになりながら、それでも必死に走り、やや小高くなった場所にある巣に手をかけた。
そしてボクに向かって手を伸ばすリーシャを掴む。
「ルルド!」
「リーシャ!」
大きなリーシャの声。
さっきまで猫のふりをしていたのに。
「ダメ!」
「え?」
なんでと言いかけたボクの肩に、鋭い爪が食い込む。
「あああ!」
痛みから天を仰いだボクと、親鳥の視線がぶつかる。
羽は折れ、瀕死になりながらも親鳥は卵を守ろうとしていた。
必死なんだ。
自分の子を守るために。
だけどボクも必死なんだ。
親鳥がこの卵を守りたいように、ボクだってリーシャを守りたい。
やっと出来た友だちのリーシャを、餌になんてさせられないんだよ。
「やめて! ルルドを離しなさい‼」
ボクはもがきながらもリーシャを巣から出した。
そしてそっと抱きしめた。
リーシャだけは守らないと。
「ルルド、私はいいから。血が……血が出てる。手を離して」
「大丈夫だよ、リーシャ」
きつくリーシャを抱きしめた。
「ルルドを離しやがれ!」
大きく跳躍したガルドの剣が、親鳥に突き刺さる。
「ぎぎゃあぁ!!」
断末魔のような声を上げた親鳥は、ボクたちを巣に放り込んだ。
「ぐはっ」
その反動でボクは、卵にぶつかる。
どこまでも卵は硬く、そしてやや温かかった。
「ルルド、ルルド」
リーシャのもふもふとした手が、頬を叩く。
一瞬意識を失いかけたものの、ゆっくりとリーシャを見た。
いつもの綺麗な毛並みは汚れてもいなかった。
ああ良かった。
リーシャには怪我はなさそうだ。
誰かのために、こんな風に一生懸命になったのは初めてだなぁ。
でも、うん。
すごくどこかが満たされた気がする。
いいな、こういうの。
「ふふふ。良かった」
「なにが良かったのよ! この馬鹿。馬鹿ルルド!」
その大きく透き通った瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「泣かないでリーシャ。ボクは大丈夫だよ。むしろ君を助けられて良かった」
「大丈夫じゃないじゃない。こんなボロボロで」
「でもボクが助けたかったんだ」
「本当に馬鹿、ね」
リーシャはゆっくり近づくと、ボクの胸に顔を埋めた。
ゆっくりとリーシャを撫でながら、自分の体を確認する。
腕を上げると肩が痛むものの、動かないわけではない。
だけどまぁ、うん……。全体的に体が重いのも確かだった。
筋肉痛? 違うなぁ。
打撲って感じなのかな。
「いててっ」
体を起こそうとすると、背中が軋むような気がした。
「ルルド、無理しないで」
「うん。大丈夫。でもさ、自分から動くって結構大変なことだったんだね」
「当たり前でしょう。ルルドは戦闘要員でもないんだし」
「そうだね」
今までうっかり役でしかなかったから、こういうのは初めてかな。
ボクに攻撃が及べば、基本的に撮り直しになっちゃうから。
そういう面ではサイラスたちはしっかりしてたんだよね。
あの最後以外は、放送事故もなかったわけだし。
って、こんなのんびり考えてる暇なかったんだ。
親鳥はどうなったんだろう。
ガルドたちなら問題ないと思うけど。
やっとの思いで起き上がると、あの卵が視界に入る。
大きな卵には、ボクがぶつかったせいかヒビが入っていた。
「大丈夫か、ルルド!」
「うん、ガルド。ボクもリーシャも……」
そう言いながら振り返ろうとしたが、ボクは卵から視線を外すことが出来なかった。
今、卵が動かなかった?
なんていうか、あれ。もしかして……。
卵に入っていたヒビがだんだんと大きくなる。
そしてその大きくなったヒビの奥に、灰色のくちばしが見えた。
くちばしはそのヒビを内側からつつくように、大きく出口を広げていく。
「ヒナが……生まれる……」
「ルルド、そこから出るんだ!」
ランタスの声も、その意味も頭では分かっているのに、ボクはその場から動くことが出来なかった。
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