笑い方を忘れた令嬢

Blue

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拘束

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 馬車の中。向かいで横になっているアリアンナの胸元が淡く輝いていた。
『なんだろう?』
不思議に思ったフィガロ王子が、アリアンナの胸元に手を伸ばす。すると、今度は胸元ではなくアリアンナの背中辺りが輝き出す。

そして、その輝きに呼応するように、もの凄い威圧を感じた。
「何事だ!?」
フィガロ王子たちは馬車を停め周囲を警戒し出す。だが、明るくなり出した周囲を見渡しても、怪しげなものは何も見えない。しかし、今度は突然馬が大暴れし出した。馬車の馬も騎士たちを乗せていた馬も、全ての馬が尋常ではない程暴れ出し、乗せている人々を放って逃げ出してしまう。

「何だ!?一体何が起こっている!?」
暴れる馬のせいで馬車が大きく揺れる。御者がこのままでは馬車ごと倒れてしまうと、慌てて手綱をナイフで切った。

「誰か、この状況を説明しろ!」
フィガロ王子が、怒りを露わにしながら揺れがおさまった馬車から降りた。もうここには、一頭の馬も残っていなかった。
「一体何が起こったというんだ?まだこの先長い道のりがあると言うのに……すぐに馬を調達するんだ!」

フィガロ王子の言葉に、二人の男性が走り出そうとした時だった。明るくなって来ていたはずの空が暗くなる。何事かと上を見上げた男たちが、ごくりと息を飲む。フィガロ王子も釣られるように上を見上げ、震える声で呟いた。
「何故……」

真上には何頭もの竜がいた。あれほどの大きさなのに、風圧もなく音もなく、いつの間にかすぐ真上にまで迫って来た事に恐怖を感じる。フィガロ王子の頭上には、朝日を浴びて美しく光り輝く銀の竜がいた。
「ひいっ!」
フィガロ王子は情けない悲鳴を上げてしまう。銀の竜と目が合ったのだ。

「グウォォォ!」
威圧を含んだ咆哮が、その場にいたメアラーガの人間全ての動きを止めた。その隙に竜騎士たちが竜から飛び降り次々と捕縛していく。フィガロ王子も含め全員が、なすすべもないままあっという間に拘束された。

最後に降りて来たジルヴァーノが、フィガロ王子を睨みつける。彼の銀色に光る殺気を帯びた視線は、勝手に王子の身体をガタガタと震わせた。
「ロワ、何かしようとする者がいたら容赦なく殺せ」
王子を睨んだまま、銀の竜が金の瞳を閉じるのを確認すると、ジルヴァーノは馬車の扉を開けた。こんな騒ぎの中、起きる事なく眠っているアリアンナを見つける。

「アンナ!」
ジルヴァーノは彼女を抱き起こし、名を呼ぶが全く起きる気配がない。胸に耳を欹てると、心臓は一定の間隔で正確に動いている。呼吸も安定している。どうやら薬を嗅がされているのだろうと推察出来た。

「良かった……」
ジルヴァーノは、眠っているアリアンナを抱きしめた。


 アリアンナが目を覚ますと、見慣れた天井が見えた。
『私……帰って来たの?』
薬を嗅がされ続けた影響なのだろうか。重くなった頭を軽く振り、なんとか起き上がる。

「お嬢様!」
居間の方からやって来たサマンサが、涙を浮かべながらアリアンナを抱きしめた。後からやって来たベリシアも、泣きながら「お医者様を呼んでまいります」と言って部屋を出て行く。

「私……一体、どれくらい眠っていたの?」
未だ覚醒しきってしない様子のアリアンナの頬を、サマンサが優しく撫でた。
「そうですね。眠った状態でお戻りになってから2日ほど経過しましたよ」
「そんなに?」
「はい。あまりにお寝坊さんなので……とても……心配したのですから」
そう言ったサマンサの瞳から、また涙が流れ落ちる。それを見たアリアンナは彼女に抱きついた。

「ごめんね。たくさん心配かけてしまって」
「本当に……ふふ、大きくなっても手のかかるお嬢様なんですから」
背中を撫でながら泣き笑いするサマンサの笑顔を見て、アリアンナも笑った。

 それからは、国王と王妃がやって来たり、王太子がやって来たり、ドマニとドメニカがやって来たりと大騒ぎになった。医者にも診てもらい、薬の副作用であと数日は身体が怠い事が続く事と、栄養失調気味なので栄養をしっかりと摂る事が必要だと言われた。それ以外は別段問題はないとの事だった。

「アンナのお陰で、竜に乗れてラッキーだったよ」
そう言ってカラカラと笑っていたのは、見舞いに来たと言ってベッド横のイスに座った第二王子のジューリオだった。
「凄かったよ。銀の竜を筆頭に、竜たちがメアラーガの王城にいる間の威圧感と言ったら。メアラーガの城の人たちが可哀想になっちゃったよ」
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