君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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閑話 ロジャース伯爵

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「旦那様。奥様と仲直り出来なかったのですね?」

 家令のトーマスには、私の表情一つで何でもバレてしまうようだ。

「真剣に謝ったつもりだった…。離縁はしないことも、夫婦として仲良くやっていきたいとは思っていることも伝えたのだが。エレノアは納得していないようだった。」

「…ちょっと待って下さい。〝夫婦として仲良くやっていきたいとは思っている〟と奥様に伝えたのですか?」

「ああ。愛はなくても、仲良くしたいとは思っていたのだからな。夫婦なのだから、いがみ合って生活したくはないだろう?」

「ハァー。旦那様、その言い方は何とかならないのですか?〝仲良くやっていきたいとは思っている〟なんて言い方は、夫婦だから仲良くしてやってもいいと言っているように聞こえますよ。
 本当に仲直りしようという気持ちはあるのですか?」

「そんなつもりはなかったし、仲直りしたいとは思っている。」

「旦那様が初夜の日に言ったことは、花嫁に絶対に言ってはいけない言葉でした。それをいつまでも謝らずにいた上に、旦那様の親族は奥様を傷つけるようなことをしました。
 私の妹や娘が同じことをされたら、私ならすぐに家に帰ってくるように言うかもしれません。それくらいのことをしておいて、上から目線で仲良くやっていきたいとは思っているだなんて、よくそんな風に言えますね!」

「…だからエレノアは、お飾りの妻として表面的には仲良くしますなんて言っていたのか。」

「奥様がそんなことを…?
 ハァー。旦那様は、あの特殊な両親の元で育ったせいで、人の気持ちを考えることが苦手なのは分かります。でもだからと言って、いつまでもそのままでいるわけにはいかないのです。もう少し奥様の立場を考えて話をするようにして下さい。奥様と早く仲直りして下さい!」


 トーマスにそう言われなくても、仲直りはしたかった。結婚する前のように私を見て欲しいし、夫婦として信頼できる関係になりたい。
 しかし、普段の生活では完全にエレノアに避けられていて、私は顔すら合わせることが出来なくなっていた。
 せめて食事くらいは一緒にどうかと、誘いの手紙を書いて渡してもらうのだが、多忙だとか疲れているとか理由をつけて断られてしまう。

 そんなエレノアとの関係のことで悩んでいる私に、追い討ちをかけるかのような知らせが届くのであった。

「旦那様!バード男爵様と御令嬢が騎士団に拘束されたらしいです。」

「……は?」

「旦那様に保釈金を支払って欲しいと言っているようで騎士団から連絡が来ております。」

「は?叔父上とシンディーは何をしたんだ?」

「詳しく知るには直接騎士団を訪ねる必要がありそうですね。」

「……ハァー。何をしたんだ?」

 嫌な気持ちになりながら、後日騎士団を訪ねて事情を聞いてきたのだが、あまりにも酷いものであった。

 叔父上は、媚薬の模造品を作って売っていたようだ。無許可で薬品を売るのは犯罪になるし、安全性が確認されていない模造品を作って売るなんて、悪質だ。
 しかも、シンディーまでその商売に加担して、友人達に安く売っていたようだ。シンディーの友人達には、エレノアの家の店から安く仕入れることが出来たと嘘をついて売っていたと、友人達から証言があったようだ。
 もしかして、その違法な商売を続けていく為に、エレノアに近づきたくて第二夫人になろうとしたのか?

 そこまでのことをして、証拠や証言まで揃っているのだから、裁判では有罪が確定するだろう。それなのに私に保釈金を出せだって?怒りを通り越して、呆れるとはこう言うことなのだろう。
 私の妻であるエレノアの実家にも迷惑をかたくせに。
 ……私はこんな叔父と従兄妹と仲が良いだなんて、ずっと勘違いして生きていたんだな。

 騎士団で担当者からその報告を聞いた私は、拘束されている叔父上やシンディーに面会はせずにそのまま帰って来た。

 後日、裁判で有罪になったとの連絡がきた。叔父上は鉱山へ、シンディーは極寒の修道院へ行くことが決まったようだ。


 2人の旅立ちの日に、もう会うのは最後かもしれないからと、見送りに行くことにした。

 2人は、罪人用の質素な服を着せられて、腕を縄で拘束されていた。

「…アラン!どうして助けなかった?お前の妻に頼めば、何とかなったかもしれないだろう?
 両親に愛されなかった可哀想なお前を、小さな頃から可愛がってやったのに、恩を仇で返しやがって!」

「兄様、助けて!あの女に兄様は騙されているの。私が兄様を1番愛しているのよ!お願い。修道院なんて行きたくない!兄様と一緒にいたいの。」

 醜い姿だった…。

 付き合いは長かったし、それなりに情のようなものはあったから見送りに来たのに、来る必要はなかったようだ。

 私は叔父上達に何の言葉も掛けることなく、すぐにその場から去るのであった。


 
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