スターチスを届けて

田古みゆう

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15.3月25日

15.3月25日 p.4

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「うん。ここは、ただの待ち合わせ場所。コレは、昼食後のデザートってことで」

 空になったカップを持ち上げ軽く振りながら、彼女はエヘヘと笑う。その時、片側だけに出る八重歯と笑窪が顔を覗かせ、浩志は思わず微笑んでしまった。

「何よ~。もう。どうせまた、太るぞとか言うんでしょ」

 そんな浩志の僅かな笑みを見てとった優は、何を勘違いしたのか、すぐにむくれ顔になり、八重歯と笑窪は隠れてしまう。

「なにも言ってないだろ。やめろ、被害妄想!」

 苦笑いをしつつ浩志は優を宥め、話の先を促した。

「で、本題は?」

 優もむくれ顔を戻すと、浩志の目を見て本日の要件を話し始める。

「成瀬さ、今日、何の日か知ってる?」
「は? それって、三六五日記念日的なことか? そんなの知るわけないだろ」

 浩志の取り付く島もない答えに、今度は優が苦笑いをする。

「あ~、ごめん。私の聞き方が悪かった」

 優は脱力したように浩志に謝ると、質問を変えた。

「成瀬は、蒼井ちゃんの結婚式の日にち、覚えてる?」
「そんなの当たり前だろ! え~っと、確か、三月……」

  浩志は上方を見上げながら頭の中から答えを導きだそうとしていたが、元来、予定に無頓着に過ごしているせいか、すんなりと正解が出てこない。そんな彼に痺れを切らしたかのように、優は自身で答えを口にする。

「もう! 三月二五日」
「あ~、そうそう。二五日……ってあれ?」
「やっと気がついた? 今日なの!」
「そっかぁ。今日だったか。でもまぁ、俺らには関係なくね? 式に行けるわけじゃないし」
「そうなんだけどね。なんか、今日なんだなぁって思ったら、居てもたってもいられなくて。私たちのパーティー、蒼井ちゃん喜んでくれるかなぁとか、蒼井ちゃんにも、せつなさんにも思い出に残るようなことができたらいいなとか思って……」

 優は興奮と心配が入り混じったような顔で、胸の内をポロリとこぼした。そんな優に浩志はいつになく真面目に相槌を打つ。

「そうだな。せつな……あいつ、頑張ってるもんな。蒼井にはあいつの事なんて見えないのに……。それでも、頑張ってるんだ。せっかくパーティーするんだし、せつなにも楽しんで貰いたいよな」

 浩志の言葉に、優は大きく肯いた。

「それで、大体のスケジュールはもう決まったのか?」

 浩志とせつなは裏方に徹している。パーティーの仕切りは、優を中心に彼女の所属する部に完全に任せているので、浩志はどのような感じになるのか、全く知らなかった。
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