ツインズ・スワップ

田古みゆう

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 男の子二人の言葉を、ミカとミキはキョトン顔で聞いていた。そんな二人に、男の子たちは不思議そうに顔を見合わせてから、まさかとアッくんが口を開いた。

「あれ? まさかお前たち気がついていないのか?」

 アッくんの言葉に、ミカとミキは揃って首を傾げる。

「気がつくって、何によ?」
「個性って、どう言うこと?」
「そっか。きみたち、本当に気がついていなかったんだね」

 イッくんが納得したように頷いた。アッくんの呆れ顔と、イッくんの訳知り顔がミカとミキに向けられている。

「お前たちは、双子だからといつも一緒にいて、同じ格好をして、同じように行動をしていた。それは、意識的にそうしていたのか、無自覚だったのかは分からない」
「けど、周りはそこしか見ていないし、きみたちもそんな周りの反応にしか興味を持っていなかった。でも、きみたちにはそれぞれ好みがあるし、個性があるんだよ」
「好み?」
「個性……」
「そうだ。お前たちがよく入れ替りをしているのは、みんなに、自分のことを気づいて欲しいからだろ?」
「だったら、きみたちの好みを、個性をもっと出せばいいんだよ」

 アッくんとイッくんはそう言って、二人の瞳をじっと見つめてきた。ミカとミキは戸惑ったように二人の男の子の瞳を見返す。

「わたしたちの好みって何よ?」
「わたしたちは、好きなものだって同じよ。甘いミルクが好きで、カレーライスが好きで……」

 次第に尻すぼみになっていったミキの言葉を、アッくんとイッくんが拾う。

「でも、ミカは本当はアウトドア派で」
「ミキちゃんは、インドア派」
「ミカは、右利きで」
「ミキちゃんは、左利き」
「ミカは、アップルゼリーが好きで」
「ミキちゃんは、ソーダゼリーが好き」

 二人の男の子たちがたたみかけるように言葉を紡ぐ。そんな言葉にミカとミキは、じっと耳を傾ける。

「で、そんなミカが俺は好きで」
「僕はミキちゃんが好きなんだ」
「は?」
「え?」

 さらりと零された告白めいた言葉に、ミカとミキは、目を丸くして固まった。

「俺たちがお前たちを見分けられるのは、お前たちのことを、誰よりもよく見ているからだ」
「別に僕たちが特別って訳じゃないんだ。きみたちの事を知れば、そんなのは誰にだって出来ることさ。きみたちは、それぞれに魅力的なんだから」
「それって……」
「つまり……」

 アッくんとイッくんは、二人を見分けている方法をさらりと白状した。しかし、二人は、まだそのことに気がついていない。
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