上 下
21 / 39
2度目

待遇改善

しおりを挟む
 結局、隣国の将軍様は、私のかつての護衛騎士のカーティスだと認めるしかなかった。

 カーティスが侯爵家の次男だったことや、当時の国王陛下の護衛の1人であったが、能力を認められて、聖女の護衛騎士に任命されたこと。当時の国王陛下や、王族の名前を知っていたこと。そして当時、王宮で働いていないと知らないことを沢山知っていたからだ。

 今の国王陛下や宰相様達は、顔色を悪くしていた。

「カーティス、どうして将軍になったの?」

「私は今世では、騎士の家門である公爵家の嫡男として生まれましたから、将軍となるのは当たり前の環境でした。前世の記憶を持って生まれたので、剣術も得意でしたし。しかし、まさかこの国を攻めるように国王から命令をされるとは…。国王の命令は絶対です。私の家族を守る為には従うしかなかったのです。」

「カーティスは、国に奥様と子供がいるの?」

「いえ。私はまだ独身です。両親と弟と妹がいます。」

「家族に会いたいよね?」

「いえ。私は任務に失敗しましたから、帰っても国王に処刑されるかもしれません。家族にとっても、戻って来られるより、戦死してくれた方が都合がよいと思います。会いたいという気持ちは捨てました。」

「…うっ、うっ。…何てこと。陛下、どうかカーティスを助けてください。恨むべきは、隣国の国王と大公です。カーティスも被害者です。お願いします。」

 泣きながら陛下にお願いするが…

「リーナが将軍を助けたい気持ちは分かる。しかし、将軍のことも含めて、戦後処理は戦争の指揮をとっていた弟の管轄なのだ。私から弟に話をしてはみるが、難しいことだということは理解してくれ。弟達は、戦地で沢山の仲間を失っていて隣国を恨んでいる。敵国の将軍をそう簡単に赦免出来ないだろう。」

「王弟殿下が厳しい戦地で、命懸けで戦っていたのはわかります。しかし、私はカーティスを助けたい。最後まで誠実に私を守ってくれたのはカーティスだけでした。カーティスは私の大切な護衛騎士です。」

「…分かった。弟には頼んでみよう。」

 その日から毎日、食べ物を持って、カーティスに会いに地下牢に行くことにした。なかなかカーティスの処遇が決まらなかったこともあり、地下牢に会いに行くことについては何も言われなかった。私の護衛騎士やメイド達も、理解してくれたのは大きかった。

 聖女のかつての命の恩人ということを、地下牢を管理する兵士達に話し、毎日、私が会いに行くようにしたら、カーティスは前のように暴力を振るわれたり、酷い仕打ちはされなくなったようだった。少しは待遇改善された?

 ある日。

「リーナ、私の為にいつもありがとう。しかし、リーナは、あの時のように元の世界に帰りたいのでは?私のことは平気だから、リーナの幸せを優先して欲しい。」

「そうだね。いずれは帰るつもりだけど、陛下の体のことが心配だし、カーティスのことも大切だから、まだ帰らないよ。」

「私はリーナに再会出来たことが嬉しい。今死んでも、何の悔いも残らないと思う。だから、私の心配はしないで下さいね。」

「私も、カーティスに再会出来て嬉しい。だから、死んでもいいなんて思わないでね。」

「…リーナ、、ちょっと。」

「えっ?」

 カーティスの声が小さくなる。内緒の話?

「…王弟殿下には注意した方がいいかもしれません。」

「どういうこと?」

「何となく。あの方は私を知っているようでしたので。注意して下さいね。」

 さすがにずっとヒソヒソ話していると、周りに怪しまれるので、そこで話は終わったのだった。

 王弟殿下がカーティスを知っている?いや、敵国の将軍なんだからある程度は情報として知っているだろうね。それとも前世のこと?まだまともに顔を合わせて話したこともないからなぁ。



 そして、その数日後に戦勝パーティーを迎えることになる。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

女學生のお嬢さまはヤクザに溺愛され、困惑しています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:269pt お気に入り:686

私の留学中に、婚約者と妹が恋仲になったようです──。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:163pt お気に入り:321

異世界のんびり散歩旅

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,301pt お気に入り:745

【完結】転生後も愛し愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:631pt お気に入り:860

裏切り者、そう呼ばれた令嬢は

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:6,386

処理中です...