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三木風雅ルート

借り物競争

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『借り物競争へ出場する生徒は指定の位置へ集合
してください。』




 1年生だから最初の方だ。




「位置について。よーい、パンッ!(銃の音)」




 遊びの競技とはいえ点数が入るし、全力で。
リレー並みの全力疾走でお題が書かれた紙を取る皆。




「野球部所属で坊主じゃない人はどこだ!!?」




 野球部の人って坊主が大半。というか坊主じゃない
人っていたっけ?




「化粧ポーチを持ってる女子はいる!?」




 汗をかく体育祭で化粧をしている人なんているのかな?持ってるか持ってないかの微妙な線のお題を出題
してくるな。


定番の【校長の鬘】はまだ出てきていないみたい。
ポイントが少なからず入るため、他の色のチームの人に
貸してと言われても貸さない人がいる。
その場合は諦めるか、頼みまくるかの二択だ。


うんうん。態々他のチームにポイントをあげたくないよね。




「次の人、準備して!」




 お、自分の番だ。




「位置について。よーい、パンッ!(銃の音)」




 クラス対抗リレーに選出されている自分は他の人
よりも速くお題が置かれている場所に着いた。
ピラッと紙を開く。


お題は【校長の鬘】や【イケメン】ではなく、
【生徒会長様】だった。
【校長の鬘】の方がまだマシ!!


生徒会長はゴール付近で風雅先輩と話していた。
ダッシュで近づく。




「あ、楓ちゃん。」


「ん?」


「生徒会長様、着いてきてください!」



 
 お題の物を持ってゴールに向かって来ている生徒が
いたので腕を掴んで引っ張ってゴールした。
ゴールしてから今更ながら後悔が………




「わわわっ、強引に連れてきてしまってすみません!」


「同じチームだ。協力するのは当たり前だろう?
因みにどういうお題だったんだ?」


「せ………


『ゴーール!!6人全員がゴールしました。
では6位の人から順にお題を聞いていきましょう。』




 言おうとしたらアナウンスの人に遮られた。




「貴女は何のお題でしたか?」


「オルゴールです。」


「貴女は何のお題でしたか?」


「長袖のジャージです。」


「暑いのにジャージを持ってきている人がいるんですね。」




 確かに。炎天下ではないとはいえそこそこ気温が高いし、動いているせいで余計に暑く感じる。
ジャージを持ってきている人がいるなんて驚きだ。
余程日焼けをしたくないとか?





「貴女は何のお題でしたか?」


「………彼氏です。」


「それはそれは!」




 リア充で宜しいこった。というか彼氏がいなかったらどうしたんだろ?その場で告白して、OK貰って、付き合ってからゴールしたのかな?




「貴女は何のお題でしたか?」


「花柄の日傘です。」




 普通の公立高校だったら体育祭に日傘を持ってきて
いる人はいないだろうなあ。
お金持ちが多い麗龍学院ならではのお題だ。




「貴女は何のお題でしたか?」


「兄ですわ。」




 兄・姉がいない1年生だっているだろうに。
自分だっていないのだ。お題は運次第。
無いなら無いで仕方がないと諦めるしかない。




「さてさて最後は我らが麗しの生徒会長様を連れて
来た子だ!

貴女は何のお題でしたか?」




 期待した目で見ないでくれ。
誰かがゴクリと喉を鳴らした。




「【生徒会長様】です。」




 落胆する人・歓喜の声をあげる人・ホッと安心する人など様々な人がいた。何の期待をしていたのやら。




「楓ちゃん。」


「あ、風雅先輩。先輩に該当するお題が出なくて
残念でした。」


「はははっ、いきなり透を連れて行くからビックリしたよ。スキナヒトトカジャナクテヨカッタ。」


「え?」


「何でもない。1位でのゴール、おめでとう!
色別対抗リレー、頑張ろうね?」


「はい!」
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