白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第1章 始まり

第2話ー② 辿った道

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 それか それから俺は別の施設に移された。そこは今までいたこの保護施設のような自由な場所ではなくて、能力者の研究をしている施設だった。

 その施設は能力の制御が効かない子供たちを収容して、脳内データを抽出したり、壊れた心の検査をしたりと、能力者たちを実験動物のように扱っているように見えた。

 俺たちのような能力持ちがなぜ生まれるのかという謎はいまだに解明されておらず、そして一度暴走した心は修復されないことがほとんどだったため、制御不能の子供たちは、その研究所で実験材料としてちょうどよかったのだろう。

 もちろん暴走した俺もその対象に選ばれ、しばらくの間その研究所で過ごすことになった。



「暴走した心は修復されないって言うけど、暁先生にはちゃんと心が残っているじゃないか」

 疑問に思った剛は俺に問う。

「そうだな。それには理由があるんだよ」



 俺が研究所に収容され、1か月が経った頃。

 検査場にいた検査員たちが、検査結果を見ながら会話をしていた。

「被検体の調子はどうですか?」

「能力の暴走は先月だったよな。……これ見てみろ。驚くことに心の修復が進んでいる」

「本当ですね……。でも確か能力が暴走して、破壊された心は元には戻らないんじゃ……」

「そうだ。それに暴走後、昏睡状態になってから、目を覚ましたのはこの少年だけなんだよ…。どうやらこの少年は、神様に愛されているようだ」

 そして俺は今まであり得ないとされていた心の修復が完了し、収容されて3か月で感情が戻り、研究所内を自由に歩けるようになった。

「これって無効化能力の影響なんですかね」

「その仮説もあるが、少年が自ら、負の心のエネルギーを正のエネルギーへと昇華した可能性もある」

 俺の心は研究所の研究員がどれだけ仮説を立てても解明されない謎だったらしい。

 しかし俺の心が完全に修復したという事実だけは本物だった。

 それから俺は自分の能力をうまく制御できるようになり、元の施設に戻る選択肢もあったけれど、俺はそれを断った。

 俺はこの研究所に残り、これからの研究のために自らのデータを提供することにしたからだ。

 昔、検査場のおじさんが言っていた、俺の能力は社会のためになるという言葉を思い出して、自分の存在が誰かを救えるものになるならばと喜んで研究に協力をし続けた。

 保護施設にいた時の俺は自分の能力を悲観し、何もかも投げやりだったけど、この時の俺は今の俺にできる精一杯のことをやろうとそう思った。

 急にどうしてそう思ったのか、俺もよく覚えてはいなかったが、昏睡状態から目覚めたあの時から、俺の意識は変わったんだ。



 そして俺は18歳になり、これからの進路をどうするかを所長に聞かれた時のこと。

「暁くんはもうすぐ高校課程の修了時期だね。進路はどうするか、決めたかい?」

 所長のその問いに、俺は少し照れながらも答えた。

「はい。本当は諦めようって思っていたことなんですけど、でもやっぱり諦めたくなくて……俺、教師を目指します。普通の教師になれないかもしれないですけど、俺のように自分の能力で人生が大きく変わってしまって、人生に悩む子供たちの力になれるような教師になりたいんです」

 決意と覚悟を込めて俺は所長の目をまっすぐに見ると、そんな俺に所長は優しい笑みを浮かべてくれていた。

「そうか……。がんばりなさい」

 そう言った所長は俺の肩にポンと手を乗せて、ニコニコと嬉しそうに笑ったのだった。

 ――ここで見つけた新しい夢を今度はもうあきらめない。

 俺は自分にそう誓ったのだった。



 教師になるには大学進学のために勉強はもちろん必要だったが、政府公認の施設から出る必要がある。

 施設を出るためには、能力の消失を確認するか、危険ではない数値まで減少しているかの検査をしなくてはならなかった。

「さすがの俺ももう18歳だし、少しくらいは能力の低下があるかもしれない」

 そんな少しの期待を込めて、定期検査に挑んだが、その結果は俺にとって思わしくないものだった。

「暁くん。検査の結果だが……能力の消失は、見られなかったよ」

「そうですか……」

 そして所長はうつむき、俺に告げた。

「それに能力値の低下も見られなかった。君は二つ目の能力が見つかったあの日から、能力値の変化が全くないみたいでね……」

「全く変化がない……? でも最近、心は安定してきているって所長は言っていましたよね?」

「……ああ。今の君はとても安定している。だが……」

 安定しているのと、能力値が減少するのとでは違うってことなのか……。

 そして俺の頭にある言葉がよぎる。

『お前は今できることを全力でやれ。そうしたら、道は開けるから』

 誰が言った言葉なのかは思い出せなかったけれど、俺はその言葉に元気づけられた。

「……わかりました。志望校の受験は諦めます」

「悪いな……」

 所長は悲しそうな顔で俺を見ている。

「もう! 所長が落ち込まないでくださいよ! 今は能力者に特化したオンライン大学もあるんだし! 夢が途切れたわけじゃないです!」

 そして俺は志望した大学への入学は叶わなかったが、オンライン大学で教師になるための勉強が始まった。

 それから俺は大学の授業を受けつつ、研究に協力をし続ける日々を送っていた。

 そして入学から数か月。気が付くと、同じオンライン大学の奴らがどんどん能力の消失を迎えおり、一般大学へ編入していった。いつまでも能力が消失しない俺はそんな周りの状況に焦り始めた。

 もしかしてこのまま俺だけ、能力がなくならないのでは……。

 そんな不安が頭をよぎることもあった。

 でもそんなことをいくら考えたって仕方がない。俺は俺が今できること、やりたいことをやるんだ。

 そう自分に言い聞かせて、俺は勉学に励んだ。
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