39 / 105
連載
娘にならない?
しおりを挟む
神官様は、今日も普通に優しく私を迎えてくれた。
「このお茶は、なかなか美味いのだ。
温かいうちに飲んでみてくれ。」
「ありがとうございます。」
一口頂くと、確かに美味しい紅茶だった。
偉い神官様だと聞いていたが、それに相応しい、良い生活をしているように見える。
「香りが豊かで、とても美味しい紅茶ですわ。」
「そうか……。それは良かった。」
私が紅茶が美味しいと言うと、フッと笑いかけてくれる神官様。
さすがイケオジだけあって、素敵な笑顔だと思う。
しかし、その後の話が続かない。
早く話を終わらせて帰りたい私は、神官様に呼び出された理由を聞くことにした。
「神官様……。今日はどのようなお話でしょうか?」
「……私は、君の生まれた国を離れて20年以上経つ。
国を離れてから、実家や友人達とのやりとりは最低限で、最近は全く連絡を取っていなかった。
そんな私の元に、最近、古い友人が訪ねて来てくれたのだ。
その友人も数年前に国を離れて異国で暮らしているんだが、せっかく会ったから私が国を離れた後の、ステール伯爵家のことを聞いてみたのだ。
勿論、友人には君のことは話していないから安心してくれ。」
「……はい。」
「君の言っていた通りだった……。
ステール伯爵家が没落したことも、ステール伯爵夫妻の不仲説に別居の噂、アンジェラが変わってしまったことも聞かされた。
今更、君に話すことではないかもしれないが、ステール伯爵は、アンジェラと婚約する前に、必ず彼女を幸せにすると私に約束してくれたのだ。
だから私は、アンジェラもその子供達も、きっと幸せに暮らしているだろうと思っていた。」
私の話に衝撃を受けて、古い友人にわざわざ確かめたのね。
毒母の本性にもショックを受けていたようだし。
「アンジェラや君の不幸の原因は私なのだよ。」
「……はい?」
「詳しくは話せないが、私が悪いのだ。
私は許されないことをして、君達を不幸にした。」
「……?」
イケオジ神官は項垂れているようだが、意味が分からない。
私としては、何があったのかが気になってしまうから、詳しく話せないことを中途半端に言わないで欲しかった。
ただ、このイケオジ神官の話の感じだと、やはり毒母の元カレか、それに違い関係だったということで間違いないように思う。
「私は君に幸せになって欲しいと思っている。」
「……ありがとうございます。
私は今の生活が幸せです。」
「今の生活が幸せ?真面目に働いているのは、勤勉で素晴らしいと思うが、たった一人で何かあったらどうするつもりだ?
急に病で倒れるかもしれないし、怪我で働けなくなる可能性もある。
悪い男が近付いてくるかもしれないし、また犯罪に巻き込まれるかもしれない。」
イケオジ神官が私を心配してくれているようだけど、すごくネガティブなことばっかり口にしているのが気になる。
将来に不安があるから、お金を貯めようと必死に頑張っているんだけどな。
「前に君から、今までどんな風に生きてきたのかを教えてもらって、私は君のことが頭から離れなくなってしまった。」
「………」
元カノの娘が不幸に見えて、同情しているって言いたいのかな?
神官って職業柄、貧しい人や病気の人達のために祈りを捧げるんだろうから、人の不幸話を聞いて心を痛めたのかもしれない。
「私は、君を放っておけないようだ。君に何かあったらと考えると気が気でない。
それで色々と勝手に考えてみたのだが……」
このイケオジ神官は何を言うつもり?
「私の娘にならないか?」
「えっ……、娘ですか?」
また凄いことを言ってくるなぁ。
「私の養子になって欲しい。
君の生活の面倒を見るし、私はそれなりの立場があるから、君に何かあっても守ることが出来る。」
「神官様。私はそんなことは望んでおりませんわ。
私の母と神官様が、親しい関係だったのかもしれませんが、今の私は母とは関係がありませんので、そのような配慮は必要ありません。
私は一人で頑張ろうと決めているのです。」
「急にこんなことを言って、君を困らせているのは分かっているのだが、私なりに悩んで決めたことだ。
私なりの方法で君を守りたいのだ。分かってくれないか?」
イケオジ神官様は、マジで話しているらしい。
「私は、今の生活が幸せだと伝えました。
それに、急に養子を迎えたりなんてしたら、神官様のご家族はどう思うでしょうか?もしかしたら、私を神官様の婚外子だと勘違いする方も出てくるかもしれません。
私は波風を立てるつもりはありません。」
「私は結婚していないから家族はいない。
子供が作れない体だから、婚外子も存在しないのだ。
君を養子に迎えて、煩く口を挟むような者は身近にいないから大丈夫だ。」
この世界の人って、すぐに養子にならないかって言ってくるよね。
あれっ?前にもこんな風に、誰かと養子縁組の話をしたんだっけ……?
それよりも今、イケオジ神官は子供が作れない体だと言っていた。
もしかして……、子供が作れない体だから、毒母との結婚を諦め、遠い異国で神官をやっているとか?
何だか私の心が痛んできたような気がする……。
「このお茶は、なかなか美味いのだ。
温かいうちに飲んでみてくれ。」
「ありがとうございます。」
一口頂くと、確かに美味しい紅茶だった。
偉い神官様だと聞いていたが、それに相応しい、良い生活をしているように見える。
「香りが豊かで、とても美味しい紅茶ですわ。」
「そうか……。それは良かった。」
私が紅茶が美味しいと言うと、フッと笑いかけてくれる神官様。
さすがイケオジだけあって、素敵な笑顔だと思う。
しかし、その後の話が続かない。
早く話を終わらせて帰りたい私は、神官様に呼び出された理由を聞くことにした。
「神官様……。今日はどのようなお話でしょうか?」
「……私は、君の生まれた国を離れて20年以上経つ。
国を離れてから、実家や友人達とのやりとりは最低限で、最近は全く連絡を取っていなかった。
そんな私の元に、最近、古い友人が訪ねて来てくれたのだ。
その友人も数年前に国を離れて異国で暮らしているんだが、せっかく会ったから私が国を離れた後の、ステール伯爵家のことを聞いてみたのだ。
勿論、友人には君のことは話していないから安心してくれ。」
「……はい。」
「君の言っていた通りだった……。
ステール伯爵家が没落したことも、ステール伯爵夫妻の不仲説に別居の噂、アンジェラが変わってしまったことも聞かされた。
今更、君に話すことではないかもしれないが、ステール伯爵は、アンジェラと婚約する前に、必ず彼女を幸せにすると私に約束してくれたのだ。
だから私は、アンジェラもその子供達も、きっと幸せに暮らしているだろうと思っていた。」
私の話に衝撃を受けて、古い友人にわざわざ確かめたのね。
毒母の本性にもショックを受けていたようだし。
「アンジェラや君の不幸の原因は私なのだよ。」
「……はい?」
「詳しくは話せないが、私が悪いのだ。
私は許されないことをして、君達を不幸にした。」
「……?」
イケオジ神官は項垂れているようだが、意味が分からない。
私としては、何があったのかが気になってしまうから、詳しく話せないことを中途半端に言わないで欲しかった。
ただ、このイケオジ神官の話の感じだと、やはり毒母の元カレか、それに違い関係だったということで間違いないように思う。
「私は君に幸せになって欲しいと思っている。」
「……ありがとうございます。
私は今の生活が幸せです。」
「今の生活が幸せ?真面目に働いているのは、勤勉で素晴らしいと思うが、たった一人で何かあったらどうするつもりだ?
急に病で倒れるかもしれないし、怪我で働けなくなる可能性もある。
悪い男が近付いてくるかもしれないし、また犯罪に巻き込まれるかもしれない。」
イケオジ神官が私を心配してくれているようだけど、すごくネガティブなことばっかり口にしているのが気になる。
将来に不安があるから、お金を貯めようと必死に頑張っているんだけどな。
「前に君から、今までどんな風に生きてきたのかを教えてもらって、私は君のことが頭から離れなくなってしまった。」
「………」
元カノの娘が不幸に見えて、同情しているって言いたいのかな?
神官って職業柄、貧しい人や病気の人達のために祈りを捧げるんだろうから、人の不幸話を聞いて心を痛めたのかもしれない。
「私は、君を放っておけないようだ。君に何かあったらと考えると気が気でない。
それで色々と勝手に考えてみたのだが……」
このイケオジ神官は何を言うつもり?
「私の娘にならないか?」
「えっ……、娘ですか?」
また凄いことを言ってくるなぁ。
「私の養子になって欲しい。
君の生活の面倒を見るし、私はそれなりの立場があるから、君に何かあっても守ることが出来る。」
「神官様。私はそんなことは望んでおりませんわ。
私の母と神官様が、親しい関係だったのかもしれませんが、今の私は母とは関係がありませんので、そのような配慮は必要ありません。
私は一人で頑張ろうと決めているのです。」
「急にこんなことを言って、君を困らせているのは分かっているのだが、私なりに悩んで決めたことだ。
私なりの方法で君を守りたいのだ。分かってくれないか?」
イケオジ神官様は、マジで話しているらしい。
「私は、今の生活が幸せだと伝えました。
それに、急に養子を迎えたりなんてしたら、神官様のご家族はどう思うでしょうか?もしかしたら、私を神官様の婚外子だと勘違いする方も出てくるかもしれません。
私は波風を立てるつもりはありません。」
「私は結婚していないから家族はいない。
子供が作れない体だから、婚外子も存在しないのだ。
君を養子に迎えて、煩く口を挟むような者は身近にいないから大丈夫だ。」
この世界の人って、すぐに養子にならないかって言ってくるよね。
あれっ?前にもこんな風に、誰かと養子縁組の話をしたんだっけ……?
それよりも今、イケオジ神官は子供が作れない体だと言っていた。
もしかして……、子供が作れない体だから、毒母との結婚を諦め、遠い異国で神官をやっているとか?
何だか私の心が痛んできたような気がする……。
応援ありがとうございます!
13
お気に入りに追加
9,983
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。