新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう

文字の大きさ
453 / 461

新人魔女に重く圧し掛かるもの(5)

しおりを挟む
 その様子を見ていた周りの貴族子女たちからは、当人よりも大きな歓声が上がる。

 まだまだ恋愛の機微に疎いリッカにとっては、その光景の何が良いのかさっぱりわからなかったが、リゼがエルナのために用意した乙女心を擽る演出は、夜会に参加した多くの女性の心までもガッチリと掴んだようだった。

「まぁ、素敵ですわね。わたくし、これよりも少し小さめの魔道具でしたら、町の雑貨店で見かけたことがございますが、このように思い出を投影出来るものもございますのね」

 エルナのその発言を聞いた貴族子女たちのいくつかの固まりが、すぐさま「どこの店のことだ」と情報交換を始める。

 そんな状況をリッカが遠巻きに見ていると、不意にエルナと目が合った。その瞬間、エルナはイタズラが成功した時のような楽しげな笑みを浮かべた。その笑みの理由が分からずリッカがキョトンとしていると、情報交換をしていた貴族子女の一団がわっと盛り上がる。

「街の雑貨店と言えば、あそこのことじゃないかしら? ほら、近くに最近流行りのスイーツ店がある……」
「あぁ。あそこの。私、是非あの魔道具を間近で見てみたいわ。本当は、あれを送って下さる殿方がいると良いのですけれど、今はまだそのような素敵なお相手はおりませんし……」
「まぁ。でしたら、私とご一緒しませんこと? もしよろしければ、スイーツ店でお茶もご一緒に。最近あの店に可愛らしい給仕係がいることはご存じ? スイーツも美味しいですし、なにより彼らが可愛らしくて、私、ここ最近はあのお店によく足を運んでいるのですわ」
「あら、それはいいですわね。是非ご一緒させてくださいませ」

 貴族子女たちはそう言ってクスクスと笑い合いながら、話は次第に別の話題へと移行していく。その様子にリッカはようやくエルナの意図に気が付いた。エルナは以前この魔道具に関しては完成してからも協力できることがあると言っていた。それは、こうして魔道具をさりげなく周囲に売り込むことだったのだ。

 「なるほど」と心の内で感心しながらエルナを見れば、彼女は相変わらず楽し気な笑みを浮かべていた。

「……なるほどな~。それでこの売れ行きかぁ」

 夜会での出来事をリッカが口にすると、ジャックスとミーナが感心したように頷く。

「もううちの店はリッカちゃんとエルナ様で持っているようなものだわ」

 そう言ってミーナが悪戯っぽく笑った。リッカは慌てて首を横に振る。

「そ、そんな。それは言い過ぎですよ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

処理中です...