私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ

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夫婦喧嘩

 涙を流している私を見た両親と兄は、具合が悪いのかと聞いてきたが、大丈夫と答えるとそれ以上のことは聞いてこなかった。

 後日……

「アリエル。最近元気がないし、エリックがこの前、君の様子が変だったことを心配していた。
 どこか悪いのか? 出産が不安みたいだが……」

 旦那様に疲れていた私は口数も減っていたので、元気がないように見えていたようだ。

「旦那様が不安になっているだけですよね? あまりにも神経質になっていますし、心配して下さるのは嬉しいですが、過保護が度を過ぎて疲れてしまいましたわ……
 しばらく、どこかの別荘あたりで一人で過ごしたいと思いました」

「……それは認められない。
 私が過保護になっているのは君が心配だからだ」

「私は旦那様には、純粋に喜んで欲しかったのです。
 毎日、毎日……、あれはダメ、これもダメ、危険だからダメ、動くことや歩くのもダメ、全てがダメだと言われ続けるのは窮屈でしかありません。お医者様は、適度に体を動かした方がいいと言っていましたわ」

「私はただ心配だから言っているだけだ。
 分かってくれ!」

「旦那様こそ、いくら言っても分かって下さらないのですね……
 残念ですわ。しばらく一人にして下さいませ」

「分かった……。また後で話そう」

 結婚してから初めて旦那様と喧嘩に近いような雰囲気になってしまった。
 旦那様が部屋から出て行った後……

「奥様、こんな時は里帰りしてもいいと思いますわ。
 バトラー侯爵様や夫人はいつでも帰って来ていいと話していましたし、奥様が帰ってきたらきっと喜ぶと思います。
 侯爵様や夫人たちが嫌なら、侯爵家の離れの邸でも使わせてもらえばいいのでは? こんな時は実家に頼ると楽ですわよ。それに、妊娠中の悩みは侯爵夫人に話すと、案外分かってくれるかもしれません」

「今更、実家を頼りにするのは嫌だわ……
 仲が良いどころか、最悪の関係なのに」

「こんな時は実家に頼るべきです。きっと侯爵様と夫人は喜んで迎えに来てくれます。
 このままここにいたら、ストレスで奥様だけでなくお腹の赤ちゃんにも良くありませんわ」

 アンナに勧められて、渋々バトラー侯爵家に手紙を書くことにした。
 しばらく里帰りがしたいので、離れでいいから泊まらせて欲しいという内容の手紙だ。
 すると、すぐにバトラー侯爵家から両親が迎えに来てくれる。
 慌てる家令には旦那様に手紙を渡して欲しいと頼んで、両親と一緒に侯爵家に帰ることにした。

 両親は私の希望通りに、離れの邸を使わせてくれたのだが、静かでとても快適だった。
 煩く言う旦那様から解放された私は、久しぶりに伸び伸びと過ごすことが出来た。
 毎日、両親と兄が私の様子を見に来るが、長居するわけではなかったのであまり気にならなかった。
 旦那様のことで疲れていることを話すと、両親と王妃殿下から旦那様に話をしてくれたらしい。旦那様からは、寂しいがしばらくは実家でゆっくり過ごしてくるようにと手紙が届いた。

「アリー。公爵は落ち込んでいるようだから、落ち着いたら帰ってあげなさい。
 初めての子供で男親としてどうしていいか分からないようだし、アリーが大切だから心配して過保護が行き過ぎてしまっただけだ。
 公爵はアリーが昔、体が弱かったことを知っているから、出産に不安になってしまったようだ。
 だが、王妃殿下からかなり厳しく怒られて目が覚めたようだし、もう大丈夫だと思う。
 私もエリックやアリーが生まれた時のことを思い出したよ。だから、公爵の気持ちがなんとなく分かるんだ」

 まさか、父からこんな話を聞かされる日が来るとは思わなかった。
 しかし、あの王妃殿下から怒られたのね。叔母と甥の関係だから遠慮なく言われたに違いない。

「旦那様も出産の時はオロオロして酷かったわね。
 アリー、公爵様と喧嘩をするほど仲の良い夫婦になれたみたいで良かったわ。
 でもアリーが居なくなって、公爵様は本気で落ち込んでいるようだから、気が向いたら帰ってあげなさい。
 また何かあれば私達はすぐに迎えに行ってあげるから、その時は遠慮なく連絡しなさいね」

 私は両親に対して酷い態度を取り続けていたのに、そんな私に父も母も優しかったのが驚きだった。

「はい……。ご心配をお掛けしました。
 そして、今までお二人に酷い態度を取り続けたことも申し訳ありませんでした」

「……親子なんだから、それくらいは平気だ」

「そうね。それくらいは親子なら普通のことよ」

 その翌日、私は公爵家に戻ることにした。


 

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