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033 どこの世界でも共通

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「え? 今の……」

 前に街を出ようと思った時に感じた視線と同じ気がする。
 あの時は、井戸の犯人のものだって思ってたんだけどそうじゃないのかな。

 どうしよう。
 二人を連れているし、一旦ギルドに避難した方がいいかな。

「大丈夫よ、ルルド。そこまで殺気は感じないから」
「そこまでって⁉ 十分ダメだと思うけど?」

 リーシャもこの視線を感じ取っていたんだ。
 さすが元冒険者。

 もしかしなくても、リーシャの方がボクよりもずっと優れてるんだよな。
 にしても、多少であっても殺意があるなら危ないんじゃあ。

 しかしリーシャもぽちも、いつもと何も変わらない様子で歩いている。
 慣れっこになんてなることはないだろうけど、大丈夫かな。

「でもリーシャ」
「ん-?」
「少しでも殺意があったら危ないんじゃないの?」
「そう? だって考えてルルド。例えばよ? 何かの争奪戦をしていたり、食べ物とかがかかっていたら多少の殺気ぐらいない?」
「えー」

 何かの争奪戦って……。
 ボクはぼんやりと頭の中に、バーゲン品に命をかけるおばちゃんたちが浮かんでくる。

 あ、うん。
 ボクは無理だな。
 つぶされちゃう。

「あー、なんか想像ついたかも」
「そう? それくらいの殺気でしかないから、気にすることはないわ」
「……うん」

 だけど、何をどうしたらそんな殺気をボクに向けてくるんだろう。
 別に知り合いがいるわけでもないし、ボクがいいものを持っているわけでもない。

 しかもお金を持ってそうにも見えないだろうし。

「あ! きっとリーシャとぽちが可愛いからだ」
「は⁉ なんでそうなるのよ」
「だってそれしかなくない? 二人を狙っているのかもしれないよ」

 密漁とか捕獲まではされないにしても、ほら、ストーカーとか。
 異世界ストーカーか。
 そういう文化みたいなのはどこも共通かな。

 うれしくないけど。

「どっちにしても、警戒しておいた方がいいね。ぽち、何かあったらすぐにリーシャを乗せて高く飛ぶんだよ?」
「ぴっぴょ!」

 身振り手振りでも、最近はぽちと意思疎通が出来ている気がする。
 モンスターって頭いいんだな。
 成長もすごく早いし。

 気づけば、もふもふとしたグレーの毛はほぼ抜け落ち、親鳥と同じ羽の色になっている。
 目の大きさとかは変わりないけど、ずいぶんシュッと細くなった印象だ。

 しかも背が伸びているし。
 ボクもぽちくらい背が伸びたいよ。

「ルルド、ついたみたいよ?」

 ボーっと歩いていたボクにリーシャが声をかけてきた。

 見上げれば目の前に、一軒の派手な店がある。
 店の外壁はいろんな色のペンキで模様が描かれていた。
 
 だがそれ以上に目を引くのが、軒先にかけられたトカゲだ。
 干物とでもいうのかな。
 干からびてる……。

 これじゃあ、普通の人は入れないと思うんだけど。
 さすが魔法の用品を扱っている店って感じだ。

 中には魔女とかいたりして。

「まだ他にも買い物あるんでしょう? とっとと入るわよ」

 いろんなものが気になって仕方ないボクとは違い、リーシャはぽちに指示を出して先に入ってしまう。

「ええええ、待ってよ、リーシャ」

 いくらなんでも、二人で入ってったらビックリされちゃうってば。
 もー。なんでも早すぎるんだよ。

「いらっしゃ……鳥と猫?」
「すみません、ボクもいます!」

 追いかけてすぐ店に入ると、店員さんと目が合う。

「んと、お店番?」

 思わず声に出してしまうほど、店員さんは幼かった。
 歳はボクと同じくらいだろうか。

 薄茶色のやや長めの髪の毛を耳の下で二つ結びし、薄緑の瞳が可愛らしい女の子。
 きょとんとした顔をすると、さらに幼く見える。

 いきなりこんな三人組が入ってきたら、そりゃあビックリするよね。
 もしかして怖がらせちゃったかな。

「あ、怪しいものじゃなくて。んと、ギルドから話は来てないかな? 魔物に付ける首輪を買いにきたんだけど、あのお母さんとか誰か……」
「あはははは。いや、いいんじゃ。ココはワシの店だから」

 顔に似合わないしゃべり方。
 しかも自分の店って言ったっけ?

「子どもなのに、なんかいろいろとすごいね」
「お主とて、子どもじゃろうがよ」
「いや、まぁ、うん」
「それに言うて、ワシは子どもでもないのじゃ。見た目は、コレだがの」
「えええ」

 なんか……そういう種族さんってことかな。
 いや、ボクも十分きっと若くはないんだけど。

「ワシはこの魔法具屋の店主、ユメリだ」
「ボクはルルド。で、こっちの白猫がリーシャで、この鳥がぽちです」

 ボクは急いで紹介したあと、頭を下げた。
 コメリは物珍しそうにボクたちを眺めたあと、ニコリと笑った。
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