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#12
しおりを挟むいつも通りの朝がきた
今日は
昼13時から出勤することになっている
バイトまでの時間を使って
ランチを食べに行くことにした
ある人と待ち合わせをして
アパートから
車で30分ほど走らせると
小さな無人駅がある
待ち合わせ時間まで
まだ時間があった
僕は車のシートを倒し
窓から見える青空を見ていた
この無人駅も懐かしい
昔は良くここに来て
電車を見ていた記憶が甦る
踏み切り音と同時に
電車のブレーキ音が聞こえる
ここの駅で降りる人は
あまり見かけない
だが1人だけ
駅の歩道橋から
こっちに向かって来る
人影が見えた
整備されてない
砂利の駐車場
足音がだんだん近づく
車を窓を叩く音がした
叩く方を見て
僕は笑顔になる
そこには笑顔で手を振る
千春が立っていた
今日は千春とランチに行く
たったの3時間くらいだが
千春は喜んで
僕の誘いに乗ってくれた
千春は走って助手席に乗ってきた
笑顔だった顔が
恥ずかしがって赤くなっていた
「おはよ」
僕は笑顔で
千春に言った
千春から挨拶がなかったが
時間がないから早く行こうと
急かされた
僕は千春と
ハンバーグ屋に行った
「まだ・・このお店あったんだね」
ここは千春と最初に外食した店で
あの頃、千春は高校生だった
昼前だったため
人はまだ少なかった
僕らはテーブル席に座り
ハンバーグ屋なので
お互いハンバーグを注文をした
この店は
千春と一緒に食べに来て以来だった
10年ぶりだ
頼んだ品が届いた
見るからに熱そうだが
あきらかに旨そうなのが
分かるハンバーグだ
僕らは
一口目を一緒のタイミングで
口に運ぶ
あのときと同じ味だ
あの当時を思い出しながら
僕は食べていた
引きこもりがちだった
千春を外に連れ出して
外食もロクにしたことなかった千春
頼み方が分からず
食べ終わった皿を厨房に持っていこうとする千春
千春は楽しく嬉しそうに
僕に話している
車の中じゃ
気まずくて顔も見れなかったが
今は千春の笑顔が見れる
心が満たされていく
あのメールを見たはずなのに
千春は昔と変わらない
千春も色々な困難や苦痛があったはずなのに
相談したかっただろう
助けてほしかっただろう
一緒に居たかっただろう
ごめんな
僕は笑顔で千春と話す
心は泣いて千春と話す
僕らは食べ終わり
店の外へと出た
千春を最寄りの駅に送る
駅まで送る時間
僕らは無言だった
さっきまで楽しく話をしていたのに
別れの時間
お互い分かっていた
僕には限られた時間しかない
駅に着く
改札まで送るため
駐車場に車を停めて
二人で歩く
隣で歩く千春は
下を向いている
駅の入り口まで来た
改札まですぐそこだ
何をしたらいいか
何を言えばいいか
僕には分からなかった
「!」
僕の手に
冷たい何かが触れる
僕は何も見ず
何も言わず
冷たい何かを優しく握る
千春が小声で何かを言ったが
僕は聞き取れなかった
だが何を言ったか
分かる気がした
たったの十数メートル
たった何秒
僕らは
伝え合った
(また会おうね)
千春がホームに消えていく
僕は千春が居なくなるまで手を振った
千春も僕が見えなくなるまで
手を振った
千春は行ってしまった
1人になった僕
寂しくはあったが
心が満たされた
駅からバイト先までは近く
あっという間に到着した
休日の昼から出勤するのは
久しぶりで不安だった
現場は悲惨だった
人員が不足しているとはいえ
これまでで一番
酷い現場だった
とにかく片付けるために
指示を出す僕
なかなか進まない作業
終わりが見えない
夜になり
希望の光が
夜から働きに来る
ベテラン詫さんと池さんが合流
現場は一気に片付いた
余裕が出来た僕は
各作業場を見て回った
僕の目の前を必死に走り抜ける君
君の作業場は
全然終わってなかった
僕は無言で
手伝いをする
この時は仕事に集中していて
話さずモクモクと仕事をした
一通り終わらせたところで
君から頭を下げられた
「すみません!ありがとうございました!」
「大丈夫だよ」だけ言い残し
別の作業場へと行った
バイトが終わり
駐車場へと歩く
さすがに昼からのバイトは
疲れる
ヘトヘトだった
すると
後ろから走る足音がする
僕は邪魔になると思い
走り去るであろう方向とは
逆に避けた
するとその足音は
僕の横で止まった
「お疲れ様です!」
手を握られ
飲み物を渡された
今日、手伝ってくれた
お礼らしい
「あ、ありがとう!もらっとくね!」
突然のことで
僕はパニックになっていた
君は笑顔で僕を見ていた
君は僕の手を握っていた
気が付いたのか
パッと手を離して
恥ずかしそうにしたいた
「少し話そうか」
自然と言葉が出た
本当に、何も意識してなかった
何を言っているんだと
後悔していたが
君からは、いい笑顔と
いい返事が返ってきた
僕らは
会社近くの川辺まで歩いた
冷たい水、冷たい風
だが
それを忘れるほど夜空には
星達が煌めいていた
君は川から流れる音を聞いている
深夜0時
会社は山間部にあるため
車も走ることなく
静かで
風でなびく
葉っぱの揺れて擦れる音しかしない
僕らは
色んなことを話した
ホントに色んなこと
時折合う
君との目線
君の目は
もう僕を疑っていなかった
1時間ほど話した僕らは
駐車場に戻り
帰ることにした
すると君から
連絡先を聞いてきた
僕は暇があったら返すから
と答えた
恥ずかしがる顔を
今でも覚えている
勇気がいるものだから
お互い
手を振って帰宅した
いつものように
シャワーを浴び
テーブルのイスに座る
深夜2時を回っていた
僕は君に
「ありがとう」だけ
メールで送り
眠りについた
僕には秘密がある
君には言えない秘密がある。
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