65 / 71
拘束
しおりを挟む
馬車の中。向かいで横になっているアリアンナの胸元が淡く輝いていた。
『なんだろう?』
不思議に思ったフィガロ王子が、アリアンナの胸元に手を伸ばす。すると、今度は胸元ではなくアリアンナの背中辺りが輝き出す。
そして、その輝きに呼応するように、もの凄い威圧を感じた。
「何事だ!?」
フィガロ王子たちは馬車を停め周囲を警戒し出す。だが、明るくなり出した周囲を見渡しても、怪しげなものは何も見えない。しかし、今度は突然馬が大暴れし出した。馬車の馬も騎士たちを乗せていた馬も、全ての馬が尋常ではない程暴れ出し、乗せている人々を放って逃げ出してしまう。
「何だ!?一体何が起こっている!?」
暴れる馬のせいで馬車が大きく揺れる。御者がこのままでは馬車ごと倒れてしまうと、慌てて手綱をナイフで切った。
「誰か、この状況を説明しろ!」
フィガロ王子が、怒りを露わにしながら揺れがおさまった馬車から降りた。もうここには、一頭の馬も残っていなかった。
「一体何が起こったというんだ?まだこの先長い道のりがあると言うのに……すぐに馬を調達するんだ!」
フィガロ王子の言葉に、二人の男性が走り出そうとした時だった。明るくなって来ていたはずの空が暗くなる。何事かと上を見上げた男たちが、ごくりと息を飲む。フィガロ王子も釣られるように上を見上げ、震える声で呟いた。
「何故……」
真上には何頭もの竜がいた。あれほどの大きさなのに、風圧もなく音もなく、いつの間にかすぐ真上にまで迫って来た事に恐怖を感じる。フィガロ王子の頭上には、朝日を浴びて美しく光り輝く銀の竜がいた。
「ひいっ!」
フィガロ王子は情けない悲鳴を上げてしまう。銀の竜と目が合ったのだ。
「グウォォォ!」
威圧を含んだ咆哮が、その場にいたメアラーガの人間全ての動きを止めた。その隙に竜騎士たちが竜から飛び降り次々と捕縛していく。フィガロ王子も含め全員が、なすすべもないままあっという間に拘束された。
最後に降りて来たジルヴァーノが、フィガロ王子を睨みつける。彼の銀色に光る殺気を帯びた視線は、勝手に王子の身体をガタガタと震わせた。
「ロワ、何かしようとする者がいたら容赦なく殺せ」
王子を睨んだまま、銀の竜が金の瞳を閉じるのを確認すると、ジルヴァーノは馬車の扉を開けた。こんな騒ぎの中、起きる事なく眠っているアリアンナを見つける。
「アンナ!」
ジルヴァーノは彼女を抱き起こし、名を呼ぶが全く起きる気配がない。胸に耳を欹てると、心臓は一定の間隔で正確に動いている。呼吸も安定している。どうやら薬を嗅がされているのだろうと推察出来た。
「良かった……」
ジルヴァーノは、眠っているアリアンナを抱きしめた。
アリアンナが目を覚ますと、見慣れた天井が見えた。
『私……帰って来たの?』
薬を嗅がされ続けた影響なのだろうか。重くなった頭を軽く振り、なんとか起き上がる。
「お嬢様!」
居間の方からやって来たサマンサが、涙を浮かべながらアリアンナを抱きしめた。後からやって来たベリシアも、泣きながら「お医者様を呼んでまいります」と言って部屋を出て行く。
「私……一体、どれくらい眠っていたの?」
未だ覚醒しきってしない様子のアリアンナの頬を、サマンサが優しく撫でた。
「そうですね。眠った状態でお戻りになってから2日ほど経過しましたよ」
「そんなに?」
「はい。あまりにお寝坊さんなので……とても……心配したのですから」
そう言ったサマンサの瞳から、また涙が流れ落ちる。それを見たアリアンナは彼女に抱きついた。
「ごめんね。たくさん心配かけてしまって」
「本当に……ふふ、大きくなっても手のかかるお嬢様なんですから」
背中を撫でながら泣き笑いするサマンサの笑顔を見て、アリアンナも笑った。
それからは、国王と王妃がやって来たり、王太子がやって来たり、ドマニとドメニカがやって来たりと大騒ぎになった。医者にも診てもらい、薬の副作用であと数日は身体が怠い事が続く事と、栄養失調気味なので栄養をしっかりと摂る事が必要だと言われた。それ以外は別段問題はないとの事だった。
「アンナのお陰で、竜に乗れてラッキーだったよ」
そう言ってカラカラと笑っていたのは、見舞いに来たと言ってベッド横のイスに座った第二王子のジューリオだった。
「凄かったよ。銀の竜を筆頭に、竜たちがメアラーガの王城にいる間の威圧感と言ったら。メアラーガの城の人たちが可哀想になっちゃったよ」
『なんだろう?』
不思議に思ったフィガロ王子が、アリアンナの胸元に手を伸ばす。すると、今度は胸元ではなくアリアンナの背中辺りが輝き出す。
そして、その輝きに呼応するように、もの凄い威圧を感じた。
「何事だ!?」
フィガロ王子たちは馬車を停め周囲を警戒し出す。だが、明るくなり出した周囲を見渡しても、怪しげなものは何も見えない。しかし、今度は突然馬が大暴れし出した。馬車の馬も騎士たちを乗せていた馬も、全ての馬が尋常ではない程暴れ出し、乗せている人々を放って逃げ出してしまう。
「何だ!?一体何が起こっている!?」
暴れる馬のせいで馬車が大きく揺れる。御者がこのままでは馬車ごと倒れてしまうと、慌てて手綱をナイフで切った。
「誰か、この状況を説明しろ!」
フィガロ王子が、怒りを露わにしながら揺れがおさまった馬車から降りた。もうここには、一頭の馬も残っていなかった。
「一体何が起こったというんだ?まだこの先長い道のりがあると言うのに……すぐに馬を調達するんだ!」
フィガロ王子の言葉に、二人の男性が走り出そうとした時だった。明るくなって来ていたはずの空が暗くなる。何事かと上を見上げた男たちが、ごくりと息を飲む。フィガロ王子も釣られるように上を見上げ、震える声で呟いた。
「何故……」
真上には何頭もの竜がいた。あれほどの大きさなのに、風圧もなく音もなく、いつの間にかすぐ真上にまで迫って来た事に恐怖を感じる。フィガロ王子の頭上には、朝日を浴びて美しく光り輝く銀の竜がいた。
「ひいっ!」
フィガロ王子は情けない悲鳴を上げてしまう。銀の竜と目が合ったのだ。
「グウォォォ!」
威圧を含んだ咆哮が、その場にいたメアラーガの人間全ての動きを止めた。その隙に竜騎士たちが竜から飛び降り次々と捕縛していく。フィガロ王子も含め全員が、なすすべもないままあっという間に拘束された。
最後に降りて来たジルヴァーノが、フィガロ王子を睨みつける。彼の銀色に光る殺気を帯びた視線は、勝手に王子の身体をガタガタと震わせた。
「ロワ、何かしようとする者がいたら容赦なく殺せ」
王子を睨んだまま、銀の竜が金の瞳を閉じるのを確認すると、ジルヴァーノは馬車の扉を開けた。こんな騒ぎの中、起きる事なく眠っているアリアンナを見つける。
「アンナ!」
ジルヴァーノは彼女を抱き起こし、名を呼ぶが全く起きる気配がない。胸に耳を欹てると、心臓は一定の間隔で正確に動いている。呼吸も安定している。どうやら薬を嗅がされているのだろうと推察出来た。
「良かった……」
ジルヴァーノは、眠っているアリアンナを抱きしめた。
アリアンナが目を覚ますと、見慣れた天井が見えた。
『私……帰って来たの?』
薬を嗅がされ続けた影響なのだろうか。重くなった頭を軽く振り、なんとか起き上がる。
「お嬢様!」
居間の方からやって来たサマンサが、涙を浮かべながらアリアンナを抱きしめた。後からやって来たベリシアも、泣きながら「お医者様を呼んでまいります」と言って部屋を出て行く。
「私……一体、どれくらい眠っていたの?」
未だ覚醒しきってしない様子のアリアンナの頬を、サマンサが優しく撫でた。
「そうですね。眠った状態でお戻りになってから2日ほど経過しましたよ」
「そんなに?」
「はい。あまりにお寝坊さんなので……とても……心配したのですから」
そう言ったサマンサの瞳から、また涙が流れ落ちる。それを見たアリアンナは彼女に抱きついた。
「ごめんね。たくさん心配かけてしまって」
「本当に……ふふ、大きくなっても手のかかるお嬢様なんですから」
背中を撫でながら泣き笑いするサマンサの笑顔を見て、アリアンナも笑った。
それからは、国王と王妃がやって来たり、王太子がやって来たり、ドマニとドメニカがやって来たりと大騒ぎになった。医者にも診てもらい、薬の副作用であと数日は身体が怠い事が続く事と、栄養失調気味なので栄養をしっかりと摂る事が必要だと言われた。それ以外は別段問題はないとの事だった。
「アンナのお陰で、竜に乗れてラッキーだったよ」
そう言ってカラカラと笑っていたのは、見舞いに来たと言ってベッド横のイスに座った第二王子のジューリオだった。
「凄かったよ。銀の竜を筆頭に、竜たちがメアラーガの王城にいる間の威圧感と言ったら。メアラーガの城の人たちが可哀想になっちゃったよ」
47
あなたにおすすめの小説
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
妹と人生を入れ替えました〜皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです〜
鈴宮(すずみや)
恋愛
「俺の妃になって欲しいんだ」
従兄弟として育ってきた憂炎(ゆうえん)からそんなことを打診された名家の令嬢である凛風(りんふぁ)。
実は憂炎は、嫉妬深い皇后の手から逃れるため、後宮から密かに連れ出された現皇帝の実子だった。
自由を愛する凛風にとって、堅苦しい後宮暮らしは到底受け入れられるものではない。けれど憂炎は「妃は凛風に」と頑なで、考えを曲げる様子はなかった。
そんな中、凛風は双子の妹である華凛と入れ替わることを思い付く。華凛はこの提案を快諾し、『凛風』として入内をすることに。
しかし、それから数日後、今度は『華凛(凛風)』に対して、憂炎の補佐として出仕するようお達しが。断りきれず、渋々出仕した華凛(凛風)。すると、憂炎は華凛(凛風)のことを溺愛し、籠妃のように扱い始める。
釈然としない想いを抱えつつ、自分の代わりに入内した華凛の元を訪れる凛風。そこで凛風は、憂炎が入内以降一度も、凛風(華凛)の元に一度も通っていないことを知る。
『だったら最初から『凛風』じゃなくて『華凛』を妃にすれば良かったのに』
憤る凛風に対し、華凛が「三日間だけ元の自分戻りたい」と訴える。妃の任を押し付けた負い目もあって、躊躇いつつも華凛の願いを聞き入れる凛風。しかし、そんな凛風のもとに憂炎が現れて――――。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
【完結】 婚約破棄間近の婚約者が、記憶をなくしました
瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
その日、砂漠の国マレから留学に来ていた第13皇女バステトは、とうとうやらかしてしまった。
婚約者である王子ルークが好意を寄せているという子爵令嬢を、池に突き落とそうとしたのだ。
しかし、池には彼女をかばった王子が落ちることになってしまい、更に王子は、頭に怪我を負ってしまった。
――そして、ケイリッヒ王国の第一王子にして王太子、国民に絶大な人気を誇る、朱金の髪と浅葱色の瞳を持つ美貌の王子ルークは、あろうことか記憶喪失になってしまったのである。(第一部)
ケイリッヒで王子ルークに甘やかされながら平穏な学生生活を送るバステト。
しかし、祖国マレではクーデターが起こり、バステトの周囲には争乱の嵐が吹き荒れようとしていた。
今、為すべき事は何か?バステトは、ルークは、それぞれの想いを胸に、嵐に立ち向かう!(第二部)
全33話+番外編です
小説家になろうで600ブックマーク、総合評価5000ptほどいただいた作品です。
拍子挿絵を描いてくださったのは、ゆゆの様です。 挿絵の拡大は、第8話にあります。
https://www.pixiv.net/users/30628019
https://skima.jp/profile?id=90999
病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜
白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。
たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。
そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…?
傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる