白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第1章 始まり

第2話ー① 辿った道

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「じゃあ先生。さっきの続きを聞かせてよ」

 教室についた途端、真一は俺に言い放った。

「どこから話すべきかな……」

 俺は少し考えてから、生徒たちに語りはじめた。

「俺が能力に目覚めたのは、中学3年生のとき。受験勉強と家族の問題で大きなストレスがたまり、それがきっかけで能力が目覚めた」



 中学3年生の俺は教師になりたいという夢を叶えるために、受験勉強に追われる毎日を過ごしていた。

 試験勉強は辛いものだったが、でもそれは志望校に合格するためには仕方がないことと割り切り、俺は勉学に励んでいた。

 そしてそんな時、母が病で倒れた。

 俺の家は8人家族で、父は大人数の家族を養うためにずっと働き詰めで、ほとんど家には帰ってこない人だった。そのため、長男の俺が病気で倒れた母の代わりに家事をすることになった。

 家族のことはとても大切に思っており、長男の俺がまだ小さい兄妹たちをちゃんと育てなくちゃいけないんだという責任を感じていた。

 そして俺は自分が無理をしているとわかっていたけれど、それでも家事も勉強も手を抜くことができなかった。

 そんな俺は強烈なストレスが溜まっていることに気が付かず、まさかそれが原因で能力に目覚めることになるなんて思いもしなかった。

 定期的な能力検診の日。俺は家の近くの検査場に足を運んでいた。

 いつものように検査を行ったが、今回はいつもと違う結果になった。

「ついに君も目覚めたんだね」

 検査員のおじさんが、PCに映し出される検査結果を見ながら、俺にそう告げた。

 俺は自分の能力が目覚めたことを知らされて背筋が凍る。

 どんな結果だろうか……。C級やB級なら、そんなに生活に支障はない。でももしも今の俺がS級クラスになってしまえば、教師になるという夢も叶わなくなる上に家族はどうなる……? 弟も妹もまだ幼く、母も病気で寝込んだままだ。

 父は相変わらず、家には帰ってこない……。今、俺がいなくなったら、家族は誰が守るんだ……。

 そして俺は恐る恐る、検査員のおじさんにその結果を問う。

「あの、俺の能力って……」

「そうだね。とても珍しい能力みたいだ」

 俺は一瞬、頭の中が真っ白になる。

「え……もしかして、S級ですか……?」

「いやいやいや! 珍しいってだけさ。危険な能力ではないよ。君には自覚はないかもしれないが、君の能力はこれからの社会にとても役に立つ力かもしれないね!」

 そう言って、微笑む検査員のおじさん。

 俺は検査員のおじさんの言葉にほっとした。

「そう、なんですか。あの、それで、僕の能力って……」

「能力の無効化さ。どんな能力者が相手でもその能力を打ち消す力だよ」

「無効化……」

 そして俺の能力は、誰にも危害を加えないC級クラスと診断された。

 C級クラスと診断された俺は、能力が覚醒後も今までと変わらずに生活することができる。

 クラスの決まった俺は、これで余計なことを考えずに夢を追うことができるし、これからも家族のことも守れると安堵していた。

 それから数か月後、俺は厳しい受験戦争を勝ち抜き、無事に志望校への合格が決まった。

 この時の俺は、これから夢を向かって走り出し、その先には明るい未来が待っていると信じて疑わなかった。

 しかしそんな考えは一時の夢に過ぎなかった。

 高校に入学して、しばらくすると俺にはもう一つ能力があることがわかった。

 そして今日は、そのもう一つの能力の検査のために、検査場へ行くことになっていた。

 俺はいつもの検査場に向かい、いつものように検査行った。

 そして検査を終えた俺は、結果を聞くため、診察室に入った。

 診察室に入ると、あの時と同じ検査員のおじさんがいた。

「三谷くん。君には伝えなければならないことがある」

 おじさんは暗い表情で、その残酷な結果を俺に告げた。

「もう一つの能力なんだが……」

 その話を聞いて、俺は絶望した。

 俺は未来を奪われ、家族を守ることができないことを知ってしまったから。

 俺のもう一つの能力は発動していないものの、その能力は国を亡ぼすほどの数値があるという理由で、クラスは国内最強の危険度SS級と告げられた。

「俺が、SS級クラス…」

 これは悪い夢だと俺は自分に言い聞かせながら、検査場を出た。

 それから俺はどうやって家に帰ったのか、覚えていない。

 そして帰宅した俺は、家族に今日聞いた事実を全て話した。

 弟や妹たちは、幼かったため状況を理解してはいなかったが、母はひどく悲しみ、泣き崩れていた。

 その後、帰宅した父にも同様の内容を話し、父もひどく落ち込んでいるようだった。

 俺は家族を守ることができなくなった。家族を裏切ったんだ……。こんなに身近な人間すら、救うことができない、俺はなんてちっぽけな人間なんだ…。

 俺はそんなことを思いつつ、S級クラスが住む保護施設に行くまでの日を過ごした。

 それから数日後、俺はもう一つの能力を発動することなく、保護施設へいくこととなる。



 施設に着いた俺は、誰にも会う事もなく自室に連れていかれた。

 当時の施設も今と同じように強い能力者たちが暮らしており、俺が見る限り、そこにいる子供たちはみんな仲良しそうだった。

 新しく施設に来た俺は例がないSS級だった為、施設の中にいても行動制限があり、自室から出られる時間にも制限があった。

 その為、俺は他の連中と関わりを持てなかった。

「ここでこうやって一人きりで過ごして、俺はみんなに忘れられていくのかな……」

 この時の俺は社会から、自分だけが切り離されているような感覚になっていた。

 そして俺は窓の外を眺めながら、S級クラスの子供たちは楽しそうに遊んでいるのに、自分だけ外に出ることができないこの現状に悶々としていた。

「なんで俺だけ……俺は家族の為に頑張っただけじゃないか。それなのに、なんで……。俺はこんな結末望んでいないのに。」

 そして俺の心は荒んでいく。

 どうせ俺はここから出られない。夢や希望を抱くことは許されないんだと、自分を攻撃し続けた。

 そしてそのあとには、『でももしかしたら……』なんて叶うことのない未来を想像して現実に打ちのめされることの繰り返しだ。

 それを繰り返す度に、俺は檻の中に捕らわれた獣なんだという事実を再認識して、人生に絶望することになる。

 俺はそんな絶望感から大きなストレスを受けているうちに、能力が暴走するエネルギーをため込んでしまっていたようだ。

 ある日の晩、俺の能力は急に暴走した。

「う……身体が暑い……」

 急に全身が燃えるように熱くなり、鏡に映った自分の姿が見えた俺は、全身が野獣のような毛で覆われていることに驚く。

「なんだ、これ……」
 
 そしてそれからの記憶はなかった。

 意識が戻って、あたりを見渡すと使用していた部屋は大破して、施設の半分以上が損壊していた。

「これを俺が……」

 壊れた建物を見て、俺は唖然とする。

「こんなつもりじゃ……」

 そして俺は意識を失い、その場に倒れた。

 これが俺の持つもう一つの能力『獣人化《ビースト》』。

 獣人化して、無意識に物を破壊する生き物になる能力だった。



「そういえば確か僕が施設に来る少し前に、建物の修繕をしていたって聞いたことがあったけど、あれって先生の仕業だったんだね」

「ははは。実はそうなんだよ」

 そして俺は生徒たちに話を続けた。
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