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月夜の散歩
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剣術授業後から、ヴェルデ学院の一学年の令嬢たちの反応がおかしい。私を見るとキャーキャーと騒がしくなるのだ。私をジッと見つめる目が、アルノルド王子やレンゾ様を見る目に似ている。
「一学年の間でされている噂のせいだと思うよ」
視線の正体がわからず首を傾げている私に、そうレンゾ様が言ってきた。
「なんでも【Aクラスには五人のイケメンがいる】って言われているらしいよ」
四人は言わずもがな、アルノルド王子と隣国のレンゾ王子。青竜騎士団のパウル・オスティア―ゼと赤竜騎士団のミアノ・プロスベーラだ。
「最後の一人は誰?」
レンゾ様の答えは……私だった。ミアノ様との一戦でそういう目で見られるようになってしまったらしい。ねえ、皆。ちゃんと見よう。私イケメンじゃなくて美女……ヤバい。自分で美女とか言っている時点で可哀想な子じゃないの。
「はは、普通に歩くだけで騒ぎになるね」
レンゾ様と廊下を歩いているだけで、周囲が湧く。視線が突き刺さる。こんな状況が数日続いた。好意のある視線だから別にいいではないかとアネリに言われたが、こうも常に見られていると気が休まらない。
「レンゾ様は気にならないの?」
「そうだね。今に始まった事ではないからね」
ああ、そうでしたね。あなたはイケメンで王族ですもんね。
「それよりさ、今度は私とも一戦交えて欲しいな」
「レンゾ様と?」
確かに、彼の独特の動きは戦ってみたら面白そうだ。でも、それは今じゃない。
「周りの視線が消えたらね」
「はは、そんな時来るかな?慣れた方が早いと思うけど」
「慣れたくありません」
これ以上負担がかかるのは嫌だ。というか、この短い期間で本当に色々あり過ぎだって。こんなにも色々あるのかと、寮に戻った私は【光の乙女は恋を知る】を確認する事にした。
やはりミアノ様との模擬戦は、完全にオリジナルだ。
「なんだかもう修正出来る気がしないけど……それで、私は次に何をするべきなのかしら?」
次に来る事柄を確認する。
【満月の夜。キツネが外に出て月の光を浴びたいと言い出した。シシリーは夜中になる少し前、こっそり寮を抜け出し高位貴族の寮の方へ向かった。
「あっちに行けば庭園があるから、そこにこの子を連れて行ってあげよう」
侯爵家と公爵家の寮の間に、広々とした庭園がある。キツネは嬉しそうにシシリーの腕から飛び出し、駆けまわった。
「ふふ、良かった。喜んでくれているわ」
すると、奥の茂みが揺れた。ビクリとしたシシリーが何処かに隠れようとした時だった。揺れた茂みの中から金色の髪の男性が、姿を現したのだ。
「君はあの時の……」
金色の髪の男性が、シシリーの元に近づいて来る。咄嗟に逃げようとしたシシリーは「待ってくれ」という声と共に手首を掴まれてしまった。
「何もしない。良かったら一緒に月を見ないか?」】
うん、これは私には関係ありません。面倒なので放っておきましょう。
そう思っていたのに……
今夜は満月という日の夕方。寮の部屋で食事をしていると、クーが膝の上に乗って来た。
『リア』
「ん?どうしたの?」
『あのね、今夜は満月なんだ』
ギックン。
「そ、そうなんだ」
『満月の月は聖獣にとって、とっても気持ちいい魔力を纏っているんだよ』
「へ、へえ」
それ以上は聞きたくないかなぁ、なんて思ってもクーには通じない。
『だからね、僕、月の光を一杯浴びたいの。リア、夜になったらお散歩しよ』
エメラルド色の瞳をウルウルさせて私を見ている。く、一体この攻撃を躱せる人間がいるのだろうか、いや、いないに違いない。
「うん、わかった。お散歩しよ」
寮の前の庭園にさえ行かなければいいのだ。学院に向かう途中にある、並木道なんていいかもしれない。
月が高い位置になる少し前。クーに促されて外に出る。一番高い位置に月が来た時に、最も魔力が降り注ぐらしい。外に出た途端、いつもよりも明るい月が見えた。
「月が明るい」
魔力を纏っていると言われると、そんな感じがする。月は周りの星が見えなくなる程、明るい輝きを放っていた。
『僕、ここがいい』
……庭園じゃん。ダメじゃん。クーが指定した場所に溜息が出る。
「クー、あっちの並木道なんてどう?きっと凄く綺麗だよ」
なんとかここから離れようと、違う場所を提案するもクーはここが気に入ってしまったようだ。ぴょんこぴょんこと、楽しそうに飛び跳ねている姿を見せられては、これ以上何も言えなくなってしまう。
「はあぁ、仕方がない。見つからないように気を付けよう」
月を見ながらクーの方へ足を向けた時。
「何にだ?」
そんな私の呟きを誰かが拾った。
「一学年の間でされている噂のせいだと思うよ」
視線の正体がわからず首を傾げている私に、そうレンゾ様が言ってきた。
「なんでも【Aクラスには五人のイケメンがいる】って言われているらしいよ」
四人は言わずもがな、アルノルド王子と隣国のレンゾ王子。青竜騎士団のパウル・オスティア―ゼと赤竜騎士団のミアノ・プロスベーラだ。
「最後の一人は誰?」
レンゾ様の答えは……私だった。ミアノ様との一戦でそういう目で見られるようになってしまったらしい。ねえ、皆。ちゃんと見よう。私イケメンじゃなくて美女……ヤバい。自分で美女とか言っている時点で可哀想な子じゃないの。
「はは、普通に歩くだけで騒ぎになるね」
レンゾ様と廊下を歩いているだけで、周囲が湧く。視線が突き刺さる。こんな状況が数日続いた。好意のある視線だから別にいいではないかとアネリに言われたが、こうも常に見られていると気が休まらない。
「レンゾ様は気にならないの?」
「そうだね。今に始まった事ではないからね」
ああ、そうでしたね。あなたはイケメンで王族ですもんね。
「それよりさ、今度は私とも一戦交えて欲しいな」
「レンゾ様と?」
確かに、彼の独特の動きは戦ってみたら面白そうだ。でも、それは今じゃない。
「周りの視線が消えたらね」
「はは、そんな時来るかな?慣れた方が早いと思うけど」
「慣れたくありません」
これ以上負担がかかるのは嫌だ。というか、この短い期間で本当に色々あり過ぎだって。こんなにも色々あるのかと、寮に戻った私は【光の乙女は恋を知る】を確認する事にした。
やはりミアノ様との模擬戦は、完全にオリジナルだ。
「なんだかもう修正出来る気がしないけど……それで、私は次に何をするべきなのかしら?」
次に来る事柄を確認する。
【満月の夜。キツネが外に出て月の光を浴びたいと言い出した。シシリーは夜中になる少し前、こっそり寮を抜け出し高位貴族の寮の方へ向かった。
「あっちに行けば庭園があるから、そこにこの子を連れて行ってあげよう」
侯爵家と公爵家の寮の間に、広々とした庭園がある。キツネは嬉しそうにシシリーの腕から飛び出し、駆けまわった。
「ふふ、良かった。喜んでくれているわ」
すると、奥の茂みが揺れた。ビクリとしたシシリーが何処かに隠れようとした時だった。揺れた茂みの中から金色の髪の男性が、姿を現したのだ。
「君はあの時の……」
金色の髪の男性が、シシリーの元に近づいて来る。咄嗟に逃げようとしたシシリーは「待ってくれ」という声と共に手首を掴まれてしまった。
「何もしない。良かったら一緒に月を見ないか?」】
うん、これは私には関係ありません。面倒なので放っておきましょう。
そう思っていたのに……
今夜は満月という日の夕方。寮の部屋で食事をしていると、クーが膝の上に乗って来た。
『リア』
「ん?どうしたの?」
『あのね、今夜は満月なんだ』
ギックン。
「そ、そうなんだ」
『満月の月は聖獣にとって、とっても気持ちいい魔力を纏っているんだよ』
「へ、へえ」
それ以上は聞きたくないかなぁ、なんて思ってもクーには通じない。
『だからね、僕、月の光を一杯浴びたいの。リア、夜になったらお散歩しよ』
エメラルド色の瞳をウルウルさせて私を見ている。く、一体この攻撃を躱せる人間がいるのだろうか、いや、いないに違いない。
「うん、わかった。お散歩しよ」
寮の前の庭園にさえ行かなければいいのだ。学院に向かう途中にある、並木道なんていいかもしれない。
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……庭園じゃん。ダメじゃん。クーが指定した場所に溜息が出る。
「クー、あっちの並木道なんてどう?きっと凄く綺麗だよ」
なんとかここから離れようと、違う場所を提案するもクーはここが気に入ってしまったようだ。ぴょんこぴょんこと、楽しそうに飛び跳ねている姿を見せられては、これ以上何も言えなくなってしまう。
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そんな私の呟きを誰かが拾った。
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