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二度目の話

人気の先生

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 ミルズ先生はあっという間に令嬢達の心を掴んでいた。

「クールな大人の男って感じで素敵だわ!」

「冷たそうに見えて優しいのよ!分からないところがあって質問に行くと、丁寧に教えてくれるのよね。」

「問題が解けると、フッと優しく笑いかけてくれるのよ。
 もう私は、ミルズ先生について行くことに決めたわ!」

「………。」


 …嘘でしょ?
 私の家庭教師をお願いした時のミルズ先生は、冷たそうに見えて、本当に冷たかったわよ。

 あの時は、優等生以外は相手にしないような印象だったのに。
 もしかしてみんな可愛い令嬢達だから、優しくしているとか?
 私がちんちくりんでバカそうに見えたから、あんな見下したような態度を取られたのかしら?


 どっちにしても、あの時の印象が強過ぎて苦手だわ。


「ねぇ、アナ!ミルズ先生ってカッコいいわよね!」

「そ、そうね…。カッコいいわね。」


 チェルシーまでミルズ先生のファンになってしまったらしい。
 確かに知的な雰囲気の美形だとは思うのよ。しかも私達から見たら、ミルズ先生くらいの年齢の男性は、落ち着いた大人に見えてカッコよく見えるのかもね。
 でも私は、必要以上に関わらないわよ。


「アナ、もうすぐテストだから、放課後にミルズ先生が勉強を見てくれるらしいわよ。
 アナも勉強会に参加しない?」

「チェルシー。私はうちでお義兄様という恐ろしい講師が待ってるのよ。」

「そうだったわね。アナには、お義兄様という最強の先生がいたのだったわ。
 頑張ってね。」

「う、うん。チェルシーも楽しんでね。」


 お義兄様に副担がミルズ先生だと話したら、絶対に侮られてはいけないと言い出して、テストに向けて気合いを入れられ、ガリ勉させられる日々が始まるのであった。




 テスト後…




「アナ、おめでとう!一位よ。
 やっぱりアナのお義兄様は凄いのね!」

「チェルシーも三位でしょ?余裕そうに勉強して、結果を出すなんて凄いわよ。
 私は今回も、お義兄様のテスト対策の勉強会がキツくて死ぬかと思ったわ…。
 早く学生を終えたい。穏やかでダラダラした生活をしたいの…」

「アナ。あと二年切ってるから、頑張りましょう。
 それより、優秀なお義兄様を持つと大変なのねぇ。」

「本当に大変よ…。
 今まで何をするにもお義兄様と比べられながら生きてきたわ。
 優秀なお義兄様と家門の恥にならないようにと、必死にやってきたのよ。
 だから結婚相手は、優しくて私を一途に愛してくれて、爵位があまり高くなくて、完璧過ぎず、しっかりした人がいいわね。」

「そんな人いるかしら?
 そんな都合のいい人なんていないと思うわよ。」


 いつものように、教室でチェルシーとおしゃべりを楽しんでいた私だったが…


「コールマン侯爵令嬢。テストで一位になったからと随分と余裕なことだ。
 王太子殿下の婚約者候補の筆頭と言われる君が、爵位が高くなくて、完璧でない男がいいなどと口にするものではない。軽い女だと思われるぞ。」


 この声はティアニー侯爵令息だわ。
 相変わらず嫌味ったらしい男…。
 転校してきた私とチェルシーをやたらライバル視してきて、感じ悪いのよね。


「ティアニー様、私はただの殿下の婚約者候補の中の一人ですわ。大勢いる中の一人でしかありません。
 それに今回のテストは偶然一位になれましたが、次はティアニー様に一位の座を譲ることになると思いますから、ご心配なく。
 私達のことは相手にしなくてもよろしいので、そっとして下さると助かりますわ。」

「ふん!まるでテストの順位など気にしていないような口振りだ。
 君は知らないみたいだから、ある噂話を教えてやろう。」


 今日も本当に感じの悪い男だわ。
 性格の悪さでは、令息の中でダントツ一番ね。


「噂話ですか?」

「ああ。君は留学して、マニー国の王子殿下に上手く取り入ってきたらしいじゃないか。
 更に、王太子殿下の婚約者に内定しているとも言われている。
 そんな君を学園の先生方が特別扱いしているから、今回のテストでは一番になれたのではないかという噂だよ。」

 ハァー。殿下の婚約者でいた時によく言われた言葉だわね…


「申し訳ありません。私のような頭の軽い者が、王太子殿下と噂になってしまいまして…。
 私ではなく、いつも赤いドレスを素敵に着こなしておられた、ティアニー侯爵令嬢の方が殿下には相応しいと思っておりますのよ。殿下にお会いした時には、私の方からそのお話をさせて頂きますわね。」


 ティアニー侯爵令息の二つ年上のお姉様は、赤ドレスを着て殿下に付き纏い、見事に殿下からは嫌われ、婚約者候補の中には入っていないのだ。
 侯爵令嬢なのだから、婚約者になる資格はあるのに…


「……君は口が達者な令嬢のようだな。」


 あー、イライラするわ!


 その時だった…


「失礼!先程から君達の会話が聞こえていたのだが、私達教員がコールマン侯爵令嬢を特別扱いしているという噂があるなど、今初めて耳にした。
 それが本当なら、公平性を保つことを大切にしている、私達教員を侮辱しているかのような噂話だな。」

 
 横から口を挟んできたのは、あのミルズ先生だった…
 


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