君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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鬼嫁が泣いた日

 見た目小娘、中身アラフォーおばちゃんのエレノアです。
 今日は伯爵様と結婚式を挙げた教会に来ております。


 ついに迎えたよ!今日はあの伯爵様との二度目の結婚記念日。白い結婚を申請できる日なのよー!


 清々しい気持ちで目覚めた私は、テキパキと準備をして、さっと伯爵家を出て来た。
 メイド達は引っ越しの最終段階の準備をするために邸においてきたので、今は私一人で教会の入り口に立っている。特売日のスーパーの入り口で、オープンを待つおばちゃんのような気分よ。
 護衛騎士のレイクス卿が少し離れた場所から見守ってくれているようだけど、背が高くていい体してるから存在感がありすぎなのが気になるが…、そっとしておこう。
 

 平日の今日は、午前9時に教会が開くはず。早く開かないかなぁ。
 書類は準備してきたし、少し前には女性医師に体を診てもらって診断書も貰ってきたから、何の問題もないはずよ。

 あと5分…。

 じーっと教会の扉を見つめていると、レイクス卿が走って来た。


「お嬢!伯爵様の馬車が来ました。どうしますか?」

「…見つかってしまったのね。
 レイクス卿、大丈夫よ。下がって。」

「近くにいますから、何かあればお呼びください。」

「ありがとう!」


 さっさと教会で手続きをして伯爵家に戻り、伯爵様に書類を見せて、ドヤ顔で白い結婚の報告をする予定でいたのに、それはどうやら無理そうだね。
 朝早く出てきたけどバレたかー!

 教会の開かない扉を見てため息をつく私に、後ろから声が掛けられる。


「エレノア…。」


 そんな風に呼び捨てで呼ばれるのも今日で最後ね。


「…はい。」


 振り向くと、息を切らせた伯爵様がいた。


「エレノア…、少し話がしたい。頼む!」

「分かりました。」


 教会の入り口で揉めるのは恥ずかしいから、鬼嫁は素直に応じることにした。


「入り口のここは目立つし、この先の庭に座れる場所があるから移動してもいいか?」

「大丈夫ですわ。」


 伯爵様はサッと私の手を取って歩き出す。
 別にこんな場所でエスコートなんて必要ないのに。
 逃げ出すとか思われていたりして…。

 教会横にはベンチがあり、伯爵様がハンカチを敷いてくれて座るように促される。


「エレノア…。君が私を信用していないのは分かっている。
 だが、今から私が話すことは私の真意だ。私の真実の気持ちを伝えに来た。」

「…はい。」


 私が返事をすると、横に座っていた伯爵様は立ち上がり私の前に来て跪く。そして私の手を握りしめ、真っ直ぐに見つめてくるのであった。

 この伯爵様って顔だけは無駄にいいから、何気に様になっているんだよねぇ。
 頭がお花畑のエレノアだったら、きゃー!王子様だわ、カッコいい…とか思うのだろうけどね。
 今の私は見た目は小娘だけど、中身は立派なおばちゃんだから、そんな伯爵様でも冷静に見ていられるのよ。


「エレノア…。私は初夜の日に君に酷いことを言ったな…。君に嫌われ、君からの愛情を失ってから自分の本当の気持ちに気がついた。
 君が私に向けてくれていた優しい目や、君と一緒に過ごす心地のよい時間、心温まる手紙、失ってからその全てが私の大切なものであったことに気づいたのだ。
 本当に私は愚かだったと思う。」

「……。」


 今更何なのよと言いたい…。
 アンタを愛情たっぷりに見ていたお花畑のエレノアは、すでに死んでいるのよ!


「私の親族が君に酷いことを言ったこともあったし、何も知らない友人達から、跡取りの話をされて君に辛い思いをさせたこともあった。
 私があの悪女に陥れられたせいで、結果的にエレノアを裏切ることになってしまったし、そんな私が体調を崩した時には、エレノアは私の看病までしてくれた。
 苦労ばかりさせてしまった君に、私は夫として何も出来なかったことを申し訳なく思う。」

「グズッ…。…っ。…っく。」

「エレノア…?泣かないでくれ。
 本当にすまなかった…。」


 涙が出てきてしまった。
 私は鬼嫁だから、泣いてはダメなのに…。

 
 でもね…、伯爵様に言われてみて改めて思った。
 私は本当に頑張ったよ。

 伯爵様には金蔓の妻としか思われずに蔑まされるわ、金にがめつい親族にはたかられそうになるわ、伯爵様の友人達には跡取り梅と煩く言われるわ、伯爵様を好きなアブスには命を狙われるわ……。

 新婚らしい幸せはなかったし、イラっとする事ばかりだった。


 この男と結婚して、苦労しかなかったじゃないの!

 
 自分が哀れで、哀れで…。涙が溢れて止まらない。

 

 

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