まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

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新しい生活

紅茶

「シャノン嬢…?座らないのですか?」

 殿下と同じテーブルの椅子に座るのに、躊躇していると、笑顔の殿下から声を掛けられる。

「シャノン嬢が座ってくれないと、私はいつまでもこの美味しい紅茶を飲むことが出来ませんね…。」

「…失礼致します。」

 殿下の笑顔に負けたわ…



「……とっても美味しいです。
 あの頃、生徒会の仕事はあまり好きではありませんでしたが、シャノン嬢の美味しい紅茶が頂けるので、それだけを支えに頑張ることが出来ました。
 また貴女の淹れた紅茶を飲むことが出来て、私はとても嬉しく思います。」


 殿下にそんな風に言って頂けるなんて…。

「ありがとうございます。勿体ないお言葉でございますわ。」

 

「ところで…、シャノン嬢。
 あの日のことをずっと謝りたいと思っていました。
 あの日、貴女に無理をさせて私は貴女を傷付けてしまった…。申し訳なかった。」

 急に悲痛な表情で謝罪をする殿下。

「おやめください!謝罪は必要ありませんわ。
 傷付いておりませんし、何があったのかもよく覚えていませんわ。
 ですから、お顔を上げて下さいませ。」

 殿下も気にしていてくれたのね。気不味いからと、気を遣って謝罪までしてくれたのかしら?
 王族なのだから謝罪なんて必要ないのに…。

 この方は本当に謙虚な方だわ。

「シャノン嬢が怒って帰ってしまったのかと、ずっと心配していました。
 嫌われてしまったかと…。」

「怒っておりませんし、嫌ってもいませんわ。ただ、殿下の婚約者の方を思い出して、申し訳ない気持ちにはなりましたが…。
 もう忘れましょう。」

「…忘れる?」

 殿下が真顔でボソッと言った言葉は私は聞き取れなかった。

「え…?」

「いや…、許して頂けるなら嬉しいです。
 これからも学生時代のように、気さくに接してくれたら嬉しいです。
 母もあんな感じですが、どうぞよろしくお願いします。」

「王妃殿下には大変感謝しておりますし、とても尊敬しておりますの。ここで仕事をさせて頂けて、私はとても幸せなのです。
 こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します。」



 王太子殿下はおかわりの紅茶を飲んだ後に、殿下の執務室に戻っていった。


 気不味いかと思っていたけど、ああやって気を遣ってくれたから良かったわ。

 本当にお優しい方だと思う…。

 今日だって、自分の妻である妃殿下の為に、誕生日の希望を言いに来ていたようだし、自分の母親と妻の間に入って、上手く取り持とうとしていたように見えた。

 妃殿下に情夫がいるのは驚いたけど、それを受け入れている王太子殿下は心の広いお方なのね。
 私なら絶対に無理ね…。何年も前の不貞行為ですら許せない心の狭い妻だったもの。

 私はもう結婚はしたくない。たった一度の裏切りで、あんな風に傷つくなら、結婚も恋も無理にはしようとは思わない。

 こうやって仕事をして、自分の力で生きていきたいわ。



 王太子殿下は、時折、王妃殿下の執務室に来ては、私の淹れた紅茶を飲んでいく。

 私の淹れた紅茶が1番美味しいとか、疲れが取れるとか、嬉しい言葉を掛けてくれる。

 そんな優しい殿下に、私は胸がドキドキしているような気がした。

 勘違いしてはいけない。
 私はただ嬉しい言葉を掛けられて、舞い上がっているだけ。


 気を付けないと……



 

 

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