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新しい生活
毒物?
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「…夫人、お礼は大丈夫です。
スカル男爵令嬢は夫人に対してだけでなく、今までやってきたこともあまりにも悪質だと判断されたので、鉱山で強制労働させられることに決まりました。
あの近衛騎士はクビになりましたし、平民に落とされたので、もう会うことはないでしょう。
しかし、そんなことはもういいのです…。貴女がここまで痩せ細ってしまった姿があまりにも痛々しくて……。
助けることが出来ずに申し訳ない。」
殿下が私を悲痛な顔で見ている。
「夫人。殿下と私は、あの日から連絡がとれない君をとにかく心配していたんだ。
君があの後に倒れて寝込み、仕事を休んでいると聞いて、あの女と近衛騎士に何か毒物でも飲まされたのかとも考えて、取り調べの時に自白剤まで使ったのだが、何もしていないと言うし…。
ずっと臥せっていて、体調が良くならないからと、バーネット伯爵が仕事の退職届けを持って来たと聞いて、そこまで具合が悪いのに王宮医の派遣は遠慮していると聞いて、何か不自然だと思っていたんだよ。」
アンブリッジ公爵様まで険しい顔をされている。
私はこの方達に相当心配をされたようだ。
「あの日に助けて頂いただけでなく、そこまで心配をお掛けしておりましたのね。
大変申し訳ありませんでした。」
「アメリア。そんなことは気にしないでちょうだい。
それよりも、貴女に話しておきたいことがあるのよ。」
妃殿下まで、急に真面目な表情になるのが分かった。
「話でしょうか?」
「ええ…。驚かないで欲しいのだけど…、貴女、バーネット伯爵家で毒物を盛られていたのではなくて?」
毒という言葉にサーっと血の気が引いていくのが分かった。
「……毒ですか?」
「正確には、毒と言うよりも他国の医療で使われている睡眠薬に近いような何かの薬物。アマリアを診察した王宮医達も、毒だとはっきりと断言出来ないって言っていたわ。優秀な王宮医達が分からない薬物ということは、この国では流通していないものだと思うの。
私も母国で盛られたことがあるのだけど、どうしようもないくらい体が怠くて、寝込んでしまったことが何度もあってね。
王族の姫として、必ず出席しなくてはならない行事やパーティーの前日くらいにいつも具合が悪くなるのよ。私の場合は、私の評判を悪くしたい正妃様あたりがやっていたのだと思う。
命を落とす程のものではないのでしょうけど、アメリアの場合は、頻繁に盛られたせいで、更に症状が重くなってしまったとか?」
毒物のような物を盛られていたと知り、ショックを受ける私だったが、それよりも、か弱くて可憐なイメージの妃殿下が母国でそんな扱いをされていたことの方が衝撃的だった。
妃殿下は母国で命を狙われていたとは聞いていたけれど、そこまで波瀾万丈に生きてきた方だったなんて。
これくらいのことで落ち込んでいた私は、まだまだ弱い人間だったということなのね。
「エリザベス!夫人を怖がらせないでくれ!」
「あー!はいはい。殿下はアメリアにだけはお優しい殿下ですものね。
でも自分の命が狙われているかもしれないという、危機意識を持つことも大切なのよ!」
か弱そうで、可憐で儚げなイメージの妃殿下だったけど、実はざっくばらんな方だったのね。それも妃殿下の魅力なのでしょうけど。
「殿下、私は怖がっていませんわ。妃殿下は私のために教えて下さっているのですから。
それよりも、妃殿下が母国でそこまでの苦労をなさっていたことの方が衝撃的でした。
妃殿下がご無事で良かったです。…グスっ。」
精神的にも弱っていた私は、涙脆くなってしまったようだ。
「アメリアー!私の為に涙を流してくれるのは、貴女だけよ。
殿下、羨ましいでしょ?…ふふっ。」
「……ちっ!」
え?殿下が舌打ち…?気のせいよね。
「殿下も妃殿下もいい加減にしてくれ。
それよりも、夫人はしばらくは王宮で治療ということにして、外部とは接触しない方がいいだろうな。バーネット伯爵家の誰が犯人かはまだハッキリしないから、伯爵家にも戻らない方がいいだろう。」
「犯人は伯爵よ。」
妃殿下はハッキリと犯人がバーネット様だと言い切った。
「「え?」」
「事情を知っているから、王宮医には診察されたくなかったのでしょう?」
「エリザベス。伯爵はどう見ても夫人を愛しているようにしか見えないし、影を使って伯爵の身辺調査までしたけど、別に女がいる様子はなかった。あの男の目を見ても夫人一筋って感じだったよ。」
「愛しているから、自分の側から離れないように薬まで盛ってアメリアを邸に閉じ込めておきたかったのよ。
あの男は絶対にヤンデレ……」
「「やんでれ?」」
「あっ…!何でもないわ。
伯爵はアメリアが好きすぎて、どんな手を使ってでも側にいて欲しいと考えていそうだなぁって、私は思っただけよ。
アメリアは、しばらくはここで療養しなさいね。すぐに元気になれるはずよ。」
あの男がそんなことを…?
怒りはあるけれど、今は体調を回復させることを優先すべきね。
スカル男爵令嬢は夫人に対してだけでなく、今までやってきたこともあまりにも悪質だと判断されたので、鉱山で強制労働させられることに決まりました。
あの近衛騎士はクビになりましたし、平民に落とされたので、もう会うことはないでしょう。
しかし、そんなことはもういいのです…。貴女がここまで痩せ細ってしまった姿があまりにも痛々しくて……。
助けることが出来ずに申し訳ない。」
殿下が私を悲痛な顔で見ている。
「夫人。殿下と私は、あの日から連絡がとれない君をとにかく心配していたんだ。
君があの後に倒れて寝込み、仕事を休んでいると聞いて、あの女と近衛騎士に何か毒物でも飲まされたのかとも考えて、取り調べの時に自白剤まで使ったのだが、何もしていないと言うし…。
ずっと臥せっていて、体調が良くならないからと、バーネット伯爵が仕事の退職届けを持って来たと聞いて、そこまで具合が悪いのに王宮医の派遣は遠慮していると聞いて、何か不自然だと思っていたんだよ。」
アンブリッジ公爵様まで険しい顔をされている。
私はこの方達に相当心配をされたようだ。
「あの日に助けて頂いただけでなく、そこまで心配をお掛けしておりましたのね。
大変申し訳ありませんでした。」
「アメリア。そんなことは気にしないでちょうだい。
それよりも、貴女に話しておきたいことがあるのよ。」
妃殿下まで、急に真面目な表情になるのが分かった。
「話でしょうか?」
「ええ…。驚かないで欲しいのだけど…、貴女、バーネット伯爵家で毒物を盛られていたのではなくて?」
毒という言葉にサーっと血の気が引いていくのが分かった。
「……毒ですか?」
「正確には、毒と言うよりも他国の医療で使われている睡眠薬に近いような何かの薬物。アマリアを診察した王宮医達も、毒だとはっきりと断言出来ないって言っていたわ。優秀な王宮医達が分からない薬物ということは、この国では流通していないものだと思うの。
私も母国で盛られたことがあるのだけど、どうしようもないくらい体が怠くて、寝込んでしまったことが何度もあってね。
王族の姫として、必ず出席しなくてはならない行事やパーティーの前日くらいにいつも具合が悪くなるのよ。私の場合は、私の評判を悪くしたい正妃様あたりがやっていたのだと思う。
命を落とす程のものではないのでしょうけど、アメリアの場合は、頻繁に盛られたせいで、更に症状が重くなってしまったとか?」
毒物のような物を盛られていたと知り、ショックを受ける私だったが、それよりも、か弱くて可憐なイメージの妃殿下が母国でそんな扱いをされていたことの方が衝撃的だった。
妃殿下は母国で命を狙われていたとは聞いていたけれど、そこまで波瀾万丈に生きてきた方だったなんて。
これくらいのことで落ち込んでいた私は、まだまだ弱い人間だったということなのね。
「エリザベス!夫人を怖がらせないでくれ!」
「あー!はいはい。殿下はアメリアにだけはお優しい殿下ですものね。
でも自分の命が狙われているかもしれないという、危機意識を持つことも大切なのよ!」
か弱そうで、可憐で儚げなイメージの妃殿下だったけど、実はざっくばらんな方だったのね。それも妃殿下の魅力なのでしょうけど。
「殿下、私は怖がっていませんわ。妃殿下は私のために教えて下さっているのですから。
それよりも、妃殿下が母国でそこまでの苦労をなさっていたことの方が衝撃的でした。
妃殿下がご無事で良かったです。…グスっ。」
精神的にも弱っていた私は、涙脆くなってしまったようだ。
「アメリアー!私の為に涙を流してくれるのは、貴女だけよ。
殿下、羨ましいでしょ?…ふふっ。」
「……ちっ!」
え?殿下が舌打ち…?気のせいよね。
「殿下も妃殿下もいい加減にしてくれ。
それよりも、夫人はしばらくは王宮で治療ということにして、外部とは接触しない方がいいだろうな。バーネット伯爵家の誰が犯人かはまだハッキリしないから、伯爵家にも戻らない方がいいだろう。」
「犯人は伯爵よ。」
妃殿下はハッキリと犯人がバーネット様だと言い切った。
「「え?」」
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「エリザベス。伯爵はどう見ても夫人を愛しているようにしか見えないし、影を使って伯爵の身辺調査までしたけど、別に女がいる様子はなかった。あの男の目を見ても夫人一筋って感じだったよ。」
「愛しているから、自分の側から離れないように薬まで盛ってアメリアを邸に閉じ込めておきたかったのよ。
あの男は絶対にヤンデレ……」
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「あっ…!何でもないわ。
伯爵はアメリアが好きすぎて、どんな手を使ってでも側にいて欲しいと考えていそうだなぁって、私は思っただけよ。
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