お姉様の代わりに悪役令嬢にされそうです

Blue

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まだわからない

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 舞踏会が始まった。最初に踊るのは、エスコートをしてくれたお父様。
「リリー、本当に綺麗だ。この中の誰よりも」
「ありがとう、お父様。お母様よりも?とは聞かないであげる」
「それはありがたい」
そんな軽口を言いながら踊っていると、お父様の眉間にしわが寄り出した。

「リリー、次はカーターと踊るのだったな」
「ええ、お義兄様と約束したもの」
「いいか、今からずっと周りは見るなよ。踊り終わったら真っ直ぐカーターの所へ……いや、私がこのまま連れて行く。カーターと踊り終わったらローズと一緒にいるんだ」

とても真剣に言われるので、何か不味い事でもあるのかとチラリと周囲を見る……うん、お父様の言う通りにしよう。

 曲が終わると、まるで待ち構えていたかのようにお義兄様が傍に来た。
「わかっているじゃないか」
「それはもう。可愛い義妹の事ですから」
穏やかに笑うお義兄様が何気に怖いです。

「それにしても、リリーはモテモテだね」
「ハハハ」
乾いた笑いしか出ない。
「ここだけの話さ、誰かいいなと思う人はいるのかい?例えばこれの君とか」
チョーカーを顎で指す。

「え?」
思わず彼を思い浮かべてしまった。
「おや?図星なのかな?」
「……あのね、よくわからないの。ただ、黒色の竜が人になったのかと思うくらい、雰囲気があの竜に似ていてドキドキしたの。それに、家族以外で初めて私の瞳を綺麗だって、宝石みたいだって言ってくれたの」

「そっかあ。まだ好きかはわからないけれど、一番気になる人。かな」
「うん、そうみたい」
「義父上殿には内緒にしておこうね。彼が危ないから」
おどけて言うお義兄様に笑ってしまった。
「ありがとう、お義兄様」
ローズ姉様が、お義兄様を選んだ理由がなんとなくわかる。この人は包容力が半端ない、とても頼れる人だった。

 曲が終わる。
「とりあえずは、彼らとも踊ってみたらどうかな?」
「え?」

「そうよ。まずは人となりを知らなくちゃ。もしかしたら何か共通点が見つかって好きになるかもしれないわよ」
すぐ後ろにローズ姉様がいた。

「義父上殿には後で一緒に怒られよう」
ウィンクしてお義兄様が私の手を離す。
「足が痛くなったらちゃんと相手に言いなさい」
そう言ったローズ姉様とダンスホールの中央へ消えて行った。一人になった途端に、ワラワラと男性が集まって来る。

あっという間に囲まれたその時、背後から声が聞こえた。

「リリー嬢、踊っていただけますか?」
「オスカー殿下」
オスカー殿下の声によって、道が出来たように人々がどく。にこやかに微笑んでこちらに来るオスカー殿下。
「次は私だよ」
少し後ろで手を振っているのはアーチー様だ。


「綺麗だな」
私を見つめながら微笑むオスカー殿下。チョコレート色の瞳が甘い。
「ありがとうございます」
「ネックレスは気に入らなかったか?」
「いえ。でも、お茶会でしか話していない私に、あのネックレスは高価過ぎです」
「そうか……似合うと思ったのに」
「そういう問題ではないですよ」

「……それは?」
チョーカーを顎で指した。
「これは……知人からのお祝いです」
「……どうやらライバルはアーチーではなさそうだな」
「ライバル?」
「君は美しいってわかってる?」
「はい?」
次から次へと来る言葉に、理解が追いつかない。

「流れるような白金の髪も、色味の違うそのオッドアイも、凛とした佇まいも。全て異性を魅了してやまない」
「オッドアイも?」
「そうだよ。君のチャームポイントだろ」
「チャームポイント……」

はああと、大きな溜息を吐くオスカー殿下。
「もしかしてその瞳は嫌いか?」
「嫌いではありませんが、昔、気持ち悪いと言われて……」
あの時の苦い記憶。相手の顔すら覚えていないのに、言われた言葉だけは忘れられない。きっと忘れる事はないだろう。

「それは言った奴がバカなんだ。君のその瞳は綺麗だ」

『宝石のようだ。美しい』
レジナルドに言われた言葉と、オスカー殿下に言われた言葉がリンクする。ブワッと顔が熱くなった。

「可愛い……」
オスカー殿下が呟くように言った。
「リリー、その顔。アーチーには見せないでくれ」
曲が終わった。名残惜しそうに私の手を離さない殿下から、無理矢理引き剥がしたのはグランディ様だった。

「はいはい。オスカーは他の令嬢たちが待っているよ。早く行った、行った」
私と離れた瞬間、花に虫が集まるようにワラワラと令嬢方が集まって、あっという間に殿下は見えなくなった。
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