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次の約束
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ティーナの頑張る姿を見た後、王弟殿下が公爵家の邸まで送ってくれることになり、私達は馬車の中で話をしている。
「リーゼ、またクリスティーナの学んでいる姿を見たいか?」
「……ええ」
「分かった。また誘うよ」
ティーナを出しにされている気がするけど、あの子の頑張る姿を目に焼き付けておきたいの!
だって、子供って気付くとすぐに大きくなってしまうから。天使が頑張る姿を見れるのは今しかないもの。
「王弟殿下、ありがとうございます」
「それくらい構わない。近いうちに文を出すから、無視しないでくれよ」
「殿下からの手紙を無視は出来ませんわ。
楽しみにしております」
「クリスティーナに会えることをだろう?」
王弟殿下は意地の悪そうに笑っていた。
「王女殿下に会えることは楽しみですが、王弟殿下に会えることも一応は楽しみにしておりますわ」
「それなら良かった……」
公爵家に帰ると、お義母様が出迎えてくれた。
「王弟殿下、義娘を送って頂いてありがとうございました。
もしよろしければ、お茶でもご一緒しませんか?」
「私こそ、リーゼと楽しい時間を過ごすことが出来て感謝している。
今日はまだ仕事が残っているから、お茶は次回に頼みたい。
リーゼ、ありがとう。私はこれで失礼するよ」
「王弟殿下、今日はありがとうございました」
殿下は爽やかに微笑んで帰っていった。
「殿下はお忙しいのに、わざわざリーゼのために時間を作ってくれたのね……。お優しい方じゃないの。
リーゼもボーっとしていないで早く決めてしまえばいいんじゃないの?」
「露骨に外堀を埋めようとしてくるのがちょっと……
それに、王族に嫁ぐということが不安なのです」
「案外、平気かもしれないわよ。それに他にいい人がいるわけでもないのだから……」
「……確かに他にいい人はいませんわね」
今の言葉はちょっと傷ついたわ。
最近感じているのは、公爵令嬢という身分が自然な出会いを邪魔しているということだった。身分が高すぎるのも問題だなぁ。
「お義母様、私は公爵令嬢よりも商家の娘の方が合っているのかもしれないですわ。
政略結婚をして大人しく過ごすよりも、働く方が合っている気がするのです」
「リーゼが働くことは私も旦那様も認めているわ。
ただ、公爵令嬢としての立場を弁えて欲しいだけなの。
商家の娘だって政略結婚は多いと思うわよ。
リーゼは平民で自由に楽しく過ごしていたから、今の生活が窮屈に感じるのでしょうけど、もう貴族社会の中に入ってしまった以上は後戻りは出来ないわ。
そのかわり、リーゼのやりたいことをある程度は認めているのだから分かってちょうだい」
確かにうちは、公爵家としては割と自由にさせてくれていると思う。ただ、身分相応に振る舞うことを忘れるなとお義母様は言いたいのだろう。
「はい。それは分かっております」
「最近はオスカーが煩いから、リーゼも嫌になってしまうと思うけど、あまりに酷いようなら別邸に引っ越してもいいからね」
「……それは大丈夫ですわ」
あの義兄がいくら煩いと言っても、引っ越しなんてしたら余計に揉めるに決まっている。
その煩い義兄だが、夕食時に分かりやすく不機嫌だった。
気分が悪いなら部屋で食べればいいのに……
お義父様もお義母様も、そんな義兄を無視して二人で仲良くワインを飲みながら会話を楽しんでいる。機嫌の悪い息子なんて構う必要はないってことらしい。
しかし、何か嫌な予感がする。私はサッと食べて早く部屋に戻った方が良さそうだ。急いで食べて、席を立ち上がろうとした時……
「エリーゼ……、今日は楽しかったか?」
ハァー……。義兄はこのタイミングで絡んできたわ。
「ええ。王女殿下とのお茶会は楽しかったですわ」
「……それだけではないだろう? 王弟殿下と二人で楽しそうに王宮内を歩いていたと、知り合いの近衛騎士が教えてくれたぞ。
王女殿下とのお茶会はカモフラージュで、本当は王弟殿下と二人で会う約束でもしていたのではないか?」
……この偏屈はどこまで面倒な性格なの?
顔が引き攣りそうだわ。私、青筋が立っていたりして?
しかし、王弟殿下と歩いている時に近衛騎士とすれ違ったことは覚えているけど、あの中に義兄の知り合いがいたのね。
誰だか知らないけど、余計なことをバラしてくれたわ……
「王女殿下とお茶をした後、王妃殿下ともお茶をさせて頂きましたわ。
その後に王弟殿下がいらして、王女殿下が勉強をしている所を見に行こうとお誘いして下さったので、二人で歩いていただけです」
「そうか……。エリーゼが見たことのないほどの笑顔で、殿下にエスコートされていたと聞いたのだがな。
まるで思いを寄せ合う恋人同士のようだったと近衛騎士の中で噂になっているらしいぞ」
あの時の私は、ティーナの頑張る姿を見に行けることが嬉しくてルンルンしていたからだわ。
断じてあの腹黒の王弟殿下と一緒なのが嬉しかったわけではないのに。事情を知らない人から見たらそんな風に見えていたのね。
もしかして……、これも腹黒の策略だったりする?
わざと近衛騎士達が沢山いる通路を通って見せつけるように歩いたとか?
やってくれたわねー、あの腹黒!
「……エリーゼ、なぜ黙る?」
はっ! いけない。今はこの偏屈を何とかしないと。
「リーゼ、またクリスティーナの学んでいる姿を見たいか?」
「……ええ」
「分かった。また誘うよ」
ティーナを出しにされている気がするけど、あの子の頑張る姿を目に焼き付けておきたいの!
だって、子供って気付くとすぐに大きくなってしまうから。天使が頑張る姿を見れるのは今しかないもの。
「王弟殿下、ありがとうございます」
「それくらい構わない。近いうちに文を出すから、無視しないでくれよ」
「殿下からの手紙を無視は出来ませんわ。
楽しみにしております」
「クリスティーナに会えることをだろう?」
王弟殿下は意地の悪そうに笑っていた。
「王女殿下に会えることは楽しみですが、王弟殿下に会えることも一応は楽しみにしておりますわ」
「それなら良かった……」
公爵家に帰ると、お義母様が出迎えてくれた。
「王弟殿下、義娘を送って頂いてありがとうございました。
もしよろしければ、お茶でもご一緒しませんか?」
「私こそ、リーゼと楽しい時間を過ごすことが出来て感謝している。
今日はまだ仕事が残っているから、お茶は次回に頼みたい。
リーゼ、ありがとう。私はこれで失礼するよ」
「王弟殿下、今日はありがとうございました」
殿下は爽やかに微笑んで帰っていった。
「殿下はお忙しいのに、わざわざリーゼのために時間を作ってくれたのね……。お優しい方じゃないの。
リーゼもボーっとしていないで早く決めてしまえばいいんじゃないの?」
「露骨に外堀を埋めようとしてくるのがちょっと……
それに、王族に嫁ぐということが不安なのです」
「案外、平気かもしれないわよ。それに他にいい人がいるわけでもないのだから……」
「……確かに他にいい人はいませんわね」
今の言葉はちょっと傷ついたわ。
最近感じているのは、公爵令嬢という身分が自然な出会いを邪魔しているということだった。身分が高すぎるのも問題だなぁ。
「お義母様、私は公爵令嬢よりも商家の娘の方が合っているのかもしれないですわ。
政略結婚をして大人しく過ごすよりも、働く方が合っている気がするのです」
「リーゼが働くことは私も旦那様も認めているわ。
ただ、公爵令嬢としての立場を弁えて欲しいだけなの。
商家の娘だって政略結婚は多いと思うわよ。
リーゼは平民で自由に楽しく過ごしていたから、今の生活が窮屈に感じるのでしょうけど、もう貴族社会の中に入ってしまった以上は後戻りは出来ないわ。
そのかわり、リーゼのやりたいことをある程度は認めているのだから分かってちょうだい」
確かにうちは、公爵家としては割と自由にさせてくれていると思う。ただ、身分相応に振る舞うことを忘れるなとお義母様は言いたいのだろう。
「はい。それは分かっております」
「最近はオスカーが煩いから、リーゼも嫌になってしまうと思うけど、あまりに酷いようなら別邸に引っ越してもいいからね」
「……それは大丈夫ですわ」
あの義兄がいくら煩いと言っても、引っ越しなんてしたら余計に揉めるに決まっている。
その煩い義兄だが、夕食時に分かりやすく不機嫌だった。
気分が悪いなら部屋で食べればいいのに……
お義父様もお義母様も、そんな義兄を無視して二人で仲良くワインを飲みながら会話を楽しんでいる。機嫌の悪い息子なんて構う必要はないってことらしい。
しかし、何か嫌な予感がする。私はサッと食べて早く部屋に戻った方が良さそうだ。急いで食べて、席を立ち上がろうとした時……
「エリーゼ……、今日は楽しかったか?」
ハァー……。義兄はこのタイミングで絡んできたわ。
「ええ。王女殿下とのお茶会は楽しかったですわ」
「……それだけではないだろう? 王弟殿下と二人で楽しそうに王宮内を歩いていたと、知り合いの近衛騎士が教えてくれたぞ。
王女殿下とのお茶会はカモフラージュで、本当は王弟殿下と二人で会う約束でもしていたのではないか?」
……この偏屈はどこまで面倒な性格なの?
顔が引き攣りそうだわ。私、青筋が立っていたりして?
しかし、王弟殿下と歩いている時に近衛騎士とすれ違ったことは覚えているけど、あの中に義兄の知り合いがいたのね。
誰だか知らないけど、余計なことをバラしてくれたわ……
「王女殿下とお茶をした後、王妃殿下ともお茶をさせて頂きましたわ。
その後に王弟殿下がいらして、王女殿下が勉強をしている所を見に行こうとお誘いして下さったので、二人で歩いていただけです」
「そうか……。エリーゼが見たことのないほどの笑顔で、殿下にエスコートされていたと聞いたのだがな。
まるで思いを寄せ合う恋人同士のようだったと近衛騎士の中で噂になっているらしいぞ」
あの時の私は、ティーナの頑張る姿を見に行けることが嬉しくてルンルンしていたからだわ。
断じてあの腹黒の王弟殿下と一緒なのが嬉しかったわけではないのに。事情を知らない人から見たらそんな風に見えていたのね。
もしかして……、これも腹黒の策略だったりする?
わざと近衛騎士達が沢山いる通路を通って見せつけるように歩いたとか?
やってくれたわねー、あの腹黒!
「……エリーゼ、なぜ黙る?」
はっ! いけない。今はこの偏屈を何とかしないと。
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