本の通りに悪役をこなしてみようと思います

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勝てない賭け?

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 アルノルド王子は、時折クスクスしながらも話を続けた。
「ところが、話している最中に急にしゃっくりをし出したんだ。周囲のご婦人方から相手の名を聞かれても、しゃっくりが止まらず答える事が出来ない。娘の方に尋ねてみても、同じように急にしゃっくりをし出してしまう。自分たちもなんとか話を続けようとするんだが、今度はゲップが止まらなくなってどうにもならくなっていて」
その時の事を思い出したのだろう。再び声を上げて笑い出してしまうアルノルド王子。あの時のお父様の「大丈夫」の意味が理解出来た。多分、嘘を吐くと話せなくなる。そんな魔法をかけたのだろう。流石お父様だわ。次に帰ったらたくさん誉めてあげよう。そう思いながらアルノルド王子の笑いが落ち着くのを待っていると、王子が私を見た。
「今考えると、あれはティガバルディ公爵の魔法だったのだな。でなければ、あんなに都合よく話が出来なくなるなんて事はない、そうだろう」
ニヤリと笑むアルノルド王子に、私も同じようにニヤリと笑みを返す。
「ええ、その通りだと思います」
そう言ったタイミングで教室に辿り着いた。教室の扉を開こうとした王子の腕をグイッと引く。不意に引っ張られた王子の顔が私のすぐ傍に寄った。驚いた表情の王子の顔が目の前に迫る。
「殿下。この事は他言無用に」
自分で引いたくせに思っていた以上に近くなった距離に、少しだけ緊張しながらもそう言って微笑むと、アルノルド王子が何故かゴクリと唾を飲み込んだ。それから少しはにかんだような笑みを浮かべて私を見た。彼のその笑みに、私の心臓がドキリと大きく鳴った。
「では、私とミケーリア嬢だけの秘密という事だな」
深紅の瞳が真っ直ぐ私を見つめているせいで、今度は私がゴクリと唾を飲み込んだ。だって仕方なくない?そんな綺麗な顔で微笑むなんて……反則過ぎる。

未だドキドキ鳴り続ける心臓を無視して王子の傍を離れ、私は席に座ったのだった。


 寮に戻り、アネリとお茶をしながら今日の出来事を話した。勿論、アルノルド王子から聞いた話は言っていない。
「お嬢様が張り切りすぎているのか、それともシシリー様が鈍臭いのか。どちらも甲乙付け難いですね」
ニヤリと笑うアネリの顔が怖い。
「アネリちゃん、私別に張り切ってないからね。悪役だって意欲満々な訳じゃないよ。やぶさかではないってだけだからね」
「そうですね。今のところ、ひとつも悪役にはなれておりませんけれどね」
ああ、いい笑みだね。怖いよ。
「うっ。だって肝心な所でその通りにはならないのよ。どうしてこうも逆な結果になるのかしら?」
私の言葉にふふふと笑うアネリ。
「お嬢様の死は確定でしょうね」
「うん、アネリちゃん。楽しそうに言わないで」
「死は免れないのでしたら、本など無視してお好きなようになさった方がよろしいのでは?」
「アネリちゃん。だから死は免れないって、そんなに嬉しそうに言う?」
でも、まあ本を無視するっていう選択肢もあるのよね。
「でもねぇ、なんか気になるっていうか、本当に起こるのかなって確認したくなるんだよねぇ」
「まあ、私的には話をお聞きするのが楽しくて仕方がありませんので、このままドンドン行ってしまえと思っています」
「ははは、アネリってば超他人事」
「他人事ですので」
黒い。黒いよ、アネリちゃん。

そう思いながら本をパラパラとめくる。次にあるのはミアノ様。魔術の授業で、シシリー嬢の魔力が暴発してしまう。本来なら机の上に並んだ3冊の本を浮かべて、巻数順に揃えるという単調な魔法だ。ところが大きな蜂が教室に入り込んだ事で、驚いてしまったシシリー嬢の魔力が暴発してしまい本ではなく、自分自身を天井まで浮かべてしまうのだ。そしてそのまま地面に落下するシシリー嬢を、見事にキャッチするのがミアノ様という訳だ。

「まあ、今回こそ私は本当に何も関係ないから。ただ同じ空間にいるだけだし、とうとう本の通りになるその瞬間を見る事が出来るかも」
いつの間にか声に出していたようで、アネリがまたもや黒い笑みを浮かべる。
「お嬢様、本当にそうお思いですか?本の通りになると?私はならない方に賭けます。そうですね、勝ったら週末のお土産選びの主導権を持つという事でどうでしょう?」
「う、わかったわ。受けて立ってやろうじゃない」
売り言葉に買い言葉で賭けをしてしまった。どうしてだろう?勝てる気がしないのは。

うう、お酒のつまみばかり買わされる自分が見える……。
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