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デビュタント
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「綺麗よ、リリー」
お母様が溜息を吐いた。
「我が子ながら本当に。ローザもカメリアも綺麗だったけれど、リリーも負けず劣らずね」
光沢のある白のドレスに銀糸で見事な刺繍が胸元に施されている。そこから下へ蔦が伸びるように刺繍が下りていく。スカートの部分の下半分を覆う百合の花の刺繍。ビジューも至る箇所に付けられ、きっとダンスで踊る度に煌くのだろう。
首元には黒いチョーカー。金で縁どられ、右の部分には大振りのアクアマリンとペリドットが付いていた。
「センスいいわね」
ローズ姉様が着けてくれたチョーカーを一撫でする。
「くそっ」
お父様が悔しそうな顔をする。
「ふふ、まあまあ」
そんなお父様を宥めるお母様。
『デビュタントの祝いに』
それだけ書かれたカードと共に、贈られてきたチョーカーをマジマジと見る。持って来たのはゼルガーナ公爵家の者だった。
「レジナルドめ」
お父様はまだ文句を言っているが、私はとても気に入っている。見事に私の瞳の色と同じ色合いのアクアマリンとペリドット。今日のドレスにも合っていた。
「お会いしたらちゃんとお礼を言わないと」
レジナルドに会った時の事を思い、自然と笑顔になった事に自分では気付かなかった。
「さ、行こうか」
社交界シーズン開幕の幕開けとなるのがこの王城主催の舞踏会。この舞踏会ではデビュタントのお披露目も兼ねている。先に大人たちが会場入りしており、最後にデビュタントの面々が、エスコート役の親族、もしくは婚約者と共に入場するのだ。
公爵家では我がアヴァティーニ家だけだったので、必然的に最後の入場になる。お父様にエスコートされて入場すれば針の筵状態だ。それでも貴族の令嬢として、淑女としての所作は身についている私は、凛として前だけを向いて歩いた。周囲の溜息にお父様はとても満足そうだった。
「リリー」
ローズ姉様が呼んだ場所へそのまま進む。
「見事だったわ。最後を飾るにふさわしい所作だったわよ」
「うふふ、ありがとう。ローズ姉様」
最後に王族が入場する。王の言葉が終わるといよいよ舞踏会スタートだ。
「最後に、まだ確定はしていないが聖女候補を紹介する」
奥からインファーナ司教にエスコートされた令嬢が入場した。ベビーピンクのドレスには、ふんだんにレースが施されて可愛らしかった。二人の後ろにはキャルム・インファーナ様もいた。
「まず紹介しよう。クララ・シモネッタ嬢だ」
王がそう紹介すれば、一歩前に出たシモネッタ嬢がカーテシーで挨拶をした。
「クララ・シモネッタでございます。聖女の名に恥じないように努めてまいりますのでよろしくお願いいたします」
インファーナ司教は満足そうな表情をしたが、後ろのキャルム・インファーナ様は困ったような顔になっている。ま、そうなるのも仕方がない。彼女は聖女として挨拶をしたのだから。
「彼女はあくまでも聖女候補だ。それは肝に銘じておくように」
王は皆に聞こえ過ぎる程大きな声で言った。王族としては聖女の存在を好ましくは思っていない。本物の聖女が登場すると、どうしても教会の力が看過できない程大きくなるからだ。
過去を紐解いてみても、教会の力が増大した時代というのは混とんとする傾向にある。それはそうだろう。政治のセの字も知らない輩が権力を笠に着て好き放題するのだから。治世が荒れるのは必然だ。
最後には結局聖女頼みになるが、聖女が出来る事は限られている。彼女たちの力量にもよるが、良くて浄化、悪くて治癒止まり。世の中は変えられない。それを知っている者たちは、聖女に大した期待は持っていないが、知らない者たちには救いの神のように見えてしまうだろう。所謂悪循環。
それをわかっているのかいないのか。舞台に立ってニコニコしている聖女候補は誰よりも堂々としていた。
お母様が溜息を吐いた。
「我が子ながら本当に。ローザもカメリアも綺麗だったけれど、リリーも負けず劣らずね」
光沢のある白のドレスに銀糸で見事な刺繍が胸元に施されている。そこから下へ蔦が伸びるように刺繍が下りていく。スカートの部分の下半分を覆う百合の花の刺繍。ビジューも至る箇所に付けられ、きっとダンスで踊る度に煌くのだろう。
首元には黒いチョーカー。金で縁どられ、右の部分には大振りのアクアマリンとペリドットが付いていた。
「センスいいわね」
ローズ姉様が着けてくれたチョーカーを一撫でする。
「くそっ」
お父様が悔しそうな顔をする。
「ふふ、まあまあ」
そんなお父様を宥めるお母様。
『デビュタントの祝いに』
それだけ書かれたカードと共に、贈られてきたチョーカーをマジマジと見る。持って来たのはゼルガーナ公爵家の者だった。
「レジナルドめ」
お父様はまだ文句を言っているが、私はとても気に入っている。見事に私の瞳の色と同じ色合いのアクアマリンとペリドット。今日のドレスにも合っていた。
「お会いしたらちゃんとお礼を言わないと」
レジナルドに会った時の事を思い、自然と笑顔になった事に自分では気付かなかった。
「さ、行こうか」
社交界シーズン開幕の幕開けとなるのがこの王城主催の舞踏会。この舞踏会ではデビュタントのお披露目も兼ねている。先に大人たちが会場入りしており、最後にデビュタントの面々が、エスコート役の親族、もしくは婚約者と共に入場するのだ。
公爵家では我がアヴァティーニ家だけだったので、必然的に最後の入場になる。お父様にエスコートされて入場すれば針の筵状態だ。それでも貴族の令嬢として、淑女としての所作は身についている私は、凛として前だけを向いて歩いた。周囲の溜息にお父様はとても満足そうだった。
「リリー」
ローズ姉様が呼んだ場所へそのまま進む。
「見事だったわ。最後を飾るにふさわしい所作だったわよ」
「うふふ、ありがとう。ローズ姉様」
最後に王族が入場する。王の言葉が終わるといよいよ舞踏会スタートだ。
「最後に、まだ確定はしていないが聖女候補を紹介する」
奥からインファーナ司教にエスコートされた令嬢が入場した。ベビーピンクのドレスには、ふんだんにレースが施されて可愛らしかった。二人の後ろにはキャルム・インファーナ様もいた。
「まず紹介しよう。クララ・シモネッタ嬢だ」
王がそう紹介すれば、一歩前に出たシモネッタ嬢がカーテシーで挨拶をした。
「クララ・シモネッタでございます。聖女の名に恥じないように努めてまいりますのでよろしくお願いいたします」
インファーナ司教は満足そうな表情をしたが、後ろのキャルム・インファーナ様は困ったような顔になっている。ま、そうなるのも仕方がない。彼女は聖女として挨拶をしたのだから。
「彼女はあくまでも聖女候補だ。それは肝に銘じておくように」
王は皆に聞こえ過ぎる程大きな声で言った。王族としては聖女の存在を好ましくは思っていない。本物の聖女が登場すると、どうしても教会の力が看過できない程大きくなるからだ。
過去を紐解いてみても、教会の力が増大した時代というのは混とんとする傾向にある。それはそうだろう。政治のセの字も知らない輩が権力を笠に着て好き放題するのだから。治世が荒れるのは必然だ。
最後には結局聖女頼みになるが、聖女が出来る事は限られている。彼女たちの力量にもよるが、良くて浄化、悪くて治癒止まり。世の中は変えられない。それを知っている者たちは、聖女に大した期待は持っていないが、知らない者たちには救いの神のように見えてしまうだろう。所謂悪循環。
それをわかっているのかいないのか。舞台に立ってニコニコしている聖女候補は誰よりも堂々としていた。
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