7 / 30
記憶を取り戻す前の私 5
しおりを挟む
「明日、退院して大丈夫でしょう。退院後もしばらくは安静にして下さい。
もう無理をしてはいけませんよ」
「はい。先生、ありがとうございました」
医師が病室から出て行った後、私は大きなため息をついていた。
「明日には王宮に行かなくてはならないのね……」
階段から落ちた公爵令嬢を治癒魔法で治療した後、私は意識を失い、病院に運ばれてそのまま入院することになってしまった。
魔力切れで大量の吐血をした私は、かなり危険な状態で十日も意識が戻らず、目覚めた時には領地にいるはずのお父様とお兄様が病室で泣いていて驚いてしまった。
二人は私の容体が安定すると領地に戻ってしまったが、帰り際に驚くべきことを口にしていた。
『エリーが目覚める前に王太子殿下が来て下さったんだ。
退院後の療養は王家でエリーを支えたいと言って下さったから、有り難くご厚意をお受けすることにした。
体調が戻るまで王宮でエリーの面倒を見てくださることになっているから、殿下にはきちんとお礼をお伝えするんだよ。
あんなに素晴らしい方が次期国王陛下だなんて、この国も安泰だな』と。
助けた公爵令嬢の家からは、王都までの交通費や滞在費、更に沢山の謝礼とお土産を頂いたとかで、お父様とお兄様はニコニコして帰っていった。
お父様もお兄様も、何も知らないから笑っていられるのよ……
本当は自分が学園でどんな扱いを受けているのかを打ち明けたかった。でも、そんなことを話しても優しいお父様やお兄様は悲しむだけ。貧乏な男爵領のことで大変なのに、余計な心配はかけたくない。
そういえば、公爵令嬢は私が階段から突き落としたかのように叫んでいたけど、学園で私が公爵令嬢に危害を加えたことになっていたらどうしようかしら?
そんな心配をしていた時、面会希望の方がいると言われて病院の面会室に向かう。すると、そこにいたのは先生と学園長だった。
「アボット男爵令嬢、明日には退院出来ると聞いたよ。
しばらくは療養しなくてはならないようだが、君が元気になって学園に戻ってくる日を私達は楽しみに待っている。
だから、何も心配しないでゆっくり回復させてくるようにね」
いつも威厳に満ちた学園長が優しく話しかけてきて拍子抜けしてしまう。
「エリー、君が何を心配しているのか、大体予想はついている。
公爵令嬢には、君が意識を失っている間に学園で聞き取り調査をさせてもらった。あの女は、エリーが自分を階段から突き落としたと言っていた」
淡々と話をする先生。そして、公爵令嬢はやはり私を陥れようとしていたのだと確信して失望してしまう。
魔力切れを起こしてまで助けても、あの方にとっては迷惑でしかなかったのかもしれない。
「……私はそんなことはしていません」
否定する声が震えてしまった。
落ち着いてあの時の話をしないといけないのに、こんな時の弱い自分に腹が立つ。
「エリーが何も悪いことはしていないのは分かっている。むしろ、あの女はわざと大怪我をすることでエリーに治癒魔法を酷使させ、魔力切れを誘発させた」
「えっ?」
「何で知っているのかって顔をしているな……
実はあの女のことを学園で監視していたんだ。暗部の人間が魔法具を使ってあの女の行動を映像と音声で記録していた。
嘘の証言をした後に、君に暴言を吐く姿や自ら階段から飛び降りる映像を見せてやったら、被害者ぶって泣いていたのが一瞬で静かになった」
「……そんなことが」
「公爵閣下は彼女たちに嫌がらせを受ける君を心配して、今回、色々動いて下さったんだよ。
実は彼女の処分についてはまだ決まっていないんだ。王太子殿下の婚約者の公爵令嬢という立場で、隣国の王族の血を引く方でもあるから慎重に決めなくてはならなくてね。今は謹慎してもらっているけど、決まったら君とアボット男爵にも報告するから」
先生のことを誇らしげに話す学園長を見て、改めて先生は凄い人なのだと感じてしまう。
隣国の王族の血を引く公爵令嬢を調査するなんて、色々と大変だったに違いない。私のためにそこまでして下さったことが嬉しかった。
「先生、ありがとうございました。
今回だけでなく、何度も助けて下さって感謝しています。
私、素晴らしい先生に出会えて本当に幸せです……っ!」
「また泣くのか? 君は泣くか笑うか極端だな。
何も気にしなくていいから、早く元気になって遅れている勉強を頑張りなさい。学園に復帰したらテストも受けてもらうからな」
「あ……はい」
勉強やテストの話をされ、現実に引き戻される。こんな時も先生はいつも通りだった。
もう無理をしてはいけませんよ」
「はい。先生、ありがとうございました」
医師が病室から出て行った後、私は大きなため息をついていた。
「明日には王宮に行かなくてはならないのね……」
階段から落ちた公爵令嬢を治癒魔法で治療した後、私は意識を失い、病院に運ばれてそのまま入院することになってしまった。
魔力切れで大量の吐血をした私は、かなり危険な状態で十日も意識が戻らず、目覚めた時には領地にいるはずのお父様とお兄様が病室で泣いていて驚いてしまった。
二人は私の容体が安定すると領地に戻ってしまったが、帰り際に驚くべきことを口にしていた。
『エリーが目覚める前に王太子殿下が来て下さったんだ。
退院後の療養は王家でエリーを支えたいと言って下さったから、有り難くご厚意をお受けすることにした。
体調が戻るまで王宮でエリーの面倒を見てくださることになっているから、殿下にはきちんとお礼をお伝えするんだよ。
あんなに素晴らしい方が次期国王陛下だなんて、この国も安泰だな』と。
助けた公爵令嬢の家からは、王都までの交通費や滞在費、更に沢山の謝礼とお土産を頂いたとかで、お父様とお兄様はニコニコして帰っていった。
お父様もお兄様も、何も知らないから笑っていられるのよ……
本当は自分が学園でどんな扱いを受けているのかを打ち明けたかった。でも、そんなことを話しても優しいお父様やお兄様は悲しむだけ。貧乏な男爵領のことで大変なのに、余計な心配はかけたくない。
そういえば、公爵令嬢は私が階段から突き落としたかのように叫んでいたけど、学園で私が公爵令嬢に危害を加えたことになっていたらどうしようかしら?
そんな心配をしていた時、面会希望の方がいると言われて病院の面会室に向かう。すると、そこにいたのは先生と学園長だった。
「アボット男爵令嬢、明日には退院出来ると聞いたよ。
しばらくは療養しなくてはならないようだが、君が元気になって学園に戻ってくる日を私達は楽しみに待っている。
だから、何も心配しないでゆっくり回復させてくるようにね」
いつも威厳に満ちた学園長が優しく話しかけてきて拍子抜けしてしまう。
「エリー、君が何を心配しているのか、大体予想はついている。
公爵令嬢には、君が意識を失っている間に学園で聞き取り調査をさせてもらった。あの女は、エリーが自分を階段から突き落としたと言っていた」
淡々と話をする先生。そして、公爵令嬢はやはり私を陥れようとしていたのだと確信して失望してしまう。
魔力切れを起こしてまで助けても、あの方にとっては迷惑でしかなかったのかもしれない。
「……私はそんなことはしていません」
否定する声が震えてしまった。
落ち着いてあの時の話をしないといけないのに、こんな時の弱い自分に腹が立つ。
「エリーが何も悪いことはしていないのは分かっている。むしろ、あの女はわざと大怪我をすることでエリーに治癒魔法を酷使させ、魔力切れを誘発させた」
「えっ?」
「何で知っているのかって顔をしているな……
実はあの女のことを学園で監視していたんだ。暗部の人間が魔法具を使ってあの女の行動を映像と音声で記録していた。
嘘の証言をした後に、君に暴言を吐く姿や自ら階段から飛び降りる映像を見せてやったら、被害者ぶって泣いていたのが一瞬で静かになった」
「……そんなことが」
「公爵閣下は彼女たちに嫌がらせを受ける君を心配して、今回、色々動いて下さったんだよ。
実は彼女の処分についてはまだ決まっていないんだ。王太子殿下の婚約者の公爵令嬢という立場で、隣国の王族の血を引く方でもあるから慎重に決めなくてはならなくてね。今は謹慎してもらっているけど、決まったら君とアボット男爵にも報告するから」
先生のことを誇らしげに話す学園長を見て、改めて先生は凄い人なのだと感じてしまう。
隣国の王族の血を引く公爵令嬢を調査するなんて、色々と大変だったに違いない。私のためにそこまでして下さったことが嬉しかった。
「先生、ありがとうございました。
今回だけでなく、何度も助けて下さって感謝しています。
私、素晴らしい先生に出会えて本当に幸せです……っ!」
「また泣くのか? 君は泣くか笑うか極端だな。
何も気にしなくていいから、早く元気になって遅れている勉強を頑張りなさい。学園に復帰したらテストも受けてもらうからな」
「あ……はい」
勉強やテストの話をされ、現実に引き戻される。こんな時も先生はいつも通りだった。
479
あなたにおすすめの小説
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十周年。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります!
恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」
「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」
十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。
再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、
その瞬間に決意した。
「ええ、喜んで差し上げますわ」
将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。
跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、
王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。
「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」
聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
ローザリンデの第二の人生
梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。
彼には今はもういない想い人がいた。
私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。
けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。
あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。
吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
1/10 HOTランキング2位、ありがとうございます。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
令嬢から成り下がったメイドの分際で、侯爵様と目が合ってしまって
あおとあい
恋愛
彼はメイドの私に手を差し出した。「私と、踊っていただけませんか?」
かつては伯爵令嬢として、誰もが羨む生活を送っていたエルナ。
しかし、いわれなき罪で家は没落し、今は嫌な貴族の下で働く「身分落ち」のメイド。
二度と表舞台に立つことなどないはずだった。
あの日の豪華絢爛な舞踏会で、彼と目が合うまでは。
アルフォンス・ベルンハルト侯爵。
冷徹な「戦場の英雄」として国中の注目を集める、今もっともホットで、もっとも手が届かない男。
退屈そうに会場を見渡していた彼の視線が、影に徹していた私を捉えて。
彼は真っ直ぐに歩み寄り、埃まみれの私に手を差し出した。
「私と、踊っていただけませんか?」
メイドの分際で、英雄のパートナー!?
前代未聞のスキャンダルから始まる逆転劇。
※毎日17時更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる