24 / 49
024 突き刺さる視線
しおりを挟む
「お二人が優しい方たちで、本当に良かったです」
「ば、な。何だよ、急に」
「思ったことを言っただけですよ」
「まったく君は……」
「んなこと言って、俺たちが本当は悪い奴でルルドのことをこき使うために甘い言葉を言ってたらどうするんだよ」
頬をやや膨らますガルドが、何とも言えない。
女の子がやったらかわいいんだろうけど、なんか違う。
「あははははは。だって、ガルドさん、そういう難しそうなの無理そうだしー」
こらえきれず、ボクは噴き出す。
するとランタスもつられたように笑っていた。
「確かにな。こいつにそんな策略は無理だ」
「ですよねー」
「何だよ、二人して。俺だって考えることぐらいあるんだからな」
「あはははは。それは分かってますが、さすがに計算高くはなさそう」
「間違いない」
「ホント、二人して失礼な奴らだ」
ランタスと二人でひとしきり笑ったあと、ボクは宿へ向かうガルドを見送った。
だんだんと日が落ち、あたりは暗くなっていく。
暖かだった日中とは違い、山から吹く風は冷たい。
「リーシャたち、心配しているだろうな。急がなきゃ」
足早に駆け出せば、どこかから視線を感じる。
「ん?」
振り返ってもその影はない。
つけられてる感じはないけど、あんまりいい視線じゃなかった。
街の入り口には門番さんがいる。
きっとそこまで走れば、追いかけてはこないだろう。
ボクは大きく息を吸うと、そのまま全速力で走りだす。
「どうした坊主、そんなに急いで。もう日が暮れるのに、街の外に出るのは危険だぞ?」
「門番さん!」
優しそうなその顔に、ボクはほっと胸を撫で下ろす。
振り返っても、やはり人影はない。
追いかけてはこなかったみたいだ。
「何かあったか?」
後ろを気にするボクに、やや険しい声に変わる。
門番は槍を構えたまま、ボクの後ろへと回った。
そしてひとしきり気配を確認すると、ボクに視線を合わせる。
「大丈夫かい? 何かあったのなら、ギルドまで送っていくが」
「ううん。もう大丈夫そう」
ふぅ、っと思わず息を漏らす。
急に一人になったから、怖くなっただけかもしれない。
あの街を出てから、一人で行動することなんてなかったからなぁ。
やっぱり誰かといる方が安心する。
「それならいいが、あんまり無茶したらダメだぞ?」
門番はまるで子どもにするように、ボクの頭をぽんぽんとした。
ふふふ。なんか変な感じ。
人じゃないし、犬の耳も生えてるのに、全然普通に接してくれる。
「うん。街の外に仲間がいるんだ。んと、テイマーでね、モンスターを連れてて」
「ああ、それで街の中に入れないのか」
「うん。そうなの」
「一度ギルドで聞いてみるといい。きちんとした手順を踏めば、街の中に入れても良いって許可をもらえるモンスターもいるからな」
「えー。そうなんだ」
「そうさ。ただまぁ、宿は無理だろうが。広場でテントなど張ることも出来るからな」
そういう仕組みがあるのはありがたいな。
あのヒナは、基本的に人を襲う部類のモンスターじゃないって言ってたし。
もしかしたら許可が下りるかもしれない。
そうしたら、リーシャと三人で野宿することもないし。
この病の件が片付いたら、確認してみよう。
「ありがとうございます。すごくいい情報が聞けました」
「いや、いいさ。子ども一人では何かと危ないからな」
「はい」
「仲間が待っているとはいえ、夜の森はとにかく危険だから気を付けるんだぞ」
「はーーーい」
手を振り、ボクは街を出た。
そして匂いを頼りに、森の中を進む。
入口から少し離れた木の上を見上げた。
「おっそーーーーい」
ヒナの背に乗りながら、リーシャたちが急降下してくる。
言葉を交わさずとも、リーシャの言いたいことがわかるのか、的確に動くヒナ。
そんな息ぴったりな二人を見ていると、なんだかボクはほっこりしてしまった。
「ば、な。何だよ、急に」
「思ったことを言っただけですよ」
「まったく君は……」
「んなこと言って、俺たちが本当は悪い奴でルルドのことをこき使うために甘い言葉を言ってたらどうするんだよ」
頬をやや膨らますガルドが、何とも言えない。
女の子がやったらかわいいんだろうけど、なんか違う。
「あははははは。だって、ガルドさん、そういう難しそうなの無理そうだしー」
こらえきれず、ボクは噴き出す。
するとランタスもつられたように笑っていた。
「確かにな。こいつにそんな策略は無理だ」
「ですよねー」
「何だよ、二人して。俺だって考えることぐらいあるんだからな」
「あはははは。それは分かってますが、さすがに計算高くはなさそう」
「間違いない」
「ホント、二人して失礼な奴らだ」
ランタスと二人でひとしきり笑ったあと、ボクは宿へ向かうガルドを見送った。
だんだんと日が落ち、あたりは暗くなっていく。
暖かだった日中とは違い、山から吹く風は冷たい。
「リーシャたち、心配しているだろうな。急がなきゃ」
足早に駆け出せば、どこかから視線を感じる。
「ん?」
振り返ってもその影はない。
つけられてる感じはないけど、あんまりいい視線じゃなかった。
街の入り口には門番さんがいる。
きっとそこまで走れば、追いかけてはこないだろう。
ボクは大きく息を吸うと、そのまま全速力で走りだす。
「どうした坊主、そんなに急いで。もう日が暮れるのに、街の外に出るのは危険だぞ?」
「門番さん!」
優しそうなその顔に、ボクはほっと胸を撫で下ろす。
振り返っても、やはり人影はない。
追いかけてはこなかったみたいだ。
「何かあったか?」
後ろを気にするボクに、やや険しい声に変わる。
門番は槍を構えたまま、ボクの後ろへと回った。
そしてひとしきり気配を確認すると、ボクに視線を合わせる。
「大丈夫かい? 何かあったのなら、ギルドまで送っていくが」
「ううん。もう大丈夫そう」
ふぅ、っと思わず息を漏らす。
急に一人になったから、怖くなっただけかもしれない。
あの街を出てから、一人で行動することなんてなかったからなぁ。
やっぱり誰かといる方が安心する。
「それならいいが、あんまり無茶したらダメだぞ?」
門番はまるで子どもにするように、ボクの頭をぽんぽんとした。
ふふふ。なんか変な感じ。
人じゃないし、犬の耳も生えてるのに、全然普通に接してくれる。
「うん。街の外に仲間がいるんだ。んと、テイマーでね、モンスターを連れてて」
「ああ、それで街の中に入れないのか」
「うん。そうなの」
「一度ギルドで聞いてみるといい。きちんとした手順を踏めば、街の中に入れても良いって許可をもらえるモンスターもいるからな」
「えー。そうなんだ」
「そうさ。ただまぁ、宿は無理だろうが。広場でテントなど張ることも出来るからな」
そういう仕組みがあるのはありがたいな。
あのヒナは、基本的に人を襲う部類のモンスターじゃないって言ってたし。
もしかしたら許可が下りるかもしれない。
そうしたら、リーシャと三人で野宿することもないし。
この病の件が片付いたら、確認してみよう。
「ありがとうございます。すごくいい情報が聞けました」
「いや、いいさ。子ども一人では何かと危ないからな」
「はい」
「仲間が待っているとはいえ、夜の森はとにかく危険だから気を付けるんだぞ」
「はーーーい」
手を振り、ボクは街を出た。
そして匂いを頼りに、森の中を進む。
入口から少し離れた木の上を見上げた。
「おっそーーーーい」
ヒナの背に乗りながら、リーシャたちが急降下してくる。
言葉を交わさずとも、リーシャの言いたいことがわかるのか、的確に動くヒナ。
そんな息ぴったりな二人を見ていると、なんだかボクはほっこりしてしまった。
115
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。
しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。
やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。
一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。
これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!
ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。
森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。
一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。
これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました
黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。
これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる