君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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閑話 ロジャース伯爵

 ダンスを終えた後、エレノアの知り合いらしき令嬢が話しかけて来た。
 あまり仲の良い友人ではないらしく、叔父上の男爵家の取り潰しの話を白々しく聞いてくる。
 このような話をしてくる者がいるだろうと予想して、エレノアには夜会に来る前に謝っておいてはいたが、やはり気分の良いものではなかった。

 しかしエレノアは凄かった。適当にあしらうとは言っていたが、サラッと話を交わして、相手を黙らせてしまったのだ。
 エレノアは私が思っている以上に、強くて賢い女性らしい。

 
 私の友人達に会うと、エレノアは仲の良い妻を演じてくれた。私の友人達とも楽しそうに会話をしてくれたのだ。
 その後で、エレノアは義弟にダンスに誘われて踊りに行ってしまった。

「アラン、何て顔をして夫人を見ているんだ!義弟に嫉妬しているのか?あの2人、仲が良さそうだし、美男美女でカップルみたいに見えるもんな。」

「…嫉妬などしていない。」

「どうだか…。ところで、夫人は何か変わったな。急に大人びたというか、落ち着いたというか。
 アランに対して初々しくて、恋する少女みたいな雰囲気を出していたのに…。結婚すると女性は変わるんだな。」

 ……私が彼女を変えてしまったとは言えなかった。

「…そうか?何も変化はないと思うが。」

 
 義弟と踊るエレノアは、私と踊っている時とは全く違う表情だった。楽しそうに会話して、表情豊かで。
 一曲踊り終えると、エレノアの友人達と話をし、その後に義弟と戻ってきたのだが、

「ロジャース伯爵様、義姉はもう疲れているみたいです。こんな義姉ですが、伯爵様とご友人方のお時間を割くのは申し訳ないと思っているようでして…。よろしければ、私が先に義姉を送って帰ろうかと思います。お許し頂けませんか?」

 ふと私は気付いてしまった。そんな義弟の言葉を聞いて嬉しそうな表情をしているエレノアに。
 不快感が私を襲ってくるのが分かった。

「お気遣い感謝する。だが、私もそろそろ帰ろうかと思っていたところなんだ。だから、送ってもらわなくて大丈夫だ。
 エレノア、帰ろう。」

 私はエレノアの腰を抱いて歩いていた。何かを考えての行動ではなく、体が勝手に動いていたのだ。
 しかし、彼女はそんな私に嫌悪感を露わにするのである。

 エレノアと義弟とが仲が良いことが何故か面白くなかった私は、2人は仲がいいのだなと口にしていた。

「ギルは義姉思いの優しい義弟なのですわ。伯爵様だって、従兄妹の御令嬢から告白されるくらい仲が良かったですわよね。」

 私とシンディーよりも親密に見えるのに、そんなことを言うのか?

「シンディーのことは妹としか思っていないと何度言ったら分かってくれるんだ?」

「今更そんなことはどうでもいいのですわ。伯爵様と御令嬢は、兄妹みたいに仲良くしていたのですよね?私もギルとはそんな感じです。伯爵様がなぜそれを怒るのか意味が分かりませんが。」

 エレノアに指摘されて、私が不機嫌になっていたことに気づく。私はどうしてしまったのか…。


 その後、お互い何も話さなかった。

 ふと気づくと、エレノアはウトウトと眠っていた。
 無防備な表情で眠ってる。きっと疲れているのだろう。

 馬車は邸に到着するが、エレノアは眠ったままである。

「私が奥様をお運び致します。」

 エレノアの護衛騎士がそう言うが…

「私が運ぶ。」

 他の男に触れられたくなかった。

 エレノアの寝室を開けてもらい、ベッドまで運ぶ。
 初めてエレノアの寝顔を見たが、こんなに可愛いのだな…。もっと一緒の時間を過ごせたらいいのに。


 彼女と一緒に過ごしたいと強く望んでも、その機会はなかなか訪れなかった…。

 無関心を貫かれることは、こんなにも辛いことなのか…。
 あの時、父の愛情を求める母は、こんな気持ちでいたのかもしれない。愛に狂った母の気持ちなど知りたくもなかったが、こんな風に知ることになるとは考えたこともなかった。


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