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謝罪
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竜舎を出たアリアンナは、国王の執務室へ向かった。
「お父様、お願いがあります」
執務室に入るや否や、父王に詰め寄るアリアンナ。
「ん?どうしたんだ?」
国王はいつもと雰囲気の異なるアリアンナに、別段驚く様子もなく話を続けるように促した。アリアンナは一度大きく呼吸をして、国王を真っ直ぐに見つめた。
「北の岩山に行かせてください」
アリアンナの言葉に、国王が微笑む。
「何故か聞いても?」
「はい……森の火災の事は聞きました。思ったよりは被害が少なかったという事も……それでも、被害は出ているのですよね。竜たちの大切な住処である岩山のすぐ傍の森が、悲しい状態になっているなんて。もしかしたら竜たちも心を痛めているかもしれない。私が本当に、竜の姫神子であるかはわかりません。でも、力があるのなら……私は竜たちの為に森をなんとかしたい」
真っ直ぐに国王を見つめるアリアンナに、国王が笑った。
「ははは、アンナならそう言うのではないかと思っていたよ」
「え?」
笑われるとは思っていなかったアリアンナの顔が、驚きでキョトンとしてしまう。
「いいよ、行っておいで。近いうちにアリアンナがそう言うだろうと、竜騎士団長から聞いていた。そう話を持ち掛けられたら責任を持って銀の竜と一緒にアンナを守るから行く事を許して欲しいとな」
国王がイスから立ち上がる。
「私は、アンナが竜の姫神子であると確信している。竜を愛し、竜に愛されているんだからな、私の自慢の娘は。だからアンナ、竜たちのために出来る事を見つけておいで」
「お父様……」
国王が優しくアリアンナを抱きしめた。
「岩山には何度か偵察に行っている。数頭の竜たちは、火事のせいで気が立っているようで竜騎士たちも無闇に近寄る事が出来ないと聞いた。銀の竜を連れていればまず大丈夫だとは思うが、もしかしたら襲ってくる個体があるかもしれない。十分気を付けるんだ。森だけではなく、心を痛めた竜たちも癒せるように最善を尽くしておいで」
絶対に止めらると思っていた。危険だから近寄ってはいけないと。なのに、止めるどころか後押ししてくれる。嬉しさで涙を浮かべたアリアンナは、力一杯父王を抱きしめ返した。
「はい、お父様……ありがとう」
翌日。銀の竜の他に三頭の竜を連れて、北の岩山へ向かった。三頭の竜たちには岩山よりも少し手前で待機させる。
「とにかく、竜たちを刺激しない事が最重要課題だ。何かあればサインを送る。それまではここで待機していてくれ」
ジルヴァーノはそう言うと、アリアンナと共に岩山へ向かった。銀の竜は高く飛び、被害のある森を上から見せてくれた。数カ所の黒ずみが見える。あれらが燃えてしまった場所なのだろう。
「どうしますか?岩山へ降りますか?それとも森に先に入りますか?」
ジルヴァーノがアリアンナに問いかける。森の状態は気になる。多分、実際に現場に降りてみないと本当の被害はわからないだろう。それでももっと気なるのは竜たちの様子だ。
「ロワ、竜たちの様子はどう?」
アリアンナが聞くと、銀の竜はジッと下を見つめ大きく首を振った。
「もしかすると、警戒されているのか?」
すると銀の竜は、金色の瞳を閉じる。やはり今回の事で、今まで以上に人間を警戒するようになってしまったようだ。
アリアンナ自身、何頭かの竜がこちらを見上げている気配を感じていた。
「あまりいい感情は向けられていない事はわかります」
完全に敵と認定しているとまでは言えないが、決して歓迎している訳ではない。なるべくなら接触したくないと思っているような気がする。
「どうしますか……」
二人はしばし、無言で考えた。
今までも、竜を捕まえようとやって来た人間はいた。しかし、そういう類の連中は竜とは直接やり合うが、今回のように、周囲に火を放つような事まではしなかったのだ。
「竜にとっては、住処を壊されるかもしれないという恐怖を感じたのかもしれません」
アリアンナが言うとジルヴァーノも賛同する。
「そうですね。となると、やはり竜たちを説得する方から先にした方がいいですね」
ジルヴァーノが銀の竜を促す。
「考えていても仕方がない。ロワ、竜たちと話しがしたい。竜たちの元に降りてくれるか?」
銀の竜は少し考えた後、クルルルと岩山にいる竜たちに向けて鳴いた。すると、すぐに同じような鳴き方で岩山の竜たちが鳴く声が聞こえた。銀の竜は、ゆっくりと岩山へ降り立った。
「警戒されていますね」
銀の竜から降りた二人を、ジッと見つめている竜たち。何かあればすぐにでも襲い掛かって来そうな気配を醸し出している。銀の竜も二人に寄り添うようにして動かない。多分、ここにいる竜たちは銀の竜がいなければ、間違いなく襲って来るだろう。
「私、話してみます」
そんな中、アリアンナが竜たちの方へ数歩近付いた。竜たちの視線がアリアンナに集中する。恐怖という文字が、アリアンナの脳裏を掠める。それでもやはり、竜に対しての罪悪感が上回ったアリアンナは真っ直ぐに竜たちを見据えた。
「ごめんなさい」
そのままアリアンナは竜たちの方を見ながら、頭を下げた。
「私が謝ったくらいで許されるとは思っていないけれど……それでも、本当にごめんなさい。今日は謝罪と森を再生させる事が出来ないか確認したくてやって来たの」
アリアンナの謝罪にジルヴァーノも頭を下げた。銀の竜も首を下げる。
彼女たちをジッと見ていた一頭の竜がアリアンナに近付いて来た。
「お父様、お願いがあります」
執務室に入るや否や、父王に詰め寄るアリアンナ。
「ん?どうしたんだ?」
国王はいつもと雰囲気の異なるアリアンナに、別段驚く様子もなく話を続けるように促した。アリアンナは一度大きく呼吸をして、国王を真っ直ぐに見つめた。
「北の岩山に行かせてください」
アリアンナの言葉に、国王が微笑む。
「何故か聞いても?」
「はい……森の火災の事は聞きました。思ったよりは被害が少なかったという事も……それでも、被害は出ているのですよね。竜たちの大切な住処である岩山のすぐ傍の森が、悲しい状態になっているなんて。もしかしたら竜たちも心を痛めているかもしれない。私が本当に、竜の姫神子であるかはわかりません。でも、力があるのなら……私は竜たちの為に森をなんとかしたい」
真っ直ぐに国王を見つめるアリアンナに、国王が笑った。
「ははは、アンナならそう言うのではないかと思っていたよ」
「え?」
笑われるとは思っていなかったアリアンナの顔が、驚きでキョトンとしてしまう。
「いいよ、行っておいで。近いうちにアリアンナがそう言うだろうと、竜騎士団長から聞いていた。そう話を持ち掛けられたら責任を持って銀の竜と一緒にアンナを守るから行く事を許して欲しいとな」
国王がイスから立ち上がる。
「私は、アンナが竜の姫神子であると確信している。竜を愛し、竜に愛されているんだからな、私の自慢の娘は。だからアンナ、竜たちのために出来る事を見つけておいで」
「お父様……」
国王が優しくアリアンナを抱きしめた。
「岩山には何度か偵察に行っている。数頭の竜たちは、火事のせいで気が立っているようで竜騎士たちも無闇に近寄る事が出来ないと聞いた。銀の竜を連れていればまず大丈夫だとは思うが、もしかしたら襲ってくる個体があるかもしれない。十分気を付けるんだ。森だけではなく、心を痛めた竜たちも癒せるように最善を尽くしておいで」
絶対に止めらると思っていた。危険だから近寄ってはいけないと。なのに、止めるどころか後押ししてくれる。嬉しさで涙を浮かべたアリアンナは、力一杯父王を抱きしめ返した。
「はい、お父様……ありがとう」
翌日。銀の竜の他に三頭の竜を連れて、北の岩山へ向かった。三頭の竜たちには岩山よりも少し手前で待機させる。
「とにかく、竜たちを刺激しない事が最重要課題だ。何かあればサインを送る。それまではここで待機していてくれ」
ジルヴァーノはそう言うと、アリアンナと共に岩山へ向かった。銀の竜は高く飛び、被害のある森を上から見せてくれた。数カ所の黒ずみが見える。あれらが燃えてしまった場所なのだろう。
「どうしますか?岩山へ降りますか?それとも森に先に入りますか?」
ジルヴァーノがアリアンナに問いかける。森の状態は気になる。多分、実際に現場に降りてみないと本当の被害はわからないだろう。それでももっと気なるのは竜たちの様子だ。
「ロワ、竜たちの様子はどう?」
アリアンナが聞くと、銀の竜はジッと下を見つめ大きく首を振った。
「もしかすると、警戒されているのか?」
すると銀の竜は、金色の瞳を閉じる。やはり今回の事で、今まで以上に人間を警戒するようになってしまったようだ。
アリアンナ自身、何頭かの竜がこちらを見上げている気配を感じていた。
「あまりいい感情は向けられていない事はわかります」
完全に敵と認定しているとまでは言えないが、決して歓迎している訳ではない。なるべくなら接触したくないと思っているような気がする。
「どうしますか……」
二人はしばし、無言で考えた。
今までも、竜を捕まえようとやって来た人間はいた。しかし、そういう類の連中は竜とは直接やり合うが、今回のように、周囲に火を放つような事まではしなかったのだ。
「竜にとっては、住処を壊されるかもしれないという恐怖を感じたのかもしれません」
アリアンナが言うとジルヴァーノも賛同する。
「そうですね。となると、やはり竜たちを説得する方から先にした方がいいですね」
ジルヴァーノが銀の竜を促す。
「考えていても仕方がない。ロワ、竜たちと話しがしたい。竜たちの元に降りてくれるか?」
銀の竜は少し考えた後、クルルルと岩山にいる竜たちに向けて鳴いた。すると、すぐに同じような鳴き方で岩山の竜たちが鳴く声が聞こえた。銀の竜は、ゆっくりと岩山へ降り立った。
「警戒されていますね」
銀の竜から降りた二人を、ジッと見つめている竜たち。何かあればすぐにでも襲い掛かって来そうな気配を醸し出している。銀の竜も二人に寄り添うようにして動かない。多分、ここにいる竜たちは銀の竜がいなければ、間違いなく襲って来るだろう。
「私、話してみます」
そんな中、アリアンナが竜たちの方へ数歩近付いた。竜たちの視線がアリアンナに集中する。恐怖という文字が、アリアンナの脳裏を掠める。それでもやはり、竜に対しての罪悪感が上回ったアリアンナは真っ直ぐに竜たちを見据えた。
「ごめんなさい」
そのままアリアンナは竜たちの方を見ながら、頭を下げた。
「私が謝ったくらいで許されるとは思っていないけれど……それでも、本当にごめんなさい。今日は謝罪と森を再生させる事が出来ないか確認したくてやって来たの」
アリアンナの謝罪にジルヴァーノも頭を下げた。銀の竜も首を下げる。
彼女たちをジッと見ていた一頭の竜がアリアンナに近付いて来た。
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