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新しい生活
閑話 王太子妃 エリザベス
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私は前世の記憶を持っている。
それは日本という国で、社畜と呼ばれる女性だった記憶だ。社畜と呼ばれていても、仕事は好きだったから忙しくても何の不満もなかった。
アラサー独身の私の趣味は乙女ゲーム。しかし、多忙な仕事と大好きな乙女ゲームのし過ぎで、寝不足の日々を送っていた私は、ある日突然、部屋で倒れてしまった。
そして…、目覚めた私は、どこの高級ホテルだよ?って言いたくなるようなゴージャスな部屋のベッドに寝かせられていた。
「王女殿下!誰か、王女殿下がお目覚めになったことを、陛下と側妃様にお知らせして!」
メイド服を着ている人が私を見て叫んでいる。
何なのよ…。そんな時、扉が勢いよく開いたのが分かった。
「エリー、目覚めて良かった。
お父様は、エリーに何かあったら死ぬところだった。」
目覚めた私の手を握り、涙を流すイケメンがいた。
お父様って言ってるけど、このイケメン見たことがあるような……。
あっ!私が好きだった乙女ゲームの〝僕の愛を君に〟通称〝僕愛〟の攻略対象者の…
「アルベルト殿下!」
「エリー?なぜ父を名前で呼ぶんだい?」
えっ?アルベルト殿下が私のお父さん?
いやいや…、私のお父さんはこんなキラキライケメンじゃなくて、バーコード頭の哀愁漂う親父なんだけど!
その時、また違う人物が部屋に入って来たようだ。
「エリー!!助かって良かったわ…。
お母様にエリーを抱きしめさせてちょうだい。」
部屋に入ってきた愛らしい美女を見てまた驚く私。
だって、その人は〝僕愛〟のヒロインのマリアだったからだ。
「えっ、ヒロインが私のお母さん?」
「エリー…?ヒロインって?」
驚きで口をパクパクさせる私の所に、また別の人物がやって来た。
「失礼するわ。王女殿下が目覚められたと聞きましたので、この私がわざわざ見舞いに来ましたわよ。」
「イザベラ!ここに何しに来た?
早く出て行け!」
アルベルト殿下が睨みつけている貫禄のある美女は…
「あ、悪役令嬢……」
「はあ?見舞いに来た私を見て悪役令嬢ですって?」
ひぃー、怒らせた!実物の悪役令嬢、怖い…
「せ、正妃様。娘が大変な無礼を……」
「マリア、謝罪はいい。どうせこの女はエリーが生きているのを確認しに来ただけで、見舞いに来たわけではないのだから。
おい!イザベラをすぐに追い出せ!」
悪役令嬢は騎士らしき人達に連れられていった。
「…エリー、可哀想に。あの女に命を狙われて怖い思いをしたから、今はパニックを起こしているんだろう。
守れなくて悪かった。これからはこの父が、エリーを守るからな。」
えっ?私よく分からないけど、さっきの悪役令嬢に命を狙われているの…?
私はその後、お医者に診てもらい、記憶喪失だと診断されてしまった。
メイド達が教えてくれたのだが、私は悪役令嬢の息子、異母兄に背中を押されて池に落ちたらしい。
私を溺愛する国王であるお父様は、その事に激怒して異母兄を幽閉してしまったようだ。ちなみに、異母兄は幽閉されている奴の他に後1人いると聞いた。
そして私は今、色々と考えを巡らせている。
ここは、乙女ゲームの世界で、私は転生だか憑依でもしたらしい。
父は乙女ゲームの攻略対象者のアルベルト(今は国王)で、母はヒロインのマリア(元男爵令嬢で今は側妃)。
そして私の命を狙っている悪役令嬢のイザベラ(元公爵令嬢で今は正妃)と、その息子×2がいる。
乙女ゲームのその後の世界ってやつね。
私のお母様は、可愛くて優しい人だから、アルベルトに気に入られたのだろうけど、そこまで優秀ではないだろうし、男爵令嬢だから側妃にしかなれなかったのだろうなぁ。
この国では、正妃との間に子供が2人出来たら、側妃を迎えていいとか決まりがあったのかも知れない。お母様と結婚したかったお父様は、我慢して悪役令嬢と子作りをしたのだろう。
お父様の悪役令嬢を見る目は、憎悪しか感じなかったからね。
私、まだ10歳なのに、あの悪役令嬢に命を狙われているの?
イザベラって、階段や噴水に突き落としたり、取り巻きを使って虐めたり、毒を盛ったりとか、悪役令嬢の手本のような人だったよね?
イザベラの実家の公爵家の力も凄く強いから、多少悪いことをしても、権力で簡単に揉み消す家門だったと思うし、悪事を働くイザベラが断罪を回避して、正妃になることが出来たなんて、何が起こったんだろう?
もしかして、イザベラも転生者だったりして…?
まさかね。
ああ…、私の人生詰んだわ。
この先どうやって生きていくのかを考えることが、私の毎日の日課になるのであった。
それは日本という国で、社畜と呼ばれる女性だった記憶だ。社畜と呼ばれていても、仕事は好きだったから忙しくても何の不満もなかった。
アラサー独身の私の趣味は乙女ゲーム。しかし、多忙な仕事と大好きな乙女ゲームのし過ぎで、寝不足の日々を送っていた私は、ある日突然、部屋で倒れてしまった。
そして…、目覚めた私は、どこの高級ホテルだよ?って言いたくなるようなゴージャスな部屋のベッドに寝かせられていた。
「王女殿下!誰か、王女殿下がお目覚めになったことを、陛下と側妃様にお知らせして!」
メイド服を着ている人が私を見て叫んでいる。
何なのよ…。そんな時、扉が勢いよく開いたのが分かった。
「エリー、目覚めて良かった。
お父様は、エリーに何かあったら死ぬところだった。」
目覚めた私の手を握り、涙を流すイケメンがいた。
お父様って言ってるけど、このイケメン見たことがあるような……。
あっ!私が好きだった乙女ゲームの〝僕の愛を君に〟通称〝僕愛〟の攻略対象者の…
「アルベルト殿下!」
「エリー?なぜ父を名前で呼ぶんだい?」
えっ?アルベルト殿下が私のお父さん?
いやいや…、私のお父さんはこんなキラキライケメンじゃなくて、バーコード頭の哀愁漂う親父なんだけど!
その時、また違う人物が部屋に入って来たようだ。
「エリー!!助かって良かったわ…。
お母様にエリーを抱きしめさせてちょうだい。」
部屋に入ってきた愛らしい美女を見てまた驚く私。
だって、その人は〝僕愛〟のヒロインのマリアだったからだ。
「えっ、ヒロインが私のお母さん?」
「エリー…?ヒロインって?」
驚きで口をパクパクさせる私の所に、また別の人物がやって来た。
「失礼するわ。王女殿下が目覚められたと聞きましたので、この私がわざわざ見舞いに来ましたわよ。」
「イザベラ!ここに何しに来た?
早く出て行け!」
アルベルト殿下が睨みつけている貫禄のある美女は…
「あ、悪役令嬢……」
「はあ?見舞いに来た私を見て悪役令嬢ですって?」
ひぃー、怒らせた!実物の悪役令嬢、怖い…
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「マリア、謝罪はいい。どうせこの女はエリーが生きているのを確認しに来ただけで、見舞いに来たわけではないのだから。
おい!イザベラをすぐに追い出せ!」
悪役令嬢は騎士らしき人達に連れられていった。
「…エリー、可哀想に。あの女に命を狙われて怖い思いをしたから、今はパニックを起こしているんだろう。
守れなくて悪かった。これからはこの父が、エリーを守るからな。」
えっ?私よく分からないけど、さっきの悪役令嬢に命を狙われているの…?
私はその後、お医者に診てもらい、記憶喪失だと診断されてしまった。
メイド達が教えてくれたのだが、私は悪役令嬢の息子、異母兄に背中を押されて池に落ちたらしい。
私を溺愛する国王であるお父様は、その事に激怒して異母兄を幽閉してしまったようだ。ちなみに、異母兄は幽閉されている奴の他に後1人いると聞いた。
そして私は今、色々と考えを巡らせている。
ここは、乙女ゲームの世界で、私は転生だか憑依でもしたらしい。
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そして私の命を狙っている悪役令嬢のイザベラ(元公爵令嬢で今は正妃)と、その息子×2がいる。
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