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第10章 未来へ繋ぐ想い
第79話ー⑥ 私の守りたかった場所
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※ 注意 ※
食事中、もしくは食事の直前直後に読まれる際はお気を付けください。
人によっては気分が悪くなる可能性があります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
――如月家にて
「ただいま~」
実来が疲れ果てた声でそう言うと、
「おかえりなさい! 晩御飯できているわよ」
母はいつもの調子で実来にそう言った。
「うん」
「なんだか、元気ないわね?」
そう言って心配そうな顔をする母。
「疲れただけだよ」
「そう? じゃあ、さっさと着替えてきちゃいなさい。そしてお風呂に入ってさっさと寝ること! いいわね?」
「うん。ありがとう、お母さん」
それから実来は部屋に戻り、机に突っ伏す。
「疲れた……もう嫌だな、こんな毎日」
もっと楽しくてキラキラした日々を想像していたのに……全然違うよ、こんなの。でも――
「仕方ない、よね。友達は大事にしないと……ズッ友か」
暇つぶしに付き合わされることは嫌なのに、それを言われると断れなくなる……結局私は怖いんだよ。みんなに嫌われることが――
そして深い溜息をつく実来。
「早く着替えてリビングに行かないとね……」
それから制服を脱ごうと立ち上がり、ふと窓を見つめると――
「いやあああああ!」
実来は悲鳴を上げた。
それから母は実来の部屋にやってくると、
「実来ちゃん、何があった――何、これ……」
窓の外を見て唖然とした。
その窓には無数の小さな虫たちが張り付き、所狭しと蠢いていたのだった。
「お、お母さん、これ、何!? なんでこんなことに!? やだ、気持ち悪い! どっかいってよ!!」
「絶対、窓は開けちゃダメよ」
そう言って実来の肩を抱く母。
「う、うん……」
そしてしばらくすると、その虫たちは一斉に羽音を立てて、どこかへ行ってしまった。
「なんだったの……」
虫がいなくなり、いつも通りの窓をじっと見つめる実来。
そして、
「実来ちゃん。一応、『白雪姫症候群』の検査を受け直しましょう」
母は静かにそう言った。
「え? なんで?? 受けたの2か月前だよ? その時は何ともなかったじゃん!」
「念のためよ。大丈夫、きっと何ともないから」
それから実来は母に言われて、『白雪姫症候群』の検査を受けた。
すると、そこで実来の能力が覚醒していることが判明したのだった。そして、
「おそらく最近覚醒した、と言うわけでもないようですね。もっと前……2,3年くらい前には覚醒していたと思われます」
検査員は検査データを見ながら実来たちにそう告げた。
「え……でも学校の一斉検査では、無能力者だって――!」
「まあ学校側も生徒を転校させたくなくて、わざとそう言う結果を教えるところもあると聞いたことがありますし」
「そんな……」
「それではこちらで転入手続きの方を――」
それから実来は検査員の話を一通り聞き、翌週からS級クラスの施設に行くことが決まったのだった。
* * *
「まさか能力者に覚醒して、それがS級なんてね……せっかく築いてきた友情もこれで水の泡なのかな……」
そしてふと杏子たちのことを思い出す。
「……一緒にいないと何しているかもわからないし、何を言われているのかもわからない」
やっとできた友達、ずっと守ってきた居場所だったのに――
「はあ。今は関係が切れないように、こまめに連絡を取ろう。そしてさっさとここを出て、また……」
木本の顔が頭をよぎる実来。
「また、杏子たちの暇つぶしに付き合うの……?」
それから首を横に振り、
「杏子たちは友達。私達はズッ友。そうだったでしょ。もしあの場所に戻って同じことになっても、私は友達を大事にするんだから」
そう呟いた。
そう。何があってもあの場所は私の居場所。私が守ってきた、これからも守りたい場所なんだから――
「あ、そういえばここって『はちみつとジンジャー』の聖地……うん。最初にライブした屋上は行ってみたいな」
それから実来は屋上に向かったのだった。
食事中、もしくは食事の直前直後に読まれる際はお気を付けください。
人によっては気分が悪くなる可能性があります。
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――如月家にて
「ただいま~」
実来が疲れ果てた声でそう言うと、
「おかえりなさい! 晩御飯できているわよ」
母はいつもの調子で実来にそう言った。
「うん」
「なんだか、元気ないわね?」
そう言って心配そうな顔をする母。
「疲れただけだよ」
「そう? じゃあ、さっさと着替えてきちゃいなさい。そしてお風呂に入ってさっさと寝ること! いいわね?」
「うん。ありがとう、お母さん」
それから実来は部屋に戻り、机に突っ伏す。
「疲れた……もう嫌だな、こんな毎日」
もっと楽しくてキラキラした日々を想像していたのに……全然違うよ、こんなの。でも――
「仕方ない、よね。友達は大事にしないと……ズッ友か」
暇つぶしに付き合わされることは嫌なのに、それを言われると断れなくなる……結局私は怖いんだよ。みんなに嫌われることが――
そして深い溜息をつく実来。
「早く着替えてリビングに行かないとね……」
それから制服を脱ごうと立ち上がり、ふと窓を見つめると――
「いやあああああ!」
実来は悲鳴を上げた。
それから母は実来の部屋にやってくると、
「実来ちゃん、何があった――何、これ……」
窓の外を見て唖然とした。
その窓には無数の小さな虫たちが張り付き、所狭しと蠢いていたのだった。
「お、お母さん、これ、何!? なんでこんなことに!? やだ、気持ち悪い! どっかいってよ!!」
「絶対、窓は開けちゃダメよ」
そう言って実来の肩を抱く母。
「う、うん……」
そしてしばらくすると、その虫たちは一斉に羽音を立てて、どこかへ行ってしまった。
「なんだったの……」
虫がいなくなり、いつも通りの窓をじっと見つめる実来。
そして、
「実来ちゃん。一応、『白雪姫症候群』の検査を受け直しましょう」
母は静かにそう言った。
「え? なんで?? 受けたの2か月前だよ? その時は何ともなかったじゃん!」
「念のためよ。大丈夫、きっと何ともないから」
それから実来は母に言われて、『白雪姫症候群』の検査を受けた。
すると、そこで実来の能力が覚醒していることが判明したのだった。そして、
「おそらく最近覚醒した、と言うわけでもないようですね。もっと前……2,3年くらい前には覚醒していたと思われます」
検査員は検査データを見ながら実来たちにそう告げた。
「え……でも学校の一斉検査では、無能力者だって――!」
「まあ学校側も生徒を転校させたくなくて、わざとそう言う結果を教えるところもあると聞いたことがありますし」
「そんな……」
「それではこちらで転入手続きの方を――」
それから実来は検査員の話を一通り聞き、翌週からS級クラスの施設に行くことが決まったのだった。
* * *
「まさか能力者に覚醒して、それがS級なんてね……せっかく築いてきた友情もこれで水の泡なのかな……」
そしてふと杏子たちのことを思い出す。
「……一緒にいないと何しているかもわからないし、何を言われているのかもわからない」
やっとできた友達、ずっと守ってきた居場所だったのに――
「はあ。今は関係が切れないように、こまめに連絡を取ろう。そしてさっさとここを出て、また……」
木本の顔が頭をよぎる実来。
「また、杏子たちの暇つぶしに付き合うの……?」
それから首を横に振り、
「杏子たちは友達。私達はズッ友。そうだったでしょ。もしあの場所に戻って同じことになっても、私は友達を大事にするんだから」
そう呟いた。
そう。何があってもあの場所は私の居場所。私が守ってきた、これからも守りたい場所なんだから――
「あ、そういえばここって『はちみつとジンジャー』の聖地……うん。最初にライブした屋上は行ってみたいな」
それから実来は屋上に向かったのだった。
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