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13 夜会
結婚式まで一か月を切った。最近の私は、社交に復帰してアストン様と夜会にも参加するようにしている。
この男と一緒に夜会には行きたくなかったが、目的のために仕方なく参加していた。
その目的とは、リリアンと不貞している現場をセシリア達にも目撃してもらうこと。
私が二人の不貞を置き手紙に書いて暴露しても、アストン様とリリアンが嘘をつく可能性がある。いざという時、セシリアやマクラーレン様に証言してもらえるように、不貞現場を直接見てもらいたかったのだ。
そしてリリアンは、私が二人の関係を諦めていると勘違いしているのか、最近は遠慮なく不貞を匂わすようなことを口にしている。
私が苦しむ姿を見たくてわざと絡んでくるのだろうが、リリアンは泳がせておいた方がいいと判断し、放っておくことにした。
反対にアストン様の方は、必死に私のご機嫌取りをしているようなところがある。この男は何を考えているのか本当に分からない。
ある日、夜会に行く前に玄関ホールでリリアンと鉢合わせしてしまう。
リリアンは婚約者がいないので、いつも親戚の令息達が交代でエスコートしてくれているが、今夜のエスコート当番になっている令息が迎えに来るのを待っているようだった。
「お義姉様。今日の夜会はまた壁の花になるのかしら?
たまには、婚約者以外の殿方ともダンスを踊ってみてはいかがですか? それも大切な社交なのですから」
『今日の夜会もレイモンド様は私と過ごすから、お義姉様は壁の花ね。他にダンスを踊ってくれる方がいないお義姉様は可哀想……』とでも言いたいのだろう。
今夜も二人で逢瀬の約束をしているということなのね。この女の思慮が浅くて助かったわ。
世の奥様たちからの評価が非常に低いリリアンに、社交について語られるなんてちょっと苛つくけど、あと一か月後にはサヨナラだから、ちょっとだけ言い返して我慢しましょうか。
「心配ありがとう。リリアンこそ、今日の夜会で婚約者になってくれる人に出会えるといいわね。
愛人ではなくて、正妻にしてくれる人を探しなさい。
愛人は何の保障もないし、何かあれば直ぐに捨てられてしまうわよ。見た目しか取り柄がないなら尚更ね。年を取ったら、若くて美しい女性に愛人の座なんて簡単に奪われてしまうのだから。
あらっ? ちょっと香水の匂いが強いわね。度を過ぎて臭いのは逆効果よ。
……では、夜会の会場でね」
「なっ、何ですってぇー!」
あー、はっきりと言い返したらスッキリしたわ!
リリアンが五月蝿そうだから、私はその場からすぐに離れることにした。
リリアンが出発して少ししてから、アストン様が迎えに来てくれたので、私達も夜会に出発する。
アストン様は今日も、〝ローラと夜会に行ける私は幸せだ〟とか〝君が一番美しい〟とか〝結婚式が待ち遠しい〟とか、心にもないこと言っていて、黙って聞いているだけでも苦痛だった。
夜会ではいつものように、アストン様とダンスを二曲続けて踊る。
その後、今までのように二人でおしゃべりをしていると……
「ローラ。少しだけ友人と話をしてきてもいいかい?
前に君が気分が悪くなってしまったことがあるから、すぐに戻るようにする。
本当に申し訳ない……」
そんな泣きそうな顔で頼まなくても、私は駄目だなんて言わないのに。
むしろ私はこの瞬間を待っていたのよ。少し前にリリアンの姿が消えたから、そろそろ言われるとは思っていたのよね。
「ええ。それも大切な社交ですわ。ご友人達とゆっくりお話をしてきて下さいませ」
アストン様が行った後、離れていた場所から私達を見ていたセシリアとマクラーレン様に目配せをする。
すると、二人はアストン様の向かった方に行ったようだ。実は今日、二人が逢瀬の現場を見に行ってくれることになっているのだ。
セシリアは足音を立てないで早歩き出来そうだからと、ヒールの低い靴を選んで履いていくと言ってとても張り切っていたのだが……、二人はすぐに戻って来た。
二人の表情は恐ろしいほど引き攣っている。何かを見てしまったようだ。
「あの二人、最悪ね……
私達が覗いていることも知らずに、よろしくやっていたわ」
「セシリア、嫌な思いをさせてしまってごめんなさいね。マクラーレン様も、申し訳ありませんでした」
「私は大丈夫だ。一番辛いのはシーウェル嬢だろう? 君はよく耐えている」
マクラーレン様は口調こそ優しいが、殺気のようなものを放っている。
「ルイス。仏頂面で冷気を漂わせないでちょうだい。余計に怖いわよ。
あっ、気分転換にフローラとダンスでもしてきたら? フローラもいつも婚約者としか踊らないけど、たまには友人とダンスを踊ってもいいと思うわよ」
確かに、今までの私はあの男しか見てなかったから、他の男性とは全く踊っていなかった。そんな私をリリアンは馬鹿にしていたのよね……
「……シーウェル嬢。こんな時に君をダンスに誘っても大丈夫か?」
殺気立っていたはずのシーウェル様が、恥ずかしそうにダンスのお誘いをしてくれている。
ふふっ! こんな一面があったのね……
「はい。喜んで」
私だって夜会を楽しんでもいいわよね。
この男と一緒に夜会には行きたくなかったが、目的のために仕方なく参加していた。
その目的とは、リリアンと不貞している現場をセシリア達にも目撃してもらうこと。
私が二人の不貞を置き手紙に書いて暴露しても、アストン様とリリアンが嘘をつく可能性がある。いざという時、セシリアやマクラーレン様に証言してもらえるように、不貞現場を直接見てもらいたかったのだ。
そしてリリアンは、私が二人の関係を諦めていると勘違いしているのか、最近は遠慮なく不貞を匂わすようなことを口にしている。
私が苦しむ姿を見たくてわざと絡んでくるのだろうが、リリアンは泳がせておいた方がいいと判断し、放っておくことにした。
反対にアストン様の方は、必死に私のご機嫌取りをしているようなところがある。この男は何を考えているのか本当に分からない。
ある日、夜会に行く前に玄関ホールでリリアンと鉢合わせしてしまう。
リリアンは婚約者がいないので、いつも親戚の令息達が交代でエスコートしてくれているが、今夜のエスコート当番になっている令息が迎えに来るのを待っているようだった。
「お義姉様。今日の夜会はまた壁の花になるのかしら?
たまには、婚約者以外の殿方ともダンスを踊ってみてはいかがですか? それも大切な社交なのですから」
『今日の夜会もレイモンド様は私と過ごすから、お義姉様は壁の花ね。他にダンスを踊ってくれる方がいないお義姉様は可哀想……』とでも言いたいのだろう。
今夜も二人で逢瀬の約束をしているということなのね。この女の思慮が浅くて助かったわ。
世の奥様たちからの評価が非常に低いリリアンに、社交について語られるなんてちょっと苛つくけど、あと一か月後にはサヨナラだから、ちょっとだけ言い返して我慢しましょうか。
「心配ありがとう。リリアンこそ、今日の夜会で婚約者になってくれる人に出会えるといいわね。
愛人ではなくて、正妻にしてくれる人を探しなさい。
愛人は何の保障もないし、何かあれば直ぐに捨てられてしまうわよ。見た目しか取り柄がないなら尚更ね。年を取ったら、若くて美しい女性に愛人の座なんて簡単に奪われてしまうのだから。
あらっ? ちょっと香水の匂いが強いわね。度を過ぎて臭いのは逆効果よ。
……では、夜会の会場でね」
「なっ、何ですってぇー!」
あー、はっきりと言い返したらスッキリしたわ!
リリアンが五月蝿そうだから、私はその場からすぐに離れることにした。
リリアンが出発して少ししてから、アストン様が迎えに来てくれたので、私達も夜会に出発する。
アストン様は今日も、〝ローラと夜会に行ける私は幸せだ〟とか〝君が一番美しい〟とか〝結婚式が待ち遠しい〟とか、心にもないこと言っていて、黙って聞いているだけでも苦痛だった。
夜会ではいつものように、アストン様とダンスを二曲続けて踊る。
その後、今までのように二人でおしゃべりをしていると……
「ローラ。少しだけ友人と話をしてきてもいいかい?
前に君が気分が悪くなってしまったことがあるから、すぐに戻るようにする。
本当に申し訳ない……」
そんな泣きそうな顔で頼まなくても、私は駄目だなんて言わないのに。
むしろ私はこの瞬間を待っていたのよ。少し前にリリアンの姿が消えたから、そろそろ言われるとは思っていたのよね。
「ええ。それも大切な社交ですわ。ご友人達とゆっくりお話をしてきて下さいませ」
アストン様が行った後、離れていた場所から私達を見ていたセシリアとマクラーレン様に目配せをする。
すると、二人はアストン様の向かった方に行ったようだ。実は今日、二人が逢瀬の現場を見に行ってくれることになっているのだ。
セシリアは足音を立てないで早歩き出来そうだからと、ヒールの低い靴を選んで履いていくと言ってとても張り切っていたのだが……、二人はすぐに戻って来た。
二人の表情は恐ろしいほど引き攣っている。何かを見てしまったようだ。
「あの二人、最悪ね……
私達が覗いていることも知らずに、よろしくやっていたわ」
「セシリア、嫌な思いをさせてしまってごめんなさいね。マクラーレン様も、申し訳ありませんでした」
「私は大丈夫だ。一番辛いのはシーウェル嬢だろう? 君はよく耐えている」
マクラーレン様は口調こそ優しいが、殺気のようなものを放っている。
「ルイス。仏頂面で冷気を漂わせないでちょうだい。余計に怖いわよ。
あっ、気分転換にフローラとダンスでもしてきたら? フローラもいつも婚約者としか踊らないけど、たまには友人とダンスを踊ってもいいと思うわよ」
確かに、今までの私はあの男しか見てなかったから、他の男性とは全く踊っていなかった。そんな私をリリアンは馬鹿にしていたのよね……
「……シーウェル嬢。こんな時に君をダンスに誘っても大丈夫か?」
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ふふっ! こんな一面があったのね……
「はい。喜んで」
私だって夜会を楽しんでもいいわよね。
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