ツインズ・スワップ

田古みゆう

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「わたし、ミキよ」

 アッくんの前に座りながら、ミカがミキのふりをする。

「わたしが、ミカよ」

 イッくんの前に座りながら、ミキもミカのふりをした。

 もう、つまらなくなったので、本日の入れ替わりは終わりにしようと思っていたのだが、目の前の二人は、唯一ミカとミキをきちんと見分けることのできる相手。そこで、二人は急遽入れ替りを継続することにした。

 二人がクスクスと笑っていると、アッくんとイッくんは不思議そうに顔を見合わせてから、互いに首を振った。

「そんなわけない。ミカは、いつもアップルゼリーを食べてるじゃないか」
「ミキちゃんも、いつもソーダゼリーだよね」
「今日は、ゼリーを交換したのよ」
「そうよ。交換したの」

 二人は鼻息荒く否定をするが、目の前の全く似ていない双子たちは可笑しそうに笑う。

「それで入れ替わってるつもりなのか? お前がミカだろ?」
「きみは、ミキちゃんだよね?」

 アッくんとイッくんは、確信をもって二人を見分けているみたい。どうして、この子たちには、二人の見分けがつくのだろうか。

「わたしがミキだって言ってるじゃない」
「そうよ。わたしがミカよ」

 全く騙された様子のないアッくんとイッくんに、二人は少し不貞腐れたように唇を尖らせながら、同時にスプーンを口に運ぶ。

 その様子をじっと見つめていた目の前の男の子たちは、互いに目配せをしあうと、アッくんがミカ目掛けて、ビシリと指を突き付けた。

「ミカは、右利き」
「ミキちゃんは、左利き」

 アッくんに続き、イッくんも、ミキの手を遠慮がちに指し示す。

 突然のことにミカとミキは、ポカンと口を開けたまま、互いの手を見つめた。

 すると、確かに、アッくんとイッくんが指摘した通り、ミカは右手にスプーンを、ミキは左手にスプーンを握っていた。

「それに、お前たち、いつも立ち位置が同じなんだ。気がついているか? ミカは右側」
「ミキちゃんは左側」

 二人が眼を丸くして互いの位置を確認する。二人の驚いた様子に、全く似ていない双子の男の子たちは可笑しそうに笑った。

「なんだ。気がついてなかったのか?」
「きみたちは、いつも同じ立ち位置だよ。それがしっくりくるんだろうね」

 ミカとミキはバツが悪そうに、互いにエヘヘと笑い合った後に、アッくんとイッくんに頭を下げた。

「ごめん。あなたたちが言うように、わたしがミカ」
「で、わたしがミキ。わたしたち、自分たちがいつも同じ立ち位置に居るだなんて気がつかなかったわ」
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