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新しい生活
閑話 王太子
王妃である母の側近になった彼女は、すぐに王宮内で噂になっていたようだ。王妃の側近という仕事は、女性の仕事の中で最も社会的地位の高い仕事なので、若くて有望な彼女に取り入ってやろうという者が多いらしい。
更に、未亡人とはいえ、まだ若くて美しい彼女を狙う者も多いらしく、昼休み中などに付き纏う者もいるようだ。
彼女を直接守れない私は、影に見張らせて、あまりにもひどいと判断した者を、裏から手を回して地方に転勤させるなどしていた。
私自身は、母に用事がある振りをして執務室に向かい、何とか彼女と会話を交わすことが出来る程度…。
「殿下!いつになったら、愛しい人に想いを伝えるのです?早くしないと、その辺のつまらない男に取られてしまいますわよ!」
エリザベスはハッキリした性格だ。
「もしかしたら私は、彼女に嫌われてしまったかもしれない。すぐに関係改善するのは難しいから、少しずつ距離を縮めたいと思っている。」
「ハァー。いつもはあんなに冷静で、仕事にも部下にも厳しい殿下も、好きな人には弱いのですね。」
「弱いのではなく、大切な人だから慎重に進めたいだけだ!」
「あー、はいはい。怒らないで下さい。私は殿下の恋を応援してますからね。」
エリザベスは、私のいない所で勝手に彼女に接触してお茶会をしていた。
私だって彼女と一緒の時間を過ごしたいのに!
「殿下。私が殿下をお茶会に誘わなかったからと、そんなに怒らないで下さいまし。
私がお茶会をするなら、殿下も同席することは出来たかも知れませんが、私は女同士で話がしたかったのですわ。
殿下の愛する人は、側妃を狙っている女狐達とは違って、穏やかで素敵な令嬢でしたわね。あの方なら、私は仲良く出来ると思いましたわ。
ついでに、私達夫婦の事情を話しておいたので、殿下があの方に想いをお伝えしても、不誠実な男だとは思われないかと。
ですから…、早く想いを伝えてくるのです!」
「エリザベス…。君が私のことを心配してくれて、そこまで動いてくれたことに感謝する。
だが、今後は2人きりでのお茶会は認めないぞ!」
「うわー…。女の私にまで嫉妬ですか?
嫉妬する暇があるなら……」
「分かった!彼女に接触する機会を作って、気持ちを伝えるよ。」
私は彼女に想いを伝えるが、彼女からは身分のことや、未亡人であることを気にして断られてしまう。
でも、そんなことは予想していた。だから私は、まずは恋人になって欲しいと伝えて、断れない状況にした。
その後、昼休みに偶然を装い、彼女と一緒の時間を過ごすようにした。一緒の時間を過ごせば過ごすほど、彼女を好きになっていく。彼女の方も少なくても私を嫌ってはないと思う。このまま、私を好きになってくれたらと思っていたら、邪魔をする者が現れた。
それはワイラー侯爵とその娘の令嬢だ。
前から私の側妃を狙っていたのは知っていたが、ワイラー侯爵は私が彼女に会いに行くのを知っているかのように、色々邪魔をし、令嬢は彼女に絡んで、未亡人の貴女は殿下には相応しくないとか、近付くのは許さないとか暴言を吐いていたらしい。
彼女を見守るためにつけていた影からその報告を受けた私は、怒りで震え、暗殺者をワイラー侯爵家に送ろうかと考えてしまったほどだった。
あの女と侯爵は放っておくと絶対に危険だ。
エリザベスもワイラー侯爵令嬢が大嫌いらしく、2人で相談して、社交界から穏便に消えてもらうことにした。
私達を邪魔するものはいないだろうという時に、その知らせは届く。
「殿下、ボヤボヤしていたから、アメリアの旦那様が戻ってきてしまったではないですか!
だから、さっさと自分のモノにしてしまえと言ったのに…。既成事実でも作ってしまえば良かったのですわ。」
「エリザベス。なんて事を言うのだ?そんなことを大切な人に出来るわけがないだろう!」
夫であったバーネット卿は記憶がないから元には戻らないと聞いていたが、すぐに記憶は戻ったようで、彼女と元の夫婦に戻るために、教会に働きかけているという。
彼女は亡くなった夫はただの政略結婚で愛はなかったと言っていたが…、分からないな。2人は遠くから眺めた感じは理想の夫婦のように見えていたし、誰もが素敵な夫婦だと認めていた。
バーネット卿は、頻繁に彼女との面会を求めて会いに来ているようだし、今後の2人の関係がどうなるかは予想できない。でも私は、彼女を諦められなかった。
「夫人は面会を断ったりして、バーネット卿を避けているようです。拒絶してますね。」
影からは定期的に報告を聞くようにはしていた。
ある日の影の報告に胸が痛む。
「最近夫人は、昼休みにバーネット卿と一緒にランチをしているようです。」
「は?ランチだって?」
「はい。この前、スカル男爵令嬢が夫人に絡んで意味深なことを言っていたようなので、もしかしたら、バーネット卿とスカル男爵令嬢の関係を疑っているのかもしれません。」
スカル男爵令嬢…。一般職として王宮で働いているが、異性関係にだらしなく、次に何か問題を起こしたらクビにするとまで言われている阿婆擦れだ。
そして…
「殿下、スカル男爵令嬢が夫人を寮に呼び出していました。
バーネット卿との関係が知りたいなら来るようにと、夫人を挑発していました。」
「分かった…。あの阿婆擦れは危険だから、引き続き夫人の護衛を頼む。」
「畏まりました。」
周りには分からないように、こっそり影に護衛をさせるつもりでいたが、その日の夕方、悩んで涙を流す彼女をアンブリッジ公爵が見つけてしまい、公爵が私に護衛を貸して欲しいと要請してきたことから、私も彼女の助っ人の1人として一緒に行くことになった。
更に、未亡人とはいえ、まだ若くて美しい彼女を狙う者も多いらしく、昼休み中などに付き纏う者もいるようだ。
彼女を直接守れない私は、影に見張らせて、あまりにもひどいと判断した者を、裏から手を回して地方に転勤させるなどしていた。
私自身は、母に用事がある振りをして執務室に向かい、何とか彼女と会話を交わすことが出来る程度…。
「殿下!いつになったら、愛しい人に想いを伝えるのです?早くしないと、その辺のつまらない男に取られてしまいますわよ!」
エリザベスはハッキリした性格だ。
「もしかしたら私は、彼女に嫌われてしまったかもしれない。すぐに関係改善するのは難しいから、少しずつ距離を縮めたいと思っている。」
「ハァー。いつもはあんなに冷静で、仕事にも部下にも厳しい殿下も、好きな人には弱いのですね。」
「弱いのではなく、大切な人だから慎重に進めたいだけだ!」
「あー、はいはい。怒らないで下さい。私は殿下の恋を応援してますからね。」
エリザベスは、私のいない所で勝手に彼女に接触してお茶会をしていた。
私だって彼女と一緒の時間を過ごしたいのに!
「殿下。私が殿下をお茶会に誘わなかったからと、そんなに怒らないで下さいまし。
私がお茶会をするなら、殿下も同席することは出来たかも知れませんが、私は女同士で話がしたかったのですわ。
殿下の愛する人は、側妃を狙っている女狐達とは違って、穏やかで素敵な令嬢でしたわね。あの方なら、私は仲良く出来ると思いましたわ。
ついでに、私達夫婦の事情を話しておいたので、殿下があの方に想いをお伝えしても、不誠実な男だとは思われないかと。
ですから…、早く想いを伝えてくるのです!」
「エリザベス…。君が私のことを心配してくれて、そこまで動いてくれたことに感謝する。
だが、今後は2人きりでのお茶会は認めないぞ!」
「うわー…。女の私にまで嫉妬ですか?
嫉妬する暇があるなら……」
「分かった!彼女に接触する機会を作って、気持ちを伝えるよ。」
私は彼女に想いを伝えるが、彼女からは身分のことや、未亡人であることを気にして断られてしまう。
でも、そんなことは予想していた。だから私は、まずは恋人になって欲しいと伝えて、断れない状況にした。
その後、昼休みに偶然を装い、彼女と一緒の時間を過ごすようにした。一緒の時間を過ごせば過ごすほど、彼女を好きになっていく。彼女の方も少なくても私を嫌ってはないと思う。このまま、私を好きになってくれたらと思っていたら、邪魔をする者が現れた。
それはワイラー侯爵とその娘の令嬢だ。
前から私の側妃を狙っていたのは知っていたが、ワイラー侯爵は私が彼女に会いに行くのを知っているかのように、色々邪魔をし、令嬢は彼女に絡んで、未亡人の貴女は殿下には相応しくないとか、近付くのは許さないとか暴言を吐いていたらしい。
彼女を見守るためにつけていた影からその報告を受けた私は、怒りで震え、暗殺者をワイラー侯爵家に送ろうかと考えてしまったほどだった。
あの女と侯爵は放っておくと絶対に危険だ。
エリザベスもワイラー侯爵令嬢が大嫌いらしく、2人で相談して、社交界から穏便に消えてもらうことにした。
私達を邪魔するものはいないだろうという時に、その知らせは届く。
「殿下、ボヤボヤしていたから、アメリアの旦那様が戻ってきてしまったではないですか!
だから、さっさと自分のモノにしてしまえと言ったのに…。既成事実でも作ってしまえば良かったのですわ。」
「エリザベス。なんて事を言うのだ?そんなことを大切な人に出来るわけがないだろう!」
夫であったバーネット卿は記憶がないから元には戻らないと聞いていたが、すぐに記憶は戻ったようで、彼女と元の夫婦に戻るために、教会に働きかけているという。
彼女は亡くなった夫はただの政略結婚で愛はなかったと言っていたが…、分からないな。2人は遠くから眺めた感じは理想の夫婦のように見えていたし、誰もが素敵な夫婦だと認めていた。
バーネット卿は、頻繁に彼女との面会を求めて会いに来ているようだし、今後の2人の関係がどうなるかは予想できない。でも私は、彼女を諦められなかった。
「夫人は面会を断ったりして、バーネット卿を避けているようです。拒絶してますね。」
影からは定期的に報告を聞くようにはしていた。
ある日の影の報告に胸が痛む。
「最近夫人は、昼休みにバーネット卿と一緒にランチをしているようです。」
「は?ランチだって?」
「はい。この前、スカル男爵令嬢が夫人に絡んで意味深なことを言っていたようなので、もしかしたら、バーネット卿とスカル男爵令嬢の関係を疑っているのかもしれません。」
スカル男爵令嬢…。一般職として王宮で働いているが、異性関係にだらしなく、次に何か問題を起こしたらクビにするとまで言われている阿婆擦れだ。
そして…
「殿下、スカル男爵令嬢が夫人を寮に呼び出していました。
バーネット卿との関係が知りたいなら来るようにと、夫人を挑発していました。」
「分かった…。あの阿婆擦れは危険だから、引き続き夫人の護衛を頼む。」
「畏まりました。」
周りには分からないように、こっそり影に護衛をさせるつもりでいたが、その日の夕方、悩んで涙を流す彼女をアンブリッジ公爵が見つけてしまい、公爵が私に護衛を貸して欲しいと要請してきたことから、私も彼女の助っ人の1人として一緒に行くことになった。
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