12 / 71
またもや失敗
しおりを挟む
パウル様は一瞬、私の右足を見てから私に向けて問いかけてきた。
「一体どうしたのです?」
ん?あれ?なんかパウル様のセリフ違くない?思っていたセリフが返って来なくて一瞬、キョトンとしてしまった。私のセリフがそもそも違っていたから?あ、もしかして私が高笑いしてないからか?そんな事を考えている間にも、足首辺りがじわじわ痛みを増してくる。ああ、もうなんでもいい。
私は早く終わらせたくて、次の言葉を発した。
「この子が勢い良くぶつかってきたから、注意していただけですわ」
「……」
ちゃんと本の通りのセリフを言った。軌道修正出来たはず。けれど肝心のシシリー嬢は先程から黙り込んだままボケっとしている。気が動転しているのかどうしていいのかわかならないようだ。そりゃあ、本当にケガをさせてしまったのだから動揺もするか。でも困る。これでは本と違う。やっぱり私の最初のセリフが違っていたからだろうか?今から高笑いだけでもしてみる?
『いや、もう面倒くさい』
軽くキレた私は、手でしっしと彼女を去るように促した。
「もういいから帰りなさい。今度、同じ事をしたら許さないから」
私の言葉にビクッとなったシシリー嬢は、そのまま踵を返して元来た道を戻ってしまった。
『おい、あなたは本を返却するために来たんでしょうが。パウル様と仲良く図書室で話をするんでしょうが』
脳内で突っ込んでみたものの、それ以上何かする気にはならなかった。足首がズクズクと熱を持って来ているのがわかる。とにかく何処かに座りたいと思っていると、ふわりと身体が浮いた。
「え?」
見上げると濃紺の瞳と目が合った。
「足をケガしているのでしょう。失礼だとは思いますが、置いて行くわけにはいかないので。暫く大人しくしていてください」
「いや、でも」
断ろうとすると、睨まれてしまう。
「ケガ人は余計な遠慮をせず、その可愛らしいキツネが落ちて零れないように、しっかり抱えていて下さい」
「あ、はい」
有無を言わせぬ雰囲気に、素直に返事をしてしまった。
連れていかれたのは救護室だった。
「先生はいないようですね。探してきますので少し待っていて下さい」
私をベッドに降ろして、探しに出て行こうとするパウル様を慌てて止める。
「あ、わざわざ呼んでいただかなくて大丈夫ですから」
私が言うと、彼の片眉が上がった。
「しかし……足、痛めてますよね」
「ええ、でも治せるので」
「はい?」
訝し気な表情で私を見る彼に思わず笑ってしまう。
「ふふ、そんなに眉間に皺を寄せなくても……」
「あなたがおかしな事を言うので。光属性ではありませんよね」
「ええ、光属性ではありませんよ。でも大丈夫です」
治療をするため靴を脱ぐと、踝から甲にかけて痛みが走った。
「痛っ」
「大丈夫ですか?」
焦ったように不安げな顔になったパウル様。クールなイメージだが、意外と表情豊かな人のようだ。そんな事を思いながら、痛む部分に右手を当て魔力を放出した。白い粒子がサラサラと意思を持ったように、痛む部分を撫でて行く。そして肌に染み込むようにして消えた。
「光魔法……」
呟くように言葉を発したパウル様は、呆けた顔で粒子が消えた辺りを凝視していた。
最後の仕上げとばかりに、クーがペロペロと私の足を舐めてくれた。
「ふふ、クーも手伝ってくれたの?ありがとう」
「キャン」
試しに足首を動かしてみるともう痛みはない。ちゃんと治ったようだ。ベッドの下に落としていた靴を拾おうとすると、いち早く気付いたパウル様が靴を拾ってくれた。
「ありがとうございます」
受け取ろうと手を出すが、空振りに終わってしまう。
「失礼」
彼は私の足をそっと掴み、なんとそのまま靴を履かせた。
「なっ!?」
「素敵な魔法を見せて頂いたお礼です」
驚いた私に、パウル様は微笑みを向ける。
『意外に気障だ』
冷たい印象を持っていたけれど、どうやら違うようだ。
「もうそろそろ午後の授業が始まりますね。よろしければこのまま一緒に行きましょう。Aクラスですよね」
「……はい」
断る理由が浮かばず了承するしかなかった。ベッドから降りようとすると、彼の手に支えられる。
「そう言えば自己紹介をしていませんでした。私はパウル・オスティア―ゼと申します」
「……ミケーリア・ティガバルディです」
自己紹介なんてしたくはなかったのに。しかもそのまま彼にエスコートをされ教室へ向かう事になってしまう。
「同じAクラス同士。せっかく知り合ったのですから、これから仲良くしてくださいね」
パウル様はニッコリと微笑み、握っている手に力を込めた。いつもの冷たい雰囲気が見当たらない。一体どこに置いて来た?
「あはは……お手柔らかに」
なんだか嫌とは言ってはいけない気がする。嫌だと言ったらもの凄く危険な気がするのだ。私は乾いた笑いを浮かべながら返事をするしかなかった。誰か、助けて。
「一体どうしたのです?」
ん?あれ?なんかパウル様のセリフ違くない?思っていたセリフが返って来なくて一瞬、キョトンとしてしまった。私のセリフがそもそも違っていたから?あ、もしかして私が高笑いしてないからか?そんな事を考えている間にも、足首辺りがじわじわ痛みを増してくる。ああ、もうなんでもいい。
私は早く終わらせたくて、次の言葉を発した。
「この子が勢い良くぶつかってきたから、注意していただけですわ」
「……」
ちゃんと本の通りのセリフを言った。軌道修正出来たはず。けれど肝心のシシリー嬢は先程から黙り込んだままボケっとしている。気が動転しているのかどうしていいのかわかならないようだ。そりゃあ、本当にケガをさせてしまったのだから動揺もするか。でも困る。これでは本と違う。やっぱり私の最初のセリフが違っていたからだろうか?今から高笑いだけでもしてみる?
『いや、もう面倒くさい』
軽くキレた私は、手でしっしと彼女を去るように促した。
「もういいから帰りなさい。今度、同じ事をしたら許さないから」
私の言葉にビクッとなったシシリー嬢は、そのまま踵を返して元来た道を戻ってしまった。
『おい、あなたは本を返却するために来たんでしょうが。パウル様と仲良く図書室で話をするんでしょうが』
脳内で突っ込んでみたものの、それ以上何かする気にはならなかった。足首がズクズクと熱を持って来ているのがわかる。とにかく何処かに座りたいと思っていると、ふわりと身体が浮いた。
「え?」
見上げると濃紺の瞳と目が合った。
「足をケガしているのでしょう。失礼だとは思いますが、置いて行くわけにはいかないので。暫く大人しくしていてください」
「いや、でも」
断ろうとすると、睨まれてしまう。
「ケガ人は余計な遠慮をせず、その可愛らしいキツネが落ちて零れないように、しっかり抱えていて下さい」
「あ、はい」
有無を言わせぬ雰囲気に、素直に返事をしてしまった。
連れていかれたのは救護室だった。
「先生はいないようですね。探してきますので少し待っていて下さい」
私をベッドに降ろして、探しに出て行こうとするパウル様を慌てて止める。
「あ、わざわざ呼んでいただかなくて大丈夫ですから」
私が言うと、彼の片眉が上がった。
「しかし……足、痛めてますよね」
「ええ、でも治せるので」
「はい?」
訝し気な表情で私を見る彼に思わず笑ってしまう。
「ふふ、そんなに眉間に皺を寄せなくても……」
「あなたがおかしな事を言うので。光属性ではありませんよね」
「ええ、光属性ではありませんよ。でも大丈夫です」
治療をするため靴を脱ぐと、踝から甲にかけて痛みが走った。
「痛っ」
「大丈夫ですか?」
焦ったように不安げな顔になったパウル様。クールなイメージだが、意外と表情豊かな人のようだ。そんな事を思いながら、痛む部分に右手を当て魔力を放出した。白い粒子がサラサラと意思を持ったように、痛む部分を撫でて行く。そして肌に染み込むようにして消えた。
「光魔法……」
呟くように言葉を発したパウル様は、呆けた顔で粒子が消えた辺りを凝視していた。
最後の仕上げとばかりに、クーがペロペロと私の足を舐めてくれた。
「ふふ、クーも手伝ってくれたの?ありがとう」
「キャン」
試しに足首を動かしてみるともう痛みはない。ちゃんと治ったようだ。ベッドの下に落としていた靴を拾おうとすると、いち早く気付いたパウル様が靴を拾ってくれた。
「ありがとうございます」
受け取ろうと手を出すが、空振りに終わってしまう。
「失礼」
彼は私の足をそっと掴み、なんとそのまま靴を履かせた。
「なっ!?」
「素敵な魔法を見せて頂いたお礼です」
驚いた私に、パウル様は微笑みを向ける。
『意外に気障だ』
冷たい印象を持っていたけれど、どうやら違うようだ。
「もうそろそろ午後の授業が始まりますね。よろしければこのまま一緒に行きましょう。Aクラスですよね」
「……はい」
断る理由が浮かばず了承するしかなかった。ベッドから降りようとすると、彼の手に支えられる。
「そう言えば自己紹介をしていませんでした。私はパウル・オスティア―ゼと申します」
「……ミケーリア・ティガバルディです」
自己紹介なんてしたくはなかったのに。しかもそのまま彼にエスコートをされ教室へ向かう事になってしまう。
「同じAクラス同士。せっかく知り合ったのですから、これから仲良くしてくださいね」
パウル様はニッコリと微笑み、握っている手に力を込めた。いつもの冷たい雰囲気が見当たらない。一体どこに置いて来た?
「あはは……お手柔らかに」
なんだか嫌とは言ってはいけない気がする。嫌だと言ったらもの凄く危険な気がするのだ。私は乾いた笑いを浮かべながら返事をするしかなかった。誰か、助けて。
2
あなたにおすすめの小説
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
本編完結済み。
続きのお話を、掲載中です。
続きのお話も、完結しました。
【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした
Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。
同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。
さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、
婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった……
とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。
それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、
婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく……
※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』
に出てくる主人公の友人の話です。
そちらを読んでいなくても問題ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる